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----------2004年12月24日(金) 掟の門前

「だとしたらなぜおまえになど用があろう。裁判所はおまえにたいし何も求めない。おまえが来れば迎え入れ、おまえが行くなら去らせるまでだ。」(フランツ・カフカ「審判」/新潮文庫)

やはりドアは閉まっていた、重く、堅く、いつまでも永遠に開きそうにはなかった。

いや、本当のところは分からない、もしかするとそのドアは開いていたのかもしれないし、幾重にも施錠されていたのかもしれない、分からないのだ、何故なら私は決してドアを押そうとはしないのであって、ただ内側からひっそりと聞こえてくる夢のような歌声に耳を傾けているだけなのだから。そうして空想する、笑っている自分、を。

そうして、ドアに背を向けて立ち去るだろう。

もしも、ドアが内側から開くのでなければ。招きいれ、迎えいれ、手を引いてくれる誰かがいなくては、私はいつまでもそのドアをくぐることができない。そのいかにもそこにありそうなぬくもりにどれほどあこがれたとしても。

あこがれでは足りない、飢えなければならない、けれど軽蔑を喰らい嘲笑を喰らえばそれで命は繋げる、これらの正しくないものは私の腹を満たしなおさら私をあのドアから遠ざけるだろう、

内側のぬくもりが私を招くことは決してない。