チフネの日記
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2011年11月27日(日) 言い訳は任せた 不二リョ

「不二先輩」
「何?」
「これ、どんな状況っすか」

背中にべったりと張り付いている不二に呆れ交じりで問い掛けると、
「充電中」と呑気な声で言われる。
「充電って、これじゃどこにも行けないんだけど」

二人が今いるのは、不二が使っている部屋だ。
他には白石と幸村がいる。だが二人は各校のメンバーの様子を見に行っている為不在だ。
色んな植物をそれぞれ持ち込んでいて面白いから見に来てよ、の言葉に乗せられたのが不味かった。
部屋に入るなり、不二にくっ付かれて動き辛い。

「いいの。越前をここに引き止める為にこうしているんだから」
「はあ?消灯の時間になったらどうするんすか。幸村さんと白石さんが戻って来たら?」
「そうなったら解放してあげる」

果たして本当だろうかと、リョーマは不二の言葉を怪しんだ。
逃がさないように腰に腕を回し、おぶさるような形でくっ付いている。
なんでこんなことになっているんだろうと、自分より少し低い体温を感じながら理由を探す。

(やっぱりアレしかないんだろうな)

ペアマッチの試合をすっぽかし、勝手にいなくなって連絡も撮れないままずっと過ごしていたこと。
負け組の帰還に不二は動揺しつつも喜んでくれたから、これで話は終わったと思ったのに、
甘かったようだ。

「やっぱり怒っているんすか?」
「何を」
「その、勝手な行動してなくなったこと。
俺だって一言説明したかったけど、話する間も無かったんだからどうしようもなかったんだって」

リョーマだって不二に黙って他の場所に行くようなことはしたくなかった。
せめて説明くらいはしておかないと、後が怖いとわかっているからだ
でもあの時はあれよあれよという間に崖の下に連れて行かれて、話どころじゃなかった。

「どうしようもない、ねえ」

不二はそう言って、リョーマの髪に顔を埋める。
吐息が首筋に掛かってくすぐったいが、文句を言える雰囲気じゃないので我慢して黙っていた。

「例えばの話だけど、越前は僕が急にいなくなっても何とも思ったりしないの」
「それは……」
「ねえ。どうなの」

静かな口調だったけど、責められているようにリョーマは感じた。
黙って勝手に行動したことが不二に心配を掛けて、そして傷付けたんだと伝わって来る。

だから「ごめんなさい」と口から謝罪の言葉が素直に零れた。

「不二先輩がいなくなったら心配するし、何で言ってくれなかったのかと怒るかもしれない。
反対の立場で考えると自分が勝手な行動したんだってよくわかるよ。
今回は俺が全部悪い」

身を小さくして不二が何を言うか待っていると、
「そこまで怒ってはいないんだけどね」と苦笑交じりで言われる。
「ただちょっと拗ねてみせただけなのに、こんなに効果あるとは思わなかったなあ。
越前がごめんなさいって言うなんて、ちょっと驚いた」
「なにそれ。俺、本当にどうしようかと思った。
先輩が怒ったままなんて、嫌だったからちゃんと反省して言ったのに」
「ごめん、ごめん。でも心配したのは嘘じゃないよ。
試合をすっぽかす前に連絡くらいは入れて欲しかったのも本当の気持ちだ」
「……うん」

背中から抱き締められていた体勢を入れ替えようと、腕が緩められて腰に手が回された。
リョーマも不二の行動を察して、足を動かしてちょうど正面になるように向き合う。
「どこにも行かないでなんて言わないから、せめて居場所位はわかるようにして欲しいな。
僕のお願い、聞いてくれる?」
「なるべく、そうするよう努力する」
「そこでハイと言わないのが越前だよね」
嘘をつかれるよりはいいかとくすっと笑って、頭を不二の肩にくっ付くような形で抱き締められる。
「でも僕は待っているから。君がどこに行っても、見えない所に行ってもずっと待ってるから」
「うん」

頷くことに迷いは無かった。
多分、好き勝手に行動出来るのは、不二が必ず手を広げて待っていてくれるという安心感があるからだ。
そうでなければきっと離れることすら出来ないのだから。

(俺にとって帰るべき場所)
それはここにあると不二にわかって欲しくて、背中に回した腕に力を込める。

体温が心地良いなあとうっとりした所で、ドアが無遠慮に開けられた。

「君達、二人でくっ付いて、暖でも取っているんか」
入って来たのは白石だった。
きょとんとした顔に、リョーマは何をどう返事したら良いかわからず固まってしまう。
不二はにこやかに笑って「そう。節電対策。これなら暖房もいらないでしょ」と言い訳にならないことを口走る。
だが白石は「さすが青学や」と感心するように唸った。
「無駄な電気は使わない。これぞエコやな。四天宝寺も負けへんで」
よし!とまた外へと出て行く。行き先はチームメイトのところだろうか。
負けないって、一体何をするつもりだ。妙な誤解から他のチームメイトを巻き込むつもりだとしたら、申し訳ないことをしたんじゃ……と、リョーマは顔を引き攣らせた。

「何が節電対策っすか」
「あれ?越前は恋人同士の時間を過ごしているんだから、邪魔しないでって言いたかったのな?」「そんなんじゃないっす!」
「でも事実だよね」
「……」
言い返すことが出来ずに黙り込むと、不二は笑ってまた抱き締めてきた。

そろそろ幸村も戻って来そうだから、もう放してと言いたいところだが、
くっ付いていたいと思っているのはリョーマも同じ気持ちだった。
不二の側にもう少しいたい。
だから。

「幸村さんに言い訳する時は、もうちょっとマシなもの考えておいて下さいよ」

そう言うと不二は「わかった」と真面目な顔をして頷いた。

本当にわかっているか怪しいものだったけど、
責任は不二に全部あるから、もうこれでいいやと全て丸投げすることにして、二人きりの時間を楽しむことにした。


終わり


チフネ