チフネの日記
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2011年10月06日(木) 似合いの二人 塚リョ

越前リョーマの突飛な行動は今に始まったことではない。
何度も驚かされて、平静を保つのにこれでも苦労させられている。
だが、今回の要求は行過ぎている。
真昼のしかも校内でするにはあまりに相応しくない行為だったので、
さすがに手塚も「止めろ」と声を上げた。
するとリョーマは、きょとんとした顔で「なんで?」と言った。
罪悪感の欠片も無い表情に、頭を抱えたくなる。
全く、この子供にこんなことを教えたのはどこのどいつだ。
最も、最初に手を出したのは自分だったことを考えるとリョーマばかり責められない。
優しく諭すように手塚は「ここは学校だ」と言った。

「え、だってちょっと前、部室でやったよね?」
その時は部長から仕掛けて来たくせに、と少しムッとしたように言われる。
たしかに、その通りだ。汗を掻いたリョーマがポロシャツを脱ぐ姿に欲情し、手を伸ばしたことは認めよう。
だけど皆が帰った後で、こんな明るい時間では無かったはずだ。
「部室と一緒にするな。いつ誰が入って来てもおかしくないんだぞ」
「鍵、ちゃんと掛けたよ」
「そういう問題じゃない。とにかく止めてくれ。頼むから」
必死でお願いすると、「仕方無いね」とリョーマは手塚の足の間から退いた。
止めなければ今頃は、リョーマの言う「今日は俺が可愛がってあげる」を実行されていただろう。
危なかった、と手塚はほっと息を吐いた。

つまらなそうに隣の椅子に座ったリョーマに、「何故こんなことをしようなどと言い出した」と問い掛ける。
最初は消極的だったが、何度も体を重ねて行く内にリョーマの言動は変わっていった。
唐突に「しよう?」と言い出し、押し倒されて面食らったこともある。
主導権はこちらに欲しいのに、ままならないものだ。
さっきまで普通に昼食を取っていたかと思えば、
「生徒会の執務室って普段は誰も来ないんでしょ。鍵掛けたら完璧だよね」と言って、素早くドアを施錠した。
そしていきなり「まだ時間あるから、してみない?」と床に跪き、股間に顔を埋めようとしたから、驚いた。
ハッキリ言って心臓が止まるかと思った。
それもこれも余計な知識を植え込んだ自分の所為か、と手塚はこれまでのことを省みて頭を抱えたくなった。
積極的になってくれるのは嬉しいが、もう少し時と場合を呼んで欲しいと思うのは我侭なのか。

手塚の苦悩を知らず、リョーマはけろりと「部長、今日誕生日だって言ってたよね」と無邪気に声を上げる。
「そうだな。で、今のことと何か関係あるのか」
「うん。お小遣い残ってないから、俺に出来ることをしてあげようと思ったんだ」
得意げな顔をするリョーマに、「プレゼントのつもりか」と手塚は顔を引き攣らせながら言った。
だとしても白昼堂々と渡すものじゃない。何故、それがわからないのか。
「うん、そう」
リョーマは手塚の気持ちに気付くことなく、大きく頷いた。
「……だとしても、校内ですることじゃない。それに何故、今なんだ」
「だって今やらないと忘れるかもしれないじゃん。それにこういう所でやるのも部長も燃えるんじゃないかと思って。ほら、以前は図書館でも」
「俺が悪かった!お前に無体を強いたのは認める。だからそれ以上は言わないでくれ」
「え?でも、さっき部長もちょっと嬉しそうにしてたっすよね」
「頼むから、もう喋るな……」

がくっと肩を落とす手塚と反対に、リョーマは楽しそうに笑っている。

「でもさ、学校は駄目、今は駄目とか言っているけど、しようとすることは拒否しないよね。
それって後でゆっくりやって欲しいってことでしょ。
部長って案外正直だよねー」
「……」

とうとう手塚は机に突っ伏した。
敵わないと思うのがこういう時だ。
そうだ、嫌じゃない。時と場合さえ考えてくれたら、むしろ嬉しいくらいだ。
リョーマが咥えた姿を頭の中で想像すると、体の一部が熱くなる。

(俺は、大馬鹿ものだ)
リョーマのことを叱れないな、と溜息をつく。\\
最初から自分の方が悪いとわかっている。
好きだとリョーマが返してくれただけでは満足出来なかった。
手を出したのは、手塚の方からだ。
リョーマが行為に夢中になって、積極的に仕掛けてくることをどうして咎められよう。
責任を取るべきだと、手塚は頭を机に擦りつけながらようやく結論を出した。

「越前。俺も、その嫌というわけじゃなくて」
「あ、予鈴」
あっさりと椅子から立ち上がり、リョーマは大きく伸びをした。

「部長がぐだぐだ言っているから、結局出来なかったね。
ま、しょうがない。今年のプレゼントは無しってことで」
「無しなのか!?」
「何、必死になってんの。やっぱりその気だったってこと?」

にや、と笑うリョーマに、手塚は迷いながら結局は頷いた。

「え、本気?」
「いや、しかし今はやはりまずい。誰かに見付かったら、お前の立場が悪くなるかもしれない」
「気にしているのは部長でしょ」
「いや、お前のことで誰かが面白おかしく噂することが気に入らない」

本気を込めてそう言うと、「ふーん」と納得したようにこちらを見上げた。

「今の答えは悪くないっすよ。
じゃ、続きは部長の家でってことでいい?誕生日プレゼント、もらってくれるんでしょ」
「勿論だ」
「そこで嬉しそうな顔をするのが、部長だよね」

また後でね、と手を振って、リョーマは執務室を先に出て行く。

残された手塚は(そんなに顔に出ていたか?)と頬に手を当てた。

実際、嬉しいのだからしょうがないじゃないか。



翻弄されてる振りをして、内心ではリョーマの提案を喜んでいる。

似合いの二人だな、と呟いた。


終わり


チフネ