チフネの日記
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| 2011年11月20日(日) |
待ちきれないんです 跡リョ |
ふかふかのベッドの中で、リョーマは大きく伸びをした。 時計を見ると、一時間以上経過している。 ぐっすり眠れたなと、満足気に欠伸をした。
跡部のベッドは心地良い。 シャワーを浴びた後、ここで横になるといつも眠ってしまう。 最初は何で勝手に寝るんだと拗ねたように小言を言われたりしたが、 今はもう諦めたのか跡部は何も言わない。 テニスをした後での昼寝って最高なんだよねという言い訳にならないことを口にしてから、脱力して眠りを邪魔することは無くなった。 リョーマが起きてから、やっと二人の時間が始まるのだ。 用意されたお茶を飲んで、会話を交わしつつ触れ合ったりして恋人らしい過ごし方をする。
しかし今日に限って跡部はすぐ側にいない。 いつもなら眠っているリョーマに引っ付いて本を読んでいるのだが……。
体を起こして部屋の中を確認すると、跡部が机に座っているのが見えた。
「勉強してんの?」 声を掛けると、「起きたのか」と首だけ捻って跡部が答える。 「勉強じゃねえけど、ちょっと急の用事でな。すぐ終わらせるから待ってろ。 ファンタならそこに用意させてある」 いつも二人が座ることになっているソファの前にあるテーブルには、ファンタとお菓子が用意されていた。 起きる時間を見越して、持って来てあったのだろう。 グラスの氷はほとんど溶けておらず、炭酸がシュワシュワと淡い音を立てている。 その横には冷たい水もちゃんと置かれてる。 喉が渇いたので、ありがたくそれを頂くことにした。 それからソファに座り、お菓子を食べつつ、ファンタをちびちびと飲んでいく。 食べ終わる頃には跡部がやっている作業も終わるだろうと、そう考えていた。
だが、皿が空になっても振り返る気配すらない。 リョーマがいないかのように没頭している姿に、流石にムッとしてしまう。 常ならば纏わりついてくるのは跡部の方からだ。 リョーマがゲームに夢中になっていると、こっちを向けとばかりに腰に手を回して来たり、邪魔をするのに。 今はこちらを気に掛けたりもしない。 リョーマの気持ちとしては、もう跡部と一緒の時間を過ごすというスイッチが入っているのに、 放置されたままなのは、正直面白くない。
勝手なのは重々承知の上、「暇なんだけど」と跡部に声を掛ける。 するとこちらを見もせずに、「ゲーム機のある場所ならわかっているだろ。遊んでていいぜ」と言うではないか。 いつもなら「ゲームより俺様の相手をしろ」と言ってうるさいくせに。 こっちを構う余裕すら無いのkとムッとしつつも、リョーマ専用となっている家庭用ゲーム機を納められている場所から取り出す。
どうせなら跡部のことなんて忘れる位、ゲームに夢中になってやる。 半ば当て付けのようにカシャンと乱暴にソフトを突っ込んで、テレビ画面をオンにする。 音が少々大きいが、注意されたわけじゃないからそのままにしてゲームを始める。 しかしどうしても跡部のことを気にしてしまうせいか、何度もゲームオーバーになってしまう。 その度ごとに「あーあ」とわざとらしく声を上げても、 やはり振り返ることなく跡部は変わらない姿勢のまま机に向かっている。
(ムカつく) いつも跡部の方からくっ付いて来るのが当たり前だったので、 手の平返したような態度に苛々してしまう。 今やっていることはこっちに構う余裕が無いくらい、大事なことなのかもしれない。 大人しく待つのが、恋人としての正しい選択だろう。 だけどリョーマとしては、一人きりで無視されているのがどうにも我慢出来ないんだ。
(邪魔しなきゃ、いいんだ)
側にいる位は良いだろうと、跡部が座っている椅子の直ぐ下にクッションを置く。 そして椅子に背を付ける形でぺたんと座り込む。 移動したことには流石に跡部も気付いて、「どうした。もう少し掛かるぞ」と言った。 「わかってる。ここで待ってるだけ」 テレビのリモコンを操作して、ゲーム画面から普通の放送へと帰る。 特に何か見たいというわけじゃないが、時間を潰すには必要だ。
「そうか。待ってろ」 それ以上追求することなく、跡部は手を動かし作業を続けている。
どの位掛かるんだろうと思いつつ、ぼんやりとテレビを眺める。内容は全く頭に入らない。 お預けを食らっているせいか、珍しく跡部に触れたいという欲求が膨らんで行く。 普段からそうしろと言われそうだな、と思いつつ、膝を抱えていると、 パタン、とノートパソコンを閉じる音がした。
「椅子を引くから、ちょっと下がってろ」 跡部の声に、リョーマは急いで距離を取った。 立ち上がって「待たせたな」と跡部が屈んで優しく頭を撫でてくれた。
「終わったの?やけに早いじゃん」 もう少し掛かるなんて言っていたくせにと返しつつも、 早く追ったことが嬉しくて知らず声が弾む。 「まあな。お前を待たせていると思ったら、勝手に片付けるスピードも上がっていた」 来いよ、というように跡部が両手を広げる。
「待たせたな。今から思い切り構ってやるから、それで許せ」 「何、その言い方。別に構って欲しくなんて無いけど」 いつものように生意気な言い方をしても、今日の跡部には全てばれてしまっている。 「俺の側に居たかったくせに、よく言うぜ」 「別に、そういうつもりじゃない」 「照れるなよ」 「照れてない!」
言い返しても、跡部のニヤニヤした顔は変わらない。 図に乗らせてしまったと考えても、もう遅い。 それに触れたかったのは事実だから、しょうがない。
「わかった、わかった。いいから、俺にくっ付いていろよ」 リョーマがなかなか素直にならないから、 跡部の方から近付いて、ぎゅっと抱き締めて来る。 心地良い体温に、これが欲しかったんだとほっと息を吐くと、跡部が言った。
「やっぱり、こうしている方が落ち着くな」
それに関しては全くの同意だった。 でも頷くのも悔しくて、リョーマは黙ったままでいた。 返事の代わりに背に手を回しただけで、跡部はそれで理解したようだ。
後は待ち望んでいた恋人として過ごす時間に、ゆっくりと身を委ねた。
終わり
チフネ

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