チフネの日記
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| 2011年09月21日(水) |
寂しくなったら、呼んで 跡リョ |
「同じ学校だったら良かったとか、考えたりしねえの?」
自転車を漕いでいる桃城の背中に、リョーマは「え?」と聞き返した。 いい風だなとぼんやりしていたので、よく聞き取れなかった。 「聞いてなかったのかよ」 「あー、うん」 「人の自転車に乗っておいて、寝るなよ」 「わかってる」 「どうだか」 「それで、何の話だっけ?」 「だから、跡部さんと同じ学校だったら良いなとか、お前は考えないのかって話だよ」 言われて、リョーマは「なんだ、そんなことか」と軽く返事する。 「そんなことじゃねーよ。割と重要じゃねえか?」 さらに絡んで来る桃城に、リョーマは首を傾げた。
跡部と付き合っていることは、青学レギュラーには知られている。 隠すつもりもなかったので、先輩達に聞かれた時点でリョーマは正直に話した。 結果、跡部と三年生達の間でリョーマの知らぬ所でひと悶着あったらしいのだが、 今は平和に過ごしている。 桃城は「お前が決めたことなら、特に言うことはないな」と、笑って認めてくれた。 今まで詮索することも無かったのに、今日は一体どうしたのだろう。
「学校が同じってそんなに重要なこと?別に毎日会えなくても、不都合は無いけど」 「お前に聞いたのが間違いだった。普通は会いたいって思うだろ。好きな奴が相手なら、尚更だ」 「桃先輩?誰かそういう相手でもいるんすか?」
桃城の口調から、他校に好きな人でもいるのかと思って鎌をかけてみた。 すると後姿でもはっきりとわかる位、桃城の耳が赤くなった。
「え、相手は誰?俺の知っている人?」 「あー!もう、うるせえよ!自転車から降りろよ」 「ここで降ろしたら、他の先輩達に今の会話を全部言うから」 「頼むから止めてくれ!」 悲鳴を上げる桃城に、「じゃあこのままマックに直行ね。当然桃先輩のおごりで」と付け加える。
「わかった……。でも絶対、秘密にしろよ」 「っす」 「あー。なんて奴に質問したんだ。参考にもならねえし、踏んだり蹴ったりだ」 「さっきの同じ学校だったらってやつ?桃先輩はどう思ってんの?」 「そりゃ同じなら今より一緒に居られるから、いいに決まってるだろ。 会えなくて寂しいとか、考えなくても済むからな」 「寂しい?」 「茶化すなよ。お前は違うかもしれねえけど、跡部さんは俺と同じ意見かもしれないぞ?」
まさか、と返事をしてから、リョーマは跡部のことを考えた。 向こうは向こうで自由にしているとばかり考えていたから、気にもしたことが無かった。
翌日。 「ねえ、寂しいって思ったことある?」 「いきなり、なんだ」
跡部と会う日だったので、リョーマは昨日の疑問を早速ぶつけてみることにした。 考えるよりも聞いた方が早い。それがリョーマの考え方だ。
「桃先輩がさ、別の学校だとあんまり会えなくて寂しくなる時もあるんじゃないかって言うんだ。 でも俺そんなの気にしたこと無かったんだけど、跡部さんはどうなのかって気になった」 「気にもしないって……、そこ、やけに引っ掛かるな。 まあ、お前らしけどよ」 軽く溜息をついて、跡部はリョーマの額に手を置く。そしてぐいっと上へ引き上げた。 目が合った状態で、答える。 「正直に言うと、同じ学校なら良かったと思ったことはある」 「そうなんだ」 意外、と目を瞠ると、「そんなの当たり前だろ」と苦笑いされる。
「好きならもっと一緒にいたいと思うのは当然だ。 お前の感覚こそ、どうなっている。俺のこと、好きじゃねえのかよ?」
問われて、リョーマはぐっと口篭った。 ここで質問されるとは思わなかった。よりによって、答え辛いやつを投げて来るなんて、ずるい。 だけど手を振り解いて誤魔化すのは、自分の質問に答えてくれた跡部に不誠実な気がして、 リョーマは目を合わせたまま「それは、まあ……」ともごもごと口を動かした。
「はっきり言えよ」 「好き、だよ。 でも跡部さんといると、平和な学園生活が送れない気がして、やっぱり同じ学校っていうのは無理かも」 「ああ?」 「だっていつも注目を集めているような行動ばっかり取るじゃん。 側にいると、俺にも視線が集まりそうでおちつかない。だから別の学校の方がちょうど良いっていうか……」 言い訳をすると、「仕方ねえな」と跡部は額に置いていた手を上に持って行き、髪を優しく撫で始めた。
「まあ、好きって言葉が聞けただけ充分だ。 それに俺も時々、これで正解だったと思うことがある」 「正解って?」
どういうこと、と瞬きしている間に、今度は肩を引き寄せられる。
「お前みたいな危なっかしい奴、側に居たらいつもハラハラして心臓が持たない」 「悪かったね」 「全くだ。誰にも見せないよう、閉じ込めておきたくなる」 「え?」 「冗談だ」 笑いながら、跡部はリョーマの鼻を軽く抓んだ。
冗談なんて軽い口調で言ったけど、少しだけ真剣さが滲んでいた。 その位、リョーマにもわかるようになっていた。
「じゃあ、お互い今のままで良かったってことっすね」 「ああ」
頷く跡部の頭に手を伸ばし、ぐいっと引き寄せる。 「おい……」 驚いてる間に、軽く唇にキスをする。
「でも寂しくなったらすぐ呼んで。 その位のことは、俺にだって出来るから」
跡部が望むように、大人しく閉じ込めていることはきっと出来ない。 だからせめて、会いたいという望みは叶えたい。寂しくしないよう、側に居たい。
そう思いながら跡部の目を見詰めると、 「無理だな。お前を呼びつける前に、俺の方から会いに行く」と笑いながら、キスされる。
「俺が会いに行くって言ってるのに、なんであんたの方から来るとか言ってんの?」 「俺が行く方が早い。車を飛ばせば、直ぐだからな。 お前はバスの時間とかあって、結局会える時間が遅くなるだろ」 「そんなのずるい。だったら、走って行く。足には自信あるから」 「そういう問題じゃねえだろ……。 それより早く会えた分だけ、キスしろ。それで釣り合いが取れるな」 「どういう計算だよ」
調子に乗るな、と跡部の額を軽く叩いてやる。
痛い、と笑いながら言う跡部に、リョーマもつられて笑う。
別の学校に通っていることは、今更変えられない。 だけど、寂しさを埋められるのなら。
「でも……たまには、あんたが満足するまでキスしてもいいけど」
よろめいて床に転がる跡部を見て、今度は声を上げて笑った。
チフネ

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