チフネの日記
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| 2011年02月28日(月) |
彼のこととか 不二リョ 2011年 不二誕生日話 |
どんなに離れていても、彼のことはすぐに思い出せる。 大きな目や小さな手に柔らかな髪、少し高い体温も。
大丈夫。 今は違う場所に居ても、彼との思い出があれば生きていける。 見送った時にそう思った。 今だって、信じてる。
彼、越前リョーマと初めて会ったのは、青学のコートだった。 同じ位の背丈の一年生が居たけれど、彼だけが特別に見えた。 それは桃と打ち合った一年生の話を聞いていた所為かもしれない。 一人だけしっかり前を見据えたその態度に、あの子がそうじゃないかって見当つけていたけど、 今考えるとそれは一目惚れの兆候だったのかもしれない。
話したら笑われそうだから黙っているけど、 出会ってからずっと好きなままなんだと思うんだ。
それから彼は軽く籠にボールを入れたり、荒井と揉めてボロラケットでコートに立ったりと何かと注目を集めていたけど、ついにレギュラー入りを果たした。 つまりそれは同じくレギュラーになった僕との接点が増えるということを意味していて。 当たり前だけど彼が視界に入る時間も増えていく。
色んなことを知っていく度に、僕は彼に惹かれた。 物怖じしない態度や、どれだけピンチになっても絶対に諦めない所や、常に上を目指している考え方とか。 可愛い顔も好みだったけど、彼の内面の方がもっともっと好きになっていた。
それでも告白しようとは思っていなかった。 二つ年下の、しかも同性に「好きだよ」なんて言ったら、どうなるか。 ただの先輩・後輩というポジションさえも失う位なら、言わない方がマシだと考えていた。
だけどある日、偶然にも部室で彼と二人きりになった。
そして珍しくも、彼の方から僕に話し掛けて来たんだ。
「不二先輩って、俺のこと好きなんでしょ?」
彼の言葉に、僕は硬直してしまう。 前振りもなく、隕石を落とされた気分だ。 どうしてばれたんだろう。 どんな顔したらいいんだ。 いっそのこと逃げてしまおうか。 色んな思いが頭の中を駆け巡って行く。
部活前だというのにうっすらと汗を掻く僕に、 「違った?」と彼が顔を覗きこんで来る。
そこで否定すれば話は終わっていただろう。 だけど僕は正直に「違わないよ」と答えてしまう。
言ってからしまった、とまた汗を掻く。 折角冗談に出来るチャンスだったのに、何をやっているんだ。 心の中で頭を抱える。
しかし彼は僕の返事を聞いて、 「良かった」と何故か嬉しそうに笑った。
「良かったって、何が?」 「だって俺も不二先輩のことが好きだから。両想いで良かった、でしょ」 「え、両想い?」 「うん」 「君も僕のことが好き、なの?」 「うん」 「それって、両想いってことだよね」 「さっきからそう言ってるけど。話聞いてた?」
呆れた顔をする彼に、からかわれているわけではなさそうだと理解して、 僕は思わず目の前の小さな体を抱き締めた。
いきなりの行動に自分でもびっくりしたけど、 彼は抵抗することなく大人しく腕の中にいてくれた。
誰か他の部員が入って来たらどうしようかと気にしながらも、 時間ぎりぎりまで僕らはそのままの体勢でくっ付いていた。
それからお付き合いがスタートしたのだけど、 一緒に居られる時間はそう長くないことを彼の口から知らされた。
「え……。じゃあ、大会が終わったら向こうにまた行っちゃうの?」 「そうっす。最初から決まっていたことなんで」
夏が終わる前に、彼は再びアメリカに行ってしまう。 淡々とした言い方に、一瞬僕のことなんてすぐ忘れてしまうように感じた。 けれどそれは僕の一方的な思い込みで、彼は彼なりに色々考えていたのだ。
「遠距離になるけど、いいっすか?」
小声で尋ねた彼の目の中に、試合でも見られないような必死ともいえる色があって、 それだけでわかった。 自分が知っている以上に、彼に好かれているということ。
「いいよ」
頷くと、嬉しそうに笑う。
そんな姿をいつまでも見ていたいと願ったけれど、 大会が終わり、言葉通りに彼は飛行機に乗ってアメリカへと旅立っていった。
現在、僕らは離れ離れで暮らしている。 U−17の選抜で再会はしたけれど、終わってしまえばまた元の生活に戻ってしまった。
側に居られるようになるには、まだまだ時間が掛かるだろう。
もう少し大人になるまで、思い通りに会うことも出来ない恋だけど。
(大丈夫)
いつも彼のことを考えている。 忘れたことなんかない。忘れられるはずがない。
何万キロも離れた場所から送られて来たプレゼントの包みにそっと触れて、彼のことを思う。
今年は誕生日が無いから、プレゼントも無しだよ、なんて言っていたくせに。
こうしてわざわざ送って来てくれた、その気持ちが嬉しくて自然と笑みが零れる。
時差があるからすぐに電話することも出来ないけど、ちょうど良い時間になったらお礼をちゃんと言おう。
だけど春休みにそっちに行く予定にしていることは、まだ秘密で。
いつも驚かされてばかりだから、たまにはこちらがびっくりさせてもいいだろう。
その時の彼の表情を想像しながら、僕は幸せな気持ちに浸っていた。
終わり
チフネ

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