チフネの日記
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| 2011年03月26日(土) |
跡リョ 考えたり、わかり合えたりして |
何で自分なのかな。 ふと考える時がある。
この人に好かれているという自覚はあったけど、理由はわからなかった。 告白された時、いいんだろうかと少し迷ったが、一緒にいる時の居心地の良さと、 自分も意外と彼のことを気に入っていることに気付き、付き合うことを選んだ。
その時、見せてくれた嬉しそうな笑顔に、不覚にもドキドキさせられた。 やっぱり受け入れて正解だったと思ったはずなのに。
何でだろう。 色々、考えてしまう。
「何やのそれ。跡部の写真、か?」
手元を覗き込まれ、リョーマは思わず体を後ろに引いた。 その間に忍足は持っていた写真を、ひらっと奪ってしまう。
「こんなん持ち歩いているのか。越前って意外と可愛い所があるんやな」 「マジかよ。侑士、俺にも見せて」 「あ、俺もー」
騒ぎ出した氷帝のレギュラー達に、 「言っておくけど俺のじゃないっすよ」とリョーマは誤解が大きくなるまえに声を上げた。
「なら、なんで越前がこの写真を持っているんや」 「跡部さんのファンの子が落としていったやつを拾っただけっす」 「なんか嘘くさい話だなあ」 「本当は越前君のじゃないのー?」
疑いの目を向けられ、「嘘じゃないのに」と、リョーマは憮然とする。
氷帝のレギュラー専用部室は、乾にとっても、もう馴染みある場所だ。 好きなように寛ぐといいと言う跡部の言葉に遠慮なく甘えることにして、 座り心地の良いソファの真ん中を占領している。 誰も文句を言わないのは、跡部が皆に通達したからだ。 リョーマは自分の大事な恋人だから、ここで何をしてもいい。文句を言うな、と。
わざわざ付き合っていることを公開しなくても、と思ったけれど、 この方が会っていることを詮索されずに済むか、とすぐに前向きに捉えることにした。
そんなわけで跡部が部長としての責務に追われてる間、リョーマはまったりとこの豪華な部室で時間を潰している。 時折レギュラー達に話し掛けられるようになって、大分打ち解けて来たのだが、 跡部のことでからかわれるのは慣れないし、恥かしくもある。
どうやってやり過ごそうかと考えていると、 「お前ら、いつまで残っている」と、跡部が大きくドアを開けて入って来た。
「越前に絡んでいるんじゃねえぞ。ほら、散った、散った」 「相変わらず、横暴やなあ」
文句を言いながらも、ここの所有者に逆らう者はおらず、 皆大人しく部室から出て行く。
残ったのは、リョーマだけだ。
「悪い。監督に呼び止められて遅くなった。 すぐに支度するから、待ってろ」
優しく頭を撫でられ、リョーマは「うん」と頷く。
「なんだ、この写真は?」 「あ、それは」
忍足が放り出していった写真を見付けて、跡部は不思議そうな顔をする。
「俺の写真じゃねえか。お前のか? 欲しいなら、先に言えよ。 こんな隠し撮りみたいなやつじゃなく、正面からポーズを決めたやつをやるから」 「いらないし……。それに、俺のじゃないから」 「じゃあ、誰のだ?」 「それは、」
忍足達にもした説明をもう一度口にすると、 跡部はふん、と鼻を鳴らした。
「写真を落としても気付かないような連中、ファンといえるものでもないだろ。 ただ皆と一緒に騒ぎたいだけじゃねえのか。くだらねえ」
バッサリと言い切る辺り、跡部らしい。 だけどリョーマの中には割り切れない何かがあって、素直に「そうだね」と言えない。
「で?お前は何を気にしているんだよ。 自分も写真を持っていたいって言うのなら、さっきも言ったけど写りの良いやつやるぜ」 「違うよ。ただ……」
俯くリョーマに、跡部は腕を組んだ。
