チフネの日記
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| 2011年04月02日(土) |
ちぐはぐゲーム 1 (たまご リョーマ視点) |
跡部と会うようになったのは、関東大会の初戦が終わった頃だった。 桃城と一緒にストリートテニス場に顔を出した時に声を掛けられた。
「暇そうだな。だったら俺の相手をしろよ」
その時、桃城は橘妹と会話していて、リョーマは放って置かれていた為に暇だった。 それに跡部と打ちたいという気持ちもあった。
関東大会を勝ち進んで行けば、もっと強い相手と試合することになる。 練習相手が欲しい。 青学のレギュラー達も強いのだが、いつも同じ相手では手の内もある程度読めてしまう。 一番相手をして欲しい手塚は、九州に治療しに行ってしまった。 その手塚を破った跡部あら、相手に不足はない。
リョーマは誘いに乗って空いているコートで跡部とテニスをした。
しかしストリートテニスは、皆で使用する場所だ。 独占していると、当然文句を言われる。 数回打ったところで、跡部が「出ようぜ」とラケットを下ろした。
「こんなところじゃ落ち着かねえな」 「そうっすね」
少し調子が出た所なのに勿体無かったなあと残念そうな声を出す。
すると、「……今度、別のコートで打たねえか?」と跡部が言った。
「別のって?」 「俺がよく行くスポーツクラブのコートなら邪魔されずに打てるぜ」 「え、でも使用料高いんじゃないの」
跡部が通っている所なら、一般の人が入れるような所じゃなさそうだ。 すると、「バーカ、。お前から金なんて取るかよ」と、帽子のツバをピンと指で弾かれる。
「元々、うちが所有しているクラブだ。金なんていらねえよ」 「え、でも」 「嫌なのか、そうじゃないのかハッキリしろ」
そう聞かれて、「嫌じゃない」とリョーマは答えた。
満足そうに頷く跡部を見て、そんなに自分と打ちたかったのかと首を傾げる。
連絡先を交換し、それから時々指定のスポーツクラブで打つようになった。 弱点を攻めて来る跡部のテニスは、自分がどこを克服するべきかよくわかるから、やりがいがあった。 勝ったり負けたりを繰り返しながら、楽しんでいたが、とあることが気になり始めた。
「ここって、いつも自由に使っていいんすか?」
他の利用者もいるだろうに、いつ来てもすぐにコートに入れるのは跡部が特権を使っているからだと思った。 しかも綺麗で設備も充実している場所を毎回ただで使うのも、さすがに悪い。
リョーマの考えが伝わったのか、跡部は少し考えてから口を開いた。
「気兼ねしているって言うのなら、ただで使える所に移動するか?」 「え、そんな所あるんすか?」
どこ?と尋ねると「俺の家」と言われる。
驚きはしなかった。 コートの一つや二つ、持っていてもおかしくない。 少し興味もあったし、だったら次回からはそこで、と約束した。
迎えに来た車に乗って到着した先は、期待を裏切らない大きな屋敷だった。 コートも4面もあって、ここでプロの試合中継したっておかしくない位何もかもが揃っている。
跡部の家らしい、とリョーマは思った。
3回ほど跡部の家でテニスをしたのだが、その日は少し様子が違った。 疲れているようにも見えて、動きにもキレが無い。 休憩を申し出ると、跡部は素直に頷いてコートを出た。 飲み物を飲んでいる間も、溜息をついている。
やっぱり、おかしい。
ひょっとして恋の悩みなのかと冗談を口にすると、意外にもそれは当たっていた。 しかも、片思いだと言う。 跡部の秘密を知ってしまったリョーマは、この後も相談に乗ることを約束させられた。
「で、なんで俺が予行練習い付き合わなくちゃいけないんすか……」
欠伸交じりに尋ねると、「お前が相談にはいつでも乗るって言ったからだろ」と返される。
そんな風に言った覚えは無い。 「何かあったら、愚痴くらいは聞くよ」とは言ったが、いいように取られている。
「それで、今日は何をするんすか?」
休日に家まで迎えに来て、連れ出されただけで車がどこに向かっているかは知らない。 テニスしたかったのにと恨みがましく言っても、「今日は予行練習だ」と跡部は譲ってくれない。
「告白の練習なら一人でやれば?何で俺が付き合わなくちゃいけないんすか」 「人からの意見も聞いておこうと思ってな。 それに俺が片思いしていることは、お前しか知らない。だったら付き合うのは当然だよな?」 「……」
無茶苦茶だと思ったが、相談出来る相手が他にいないというのでは仕方無い。 跡部には今まで世話になっている。 今日位は付き合ってもいいだろう。
「ここまで来たんだから、もう付き合うけど。で、何するつもりなんすか?」 「デートだ」 「は?」 「あ、いや……。そうじゃなくて、相手をデートに誘って、その後で告白しようと考えている」 「わかった。つまり当日に失敗がないように、下見しておくってことでしょ?」 「そうだ」
跡部の顔がぱっと輝く。 好きな人のこととなると素直なんだな、とリョーマは少し笑った。 いつもの尊大な態度よりも、こういう部分を見せたら好感度が上がるのではないだろうか。
「何だよ、笑ったりして」
怪訝そうな顔をする跡部に、「だってさ。あんたがその人のことすごく好きなのがわかって、面白いから」と返す。
「悪かったな」 ぷいっと、跡部は横を向いた。 「好きなんだから、しょうがないだろ」
どうやら照れているらしい。 いつも偉そうな跡部よりも、万倍も親しみが持てる。 相手がどんな子なのか知らないが、こういう所をわかってくれるといいねと、リョーマは思った。
「で、遊園地っすか」 「悪いか」 「悪くないけど、跡部さんが選ぶにしては普通かなって」 「どういう所に連れて行くと思っていたんだ」 「貸し切りしたオペラコンサートとか、豪華クルージングとか、ヘリに乗って見晴らしの良い山頂へ向かうとか」 「ちょっと待て、なんだそれは」 「だからイメージっすよ。誰も邪魔されない所で告白するかなと思って」 「いくらなんでも、いきなりそんなことするかよ」
げんなりした顔をして、跡部は言った。
「それに片思いの相手なんだぞ。俺の趣味につき合わせてどうする。 相手が好きそうな場所を連れて行った方が、上手く行くだろ」 「なるほど」
納得したように、リョーマは頷く。
「俺のアドバイスなんて必要ないんじゃないの? もう、今すぐデートに誘って来たら?」 「いや、念には念を入れる」 「あ、そう」 「じゃあ、入るか」
入り口に向かって歩こうとする跡部に、「ちょっと待って。俺と入るの?」と声を上げる。
「他に誰がいる。それとも遊園地は嫌いか?」
問われて首を振る。 遊園地はむしろ好きな方だ。 向こうに居た時も、何人かの家族と一緒にテーマパークに行って疲れ果てるまで楽しんだ思い出がある。 テニスとは違うが、わくわくさせてくれる気持ちには変わりない。
「なら、問題ないだろ」 「けど、チケット買う金持ってないっす」 「バーカ。俺がつき合わせているんだから、全部払うに決まっているだろ。 そんなの気にすんな。ほら、行くぞ」 「え、ちょっと」
手を引っ張られ、跡部に引き摺られる形で入り口へと連れて行かれる。
こんな強引なやり方はマイナスポイントだと、後でアドバイスしておこうと思った。
チフネ

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