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----------2005年01月30日(日) 傍観者

「ほら、あんなにたくさんの人間が、たえまなく何処かに向って、歩いて行くでしょう・・・みんな、それぞれ、何かしら目的を持っているんだ・・・ものすごい数の目的ですよね・・・」(阿部公房「燃えつきた地図」/新潮文庫)

猫のような目をしたナカニシさんは車のローンを支払うために働いている。関東のアクセントで早口にまくしたてるヒラカワさんは最近入籍した、そうして挙式をハワイで挙げる資金を貯めるために働いている。いつもユニクロ風のフリースにジーンズのタカイさんは実は組み紐教室に通っていて、平日に休みが取れるからという理由で今の職場を選んだ。愛媛の小さな漁村で生まれ育ったハマノさんは家賃のために働いている。いつもキレイな服装で出社するクボタさんは多分洋服代のために働いているのだろうと思う。5日前パリから帰ってきたムカイさんはまたどっかに行きたいから働いているので次の有給をいつ取るのかをもう考えはじめている、4つ年下の彼氏が結婚を決意してくれるのを待っているホソノさんは暇つぶしに働いている、だから残業は決してしない、タシロさんはそろそろ結婚したいのだけれど偉くなりすぎて誰かが仕事を引き継いでくれないかぎり上が辞めさせてくれないから働いている、ミズノさんは子供ができるまで、ニワさんはバンドの追っかけをするため、私とよく似たメガネをかけて私と同じ香水をつけているオカダさんとは話したことがないから知らないけれどとにかく働いているからにはなんらかの目的があるんだろう、

私は皆が働いているので働かなきゃならないような気がして働いている。信号待ちで誰かがふっと歩き始めると赤信号でもつられて歩き出してしまうのと同じ。

・・・私が生理痛をおしてまで働く目的って何なんだろう・・・。