チフネの日記
DiaryINDEXpastwill


2011年10月03日(月) プレゼントをくれてやる  跡リョ

「今日は俺様の誕生日だ。覚悟して来たんだろうな?あん?」

何故か勝ち誇ったような顔をして言う跡部に、
リョーマは溜息をついた後、「頭、大丈夫?」と問い掛けた。
誕生日だからって、何故そんなに偉そうなのか。ああ、でも偉そうなのは元からか。
それにしたって覚悟ってなんだ。
これまでの経験から、ろくでもないことに決まっている。
どうしてくれようかと、跡部を睨み付ける。

「なんだ、その顔は。俺の誕生日を祝いに来たんだろ?
なのに頭の心配をするとは、どういうことだ」
「どうもこうも。こっちは本気で心配しているんだけど。病院行く?」
「真剣に言うな!まあ、いい。とにかく今日は俺が主役なんだから、今から言う通りに」
「ちょっと待って。何言おうとしてんの?」
「決まってるだろ。今日という日は何をしても許されるはずだ。
お前は俺を祝う立場にある。俺の望みを何でも叶えてくれるってことだろうが。
さあ、越前。まず服を」

最後まで言わせず、リョーマは跡部の腹に思い切り拳を叩きつけた。

「ふざけるなよ……」

床に蹲った跡部を冷たい視線で見下ろす。

「これ以上くだらない妄想を垂れ流しにするつもりなら、帰るけど?」
「帰るなよ!今日は俺の誕生日なんだぞ!お前が祝ってくれないと寂しいじゃねえか!」

すがってくる跡部に、「だったら、もうおかしなこと言わないでくれる?」とリョーマは言った。

「だ、だって特別な日なんだから、ちょっと位は俺のしたいようにしてもいいじゃねえか」
「わかった、帰る」
「悪かったって!もう言わねえよ!」
「よし」

だったらいいよと、外へ向かおうとする足を止める。
涙目になっている跡部に、変な顔、とちょっと笑った。

「誕生日だからって、好き勝手出来るわけないじゃん。
何、勝手に盛り上がってんの。信じられない」
「こんな時くらいしか、俺のお願いは聞いてもらえないかと思ったんだよ。悪いか。
色々、考えてわくわくして眠れないほどだったのに……」

袖口でそっと涙を拭う跡部に、リョーマは何考えているんだと呆れてしまう。
しかし次の瞬間には、跡部は明るい顔をしてこちらに向き直った。

「けど、お前が帰るって言う位なら我慢した方がマシだな。
仕方無い。今年は諦めてやることにしてやろう」
「今年は、って来年も跡部さんが考えているような望みは叶えるつもりはないんだけど……」

しかし跡部はリョーマの言葉が届いていないように(聞こえない振りをしているだけかもしれない)、
「さあ、食事にするぞ!誕生日だからいつもより豪華なもの作らせてる。きっとお前も喜ぶはずだ」と声を上げた。

「俺が喜んでどうすんの。跡部さんの誕生日なのに」
「構わねえよ。お前の笑顔が見られることが、俺にとって何より嬉しいプレゼントだからな!」

さっきまで疚しいことを考えていたくせに、笑顔で恥かしい台詞を吐く跡部にリョーマは頭を抱える。

(これが無意識だから、余計怖いよ……)

変な所で純粋だから、困ってしまう。

「ん?どうした、越前」
「いや、プレゼントは一応あるっちゃあるんだけど」
「本当か?お前がくれるものならなんだって喜んで受け取ってやろう」
「あ、いや……そんな大層なもんじゃないから。期待されても、困る……」
「なんだ、煮え切らないな。けど、後の楽しみにしておくから、今はまず飯を食おうぜ」

跡部に手を引かれて、豪華な(いつも豪華なのだが、今日はそれ以上のものを出してくれるらしい)食事を用意されている部屋へと向かう。


(どうしよう……。プレゼントが、まさか『俺本人』とは思っていないんだろうな)

さっき、釘を刺したばかりだ。
でもあれは跡部から仕掛けられるのが嫌なだけで、実は自分からするのはOKだったする。
自分が主導権握っているのなら、妙なことをされる心配が無い。
’たまには越前が積極的になってみたら?’
’きっと跡部も喜ぶよ!’
そんな先輩達の要らぬ助言も、誕生日だからやってみようかなと耳を傾け、資料も色々借りた。
この位ならなんとかやれそうかなという心積もりで、今日はここにやって来た。

(なのに、跡部さんが息荒くしてキモい顔して迫って来るから、いきなり挫けたんだよな……)

この後、どうやって『プレゼント』を渡そうかと悩んでしまう。


「おい、どうした?まさか食欲が無いとか言うなよ」

黙り込むリョーマに、跡部が心配そうに顔を覗きこんで来る。

「ううん、食事楽しみだなと思って」
「そうか、そうか。いっぱい食えよ。ケーキも用意させてあるからな」
「だから、誕生日の主役は俺じゃなくてあんたでしょ……」


悩んでいても仕方無い。

頃合を見て、押し倒すか、と考える。
跡部が何を希望していたか知らないが、自分なりに喜ばしてやろうと腹を括る。




食事の後、二人きりになった途端、跡部はリョーマの足払いによってベッドに倒れこむことになる。
そして。

「跡部さんは動かないで。今日は俺が、……頑張ってみせるから」

何を、だと一瞬青くなるが、たどたどしく衣服を脱がして行くリョーマの手を見て、
様子を見ておこうと跡部はこの状況を楽しむことにした。
動かなくてもいいと言うこの状況も、考えてみれば面白いことだ。

リョーマという『プレゼント』をじっくり一晩中受け取った跡部は、また新たな扉を開けたことを知った。




その翌日はご機嫌過ぎる様子で登校し、氷帝の人々に思い切り引かれたりもしたが、
何も気にすることなく、リョーマとの幸せな記憶に浸り続けていた。


ちなみに再びリョーマに「またあの時みたいにやってみろよ」と命令した所、
「調子に乗るな」とぼこられたのは言うまでも無い。


終わり


チフネ