チフネの日記
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| 2011年12月04日(日) |
汗とシャンプーと奇妙な嗜好と 跡リョ |
雨や泥の中での試合は全く平気とする跡部だが、終わった後はきちんとシャワーを浴びて清潔な服に着替えをしないと気が済まない。 そのままの格好でいるなんてありえない話だ。 部室の中も整理整頓を心掛けて、ゴミを溜めないように言い渡し、掃除当番に(ただし自分は除く)隅から隅まで綺麗にするよう言い渡している。 勿論、自宅の部屋は使用人達が埃一つないように毎日掃除している。 重度という程ではないが、潔癖の部類に入ることは自覚している。 テニスをしている間は別だが、それ以外の時は清潔な服に身を包み、髪もセットをして常に完璧でいたい。 だから自分のパートナーとなる相手は同じような価値観を持っているものだと、漠然と考えていた。
しかし、現実は想像と違っていた。 それどころか、隠れていた自分の嗜好が表れることになるとは予想もしていなかった。
「ねえ。いい加減、放してくれない?」
嫌そうな顔をするリョーマに、「今会ったばかりだろ」と返事をした。 青学にリョーマを迎えに行って、車に乗せて家へと走り出したところだ。 到着するまで密着していたい。 そう思って抱き締めているのだが、リョーマはそれがとても不満らしい。
「会ったばかりとか、関係なくって……。 青学にはあんたの所と違ってシャワールームなんて無いから、汗かいたままなんだけど」 「俺は気にしない」 「あんたはそうでも、俺は気になるんだけど!」 はあ、とリョーマが溜息をつく。 「自分はシャワー浴びてさっぱりしているみたいだからいいけど、こっちは服がベタベタと張り付いて気持ち悪いのに。家に行ったら風呂、貸してよ」 「このままでも構わないぜ。むしろお前の匂いが消えたら困る」 半ば本気で呟くと、「変態……」とリョーマが体を引いた。
「変態とはなんだ。俺はただ純粋にお前の匂いを覚えていたくて」 「そんなの覚えてどうすんの。 これ以上おかしなこと言うのなら、車を降りて帰るから」 「……わかった」 こう言われると、引き下がるしかない。 それでも内心ではやっぱり、汗だくでもリョーマの匂いは好きだなと思う。 自分が汚れたままなのは許せないが、どうしてだかリョーマは別だ。 むしろ石鹸で消えてしまう方が惜しい。
(また変態と罵られそうだな……) 本気で怒られる前に自重しようと、話題を変えることにする。
それでも頭の中ではリョーマの汗と体臭を嗅ぎたいという欲求が渦巻いている。 鼻息を荒くして話す跡部に、「どうしたんすか?」とリョーマが心配そうな顔になる。 「いや、なんでもない」 「なんでもって、苦しそうに見えるけど。窓開ける?」 体調不良になったのかと気遣うリョーマに「大丈夫だ!」と声を上げる。 窓を開けたらリョーマの匂いが消えてしまう。 切実に止めて欲しい。 「あんたがそういうのなら開けないけど、具合悪いのなら横になったら?」 「平気だって言ってるだろ。お前の考え過ぎだ」 「ふーん」 まさか体臭が嗅ぎたくて荒い呼吸をしているなんて言えない。 不審な目を向けられるが、跡部は平常を装ってなんとか誤魔化した。
それにしても最近は特におかしい。 リョーマは嫌がるだろうが、汗まみれの汚れた体を嗅ぎ回したいと思うのはどうしてだろうか。 (変態と罵られても、否定出来ねえな……) これ以上距離を取られないよう、何か良い案は無いかと考えている間に車は跡部の屋敷へと到着した。
宣言通り家に入るなり、リョーマはシャワーを浴びに風呂場へと直行してしまった。 入ると長いとわかっているので、跡部は自室でごろごろとソファで横になりながら恋人を待ち侘びていた。
(石鹸で洗ったら、リョーマの匂いが消えちまうな)
いっそのこと汗で汚れたレギュラージャージを盗み出すかなんて考え始まる。 しかしばれた後が怖い為、結局実行するまでは至らない。 リョーマに別れを切り出されることが何より一番恐ろしい。 案外小心者だなと自分を笑って体を反転させると、 「まだ具合悪いんすか」とタオルを肩に掛けた状態でリョーマがこちらへと近付いて来た。
「なんだ。早かったな」 「シャワーだけにした。跡部さんの様子が変だから、気になってたし」 「気にしてくれるのか」 「そりゃあ、まあ」 熱は無さそうだねと、額に手が当てられる。 少し温かい手の平に、ほっと安心させられる。 リョーマからは跡部が普段使っているボディーソープとシャンプーの香りがする。 くんくんと鼻を動かすと、「もう汗臭くないでしょ」と笑いながら言われた。
「いや、さっきだって汗臭くなんて無かったぜ。おまえ自身のいい匂いがした」 「また変態みたいなことを言う。さっきからなんなの」
嫌そうな顔をするリョーマに「わからない」と跡部は答えた。
「ただ……、なんだろうな。自分が汗まみれなのは嫌だけど、お前だと気にならない。 むしろその匂いを嗅ぐと気持ちが安らぐ、……って変な目で見るなよ。事実なんだから。 どうしてか、俺にだってわからねえよ」
他の人にはそんな反応しないのに、リョーマだけは特別だ。 不快にならないどころか、もっともっとと、思ってしまう。
「口説かれているか、変態的なことを言われているのか何か微妙な感じっすね」 溜息を一つついて、リョーマは横になっている跡部の上にそっと乗っかって来た。
「風呂上がりの匂いじゃ駄目っすか。 正直汗まみれの体で、いつもキレイにしているあんたにくっ付くのって、それも嫌なんだけど」 「なんだ。遠慮してるのか?」 意外な言葉に目を開くと、リョーマはこくっと頷いた。 「だって跡部さんはいつもきちんと身支度整えているのに。 俺の方は部活が終わったそのままで、汗でベタベタしてるのに引っ付くのはやっぱり抵抗ある。 だから、あんまり変なこと言って困らせないで欲しい」
眉を寄せるリョーマに『悪かったな」と言って体を起こす。 タオルに手を伸ばし、優しく髪を拭いてやる。
「シャンプーの匂いも嫌いじゃないぜ。お前のならなんだって好きだからな」 「そうっすか」
なら良かったと笑うリョーマに、跡部も笑顔を返す。 リョーマが嫌がるのなら、部活の後にくっ付くのは控えるべきだろう。 自分だってシャワーで体を洗う前に引っ付いて来られたら困る。その気持ちはよくわかる。
(それに、どうせなら)
二人で一緒に汗まみれになって楽しむ方がいい。 どうせこれ以上無く密着するのだから、何も焦ることは無かったと結論を出した。
終わり
チフネ

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