チフネの日記
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誓って言うが、今まで同性に対して好きという感情を持ったことなどない。 ましてや自分よりも幼い少年に惹かれるなんて、あるはずもない。 少し前なら変態だ、と軽蔑していただろう。 でも、もう笑えない。 女性に不自由することも無かったのに、何故こんなことになったのか。 薄っぺらい胸とか、柔らかくもない体とか跡部の理想を何一つ満たしていないのに、 どうしてかリョーマに欲情する自分がいる。 姿を見ただけで、ぎゅっと抱き締めたくなる。
病気かもしれないと青い顔をしていると、 「さっきから、何その溜息」と声を掛けられる。
振り返ると、リョーマがベッドの上で寝転んで漫画を手にしている姿が目に入った。 人の家でよくそんなに寛げるものだ。 最初から警戒心も無く「良いベッドだね」とダイビングした時は眩暈すら起こしそうになった。 男の前でそんなに無防備になるんじゃない。 注意しようと考えたが、むしろ自分にとって都合の良い展開だと思い、黙っておいた。 それに男が男に対して気を付けろというのも変な話だ。なのでこのままでいい。 ベッドの上で菓子を食うなとか、小言を言ったことは一度も無い。
部の先輩に借りたとかいう漫画をベッドに置いて、リョーマは体を起こす。
「どっか具合でも悪い?」 「ある意味そうかもしれないな」 「やっぱり。そうなんだ」 「何のことだ?」 納得したように言うリョーマに、聞き返す。 「頭の病気なんじゃないかって、先輩達が噂してたんだ。 そうだよね。普通の人は跡部さんみたいな言動はしない。病気っていうのなら、わかる気が」 「おい!納得してるんじゃねえよ!」
何てことをリョーマに吹き込むんだと、跡部は眉間に皺を寄せた。 小姑といっていい位、青学の連中は厄介な存在だ。 今も交際に反対されている。 妨害というようなレベルではない。 それでも負けずにリョーマとのお付き合いを続けているのは、好きという気持ちがあるからだ。 自分でもわかっている。 こんな子供に、しかも男に執着しているのってどうなんだと、考えてしまうけれど。
「じゃあ、何なの?さっきから俺の方を見ては、溜息ついて。感じ悪いよ」 言いたいことがあればハッキリ言えば?と、リョーマは言う。
(こいつは思ったことを直ぐに口にするからな)
溜め込んでいても解決はしない。 問題があるなら、真正面からぶつかって行く。 結果がどうであれ、逃げたりしない。 それがリョーマのやり方だ。 こんな可愛い顔をしているくせに、男らしいんだよなと感心する。 いや、だからこそ舐められないよう背筋を張って生きているのかもしれない。 そういう所が、跡部の目に好ましく映る。 好きという気持ちを引いても、リョーマは魅力的な人だ。 だからといって手を出す理由にはならない。 12歳の少年に、と考えると途端に罪悪感に駆られる。 なのに側にいると触れたくなる。もう、末期症状だ。
「お前にに言っておきたいことがある」 「何なの、いきなり」 急に胸を張った跡部に、リョーマは怪訝な顔をする。 「責任、取れよ」 「はあ?」 固まるリョーマを余所に、跡部は構わず続けた。 「元々俺は男に、しかも子供に手を出すような奴じゃなかった。 なのにお前と出会って、常識が覆された。 その責任を取ってもらうぞ」 「押し倒してきたのは、跡部さんの方でしょ。なんで被害者面してんの?」 間違っていると怒るリョーマに、「被害者だなんて思っていねえぞ」と返す。
「けど、お前と居ることによって新しい扉が開いた。 越前リョーマ以外何の興味も持たなくなるような世界に連れて来られた気分だ」 「キモイ。やっぱり頭の病気なんじゃないの」 引くわと体を後退させるリョーマに、「聞けよ!」と跡部はベッドの上に乗って距離を縮めた。 「多分この先にも男を抱きたいなんて思うことはない。 胸もないのに興奮するのは、後にも先にもお前だけだろう」 「……はあ」 「子供みたいなお前を泣かせて罪悪感を煽られると同時に、もっと泣かせたいと思ってしまう。 俺は最低だ」 「うん、最低っすね」 「だがもう他の奴では満足出来ない。お前が相手をしてくれないと、この性欲を収められそうにないんだ」 「変態だ!」 「こんな風にしたのはお前にもあるんだぞ!?だから責任取れって言っているんだ」 「開き直った!しかも無茶苦茶なこと言ってるってわかってんの!?」
どうしようと、リョーマは顔を引き攣らす。 その間に出来た隙を見逃さず、跡部は細い腕を手に取った。
「断るのなら、俺にも考えがある」 「何するつもりっすか」 「お前の方も俺無しで生きられないようにしよう。これで平等だな」 「平等の定義がわからないんだけど」 「大丈夫だ。責任は取る」 「いらない。俺は現状で満足している!」
喚くリョーマの口を唇で塞いだ。 自分だけが夢中過ぎて不公平だと思うなら、リョーマも同じようになればいいことに気付いた。 そうやって二人共、常識から外れて寄り添って生きていけばいい。
勿論、跡部の方では責任を取る準備はいつでも用意出来る。
抵抗するリョーマの姿も興奮する。まだ子供の姿なのに煽られていく。
(世間に認められなくても、こいつが同じ所まで落ちてくれなくても)
自分は引き返せない所まで来ていることを、知った。
終わり
チフネ

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