「説明するのに、考える時間が必要か?」 「え、っと」 「だったら今からシャワー浴びて着替えて来るから、その間に気持ちを整理しておけ。いいな」 「何でそんなに命令口調なんすか」 「バーカ。当たり前だ。 そんな顔して、気にならないわけないだろうが。 言いたくなくても吐かせるからな。覚悟しとけ」
ロッカーに向かう跡部の背中を見て、溜息をつく。 出来れば黙っておこうかと思ったが、そうもいかないらしい。
けど自分の気持ちを伝える良い機会なのかもしれない。
「それで、何を思い悩んでいるんだって?」
いつもきちんと髪をセットして出て来るのに、今日は半乾きの状態だ。 時間を与えると言った割には、急いで来たらしい。 ネクタイも結んでおらず、シャツのボタンも空いている。 それだけ自分のことを気にしているのだと、理解した。
こっちも誤魔化している場合じゃない。
説明するのは難しいが、思い切ってリョーマは口を開いた。
「上手く言えないけど、跡部さんって……半端無くもてるよね?」 「それがどうした」
否定しないのかよと心の中で呟き、先ほどの写真に手を伸ばす。
「さっきの、軽い気持ちって言ってたけど、本気の部分だってあると思うよ。 いつか跡部さんの恋人になれたらって思っている人は、きっといっぱいいるんじゃないっすか」 「そうかもしれねえな。で?」 「で、って……。 だから、それだけの人達に好かれていているのに、なんで選んだのが俺なのかなって。 あんたの隣にいるのに相応しい人なんて、沢山いるのに」
途端に、写真を跡部に奪われる。 言葉が出るよりも先に、ぐしゃっと手で握りつぶされてしまう。
「ちょっと、何して」 「くだらねえこと言っているんじゃねえぞ」
跡部が今まで見たことない怖い顔をして、低い声を出す。
「誰が俺を好きかなんて、関係ねえ。 俺は、お前しか欲しくない。 理由なんて知るか。けど、他の奴には興味が無い。 触れたい、抱き締めたい、側にいたいと思うのは、お前だけだ。 それじゃ駄目なのか?」 「……」
真剣な目で言われ、リョーマは自分が跡部を傷つけるようなことを言ったんだと気付く。
他の人が相応しいんじゃないかと逆の立場で言われたら、きっと悲しい。
「ごめん。俺、今無神経なこと言った」 「ああ、かなりな」
言いながら、ぎゅっと抱き締められる。 痛いくらいだったけど、文句は言わない。 むしろそうされのが、リョーマにとっては嬉しいことだ。
「心配するな。誰に好かれていても、俺の相手はお前だけだ。 こう言えば、バカなお前の頭でもわかるよな?」 「バカは余計なんだけど」 「実際、バカじゃねえか。俺が誰かに靡くんじゃないかと心配したんだろ? ま、それはお互い様だけどな」 「え……?お互い様って」 「お前だって、青学のファンクラブの連中とかに騒がれてるじゃねえか。 リョーマ様ーって。試合毎に応援に来てるだろ。 前からかなりムカついていた」 「あれこそ、騒いでいるだけじゃん」 「そう思っているのはお前だけだろ。告って来たらどうするつもりだ?」 「断るよ。決まってるでしょ」 「だろ?」
こつん、と額を合わせられる。
「俺も同じだ、リョーマ。 だからなんの不安に思うことなんて無いからな」 「不安と思っていたんじゃないから」 「わかった、わかった」
よしよし、と背中を撫でられて、何かあやされているような気がしたが、 これも悪くないと大人しく身を預ける。
どうして自分なのか、理由なんてどうでも良いのかもしれない。
彼が好きだと言ってくれるのなら、その内に周囲なんて気にならなくなる。 誰が騒いでいても、動じない位に好きでいてくれるなら。
石鹸の香りよりもっと跡部を近くに感じたくて、自分から体を密着させると、 少し驚いた顔をした後、すぐに頬に手を添えてキスしてくれる。
それから二人は、今までの中で一番長い長いキスをした。
終わり
チフネ

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