チフネの日記
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| 2010年05月27日(木) |
miracle 23 真田リョ |
今日のリョーマの放課後は、図書委員の雑務で潰されることが決定している。 怪我で部活に出られない分、カウンターに入るよう委員長からの命令を受けたからだ。 その代わり、試合前の練習は免除すると約束してくれた。
仕方無いけどやるしかないと、諦めに似た気持ちでカウンターに座っていると、 「おっチビー!」と大声を出して入って来た先輩に驚かされた。
「菊丸先輩……。何してるんすか。つーか声でかい」 「えへへ。おチビが部活に出られないって言うから、寂しくてさあ。 教室に様子を見に行ったら、ここだって教えてくれたんだよ」 「余計なことを」 「ん?何か言った?」 「別に」 「不二も返却するついでだからって、二人で来たんだ」 「え、不二先輩?」 「やあ、越前」
菊丸の後ろから不二がひょいっと顔を覗かせる。 隠れていたのか!?と、驚くリョーマに「これお願いね」と本を差し出す。
「傷の具合はどう?」 「はあ。特に問題は無いっす」 「そう、なら良かった」
にこっと不二に微笑まれて、リョーマは複雑そうに頷く。
この先輩は苦手だ。 あまり関わりたくないと思って、「先輩達、部活は?」と尋ねる。
「もたもたしてると部長にグラウンド20周!って言われるっすよ」 「あ、大丈夫。手塚は生徒会の用で遅れるって聞いてるから。 だからこうしておチビと話をしても平気だよん」
明るい声で言う菊丸に、「そうっすか」とリョーマは俯く。 何でこんな時に生徒会なんだよ、と内心で手塚に対して八つ当たりする。
「ところで、越前」 「な、何すか」 不意に顔を近付けて来た不二に、そっと体を引く。 「そんなに警戒しなくてもいいのに」 苦笑しつつ不二は「病院にはちゃんと行ってるの?」と言われる。
「えっと、行ってますけど」 「そう。昨日も行ったの?」
リョーマは目を見開いた。 まるで幸村がいる病院に行ったのかと、聞こえたからだ。
(いや、そんなはずがない)
知っているわけないと動揺を隠して「行ったっすよ」と答える。 「いつもと同じように、薬塗ってもらっただけっすよ」 「ふうん」 「不二ー。さっきから何かおチビちゃんに絡んでにゃーい?」
間に入って来た菊丸に、リョーマは(ナイス、先輩!)と喝采を送る。 不二と会話をし続けるのは危険と感じたからだ。 菊丸が割って入って来てくれて、助かった。
「別に絡んでなんてないよ。ちょっと確認しただけなのに」 「んー。おチビが心配なのはわかるけど、ちゃんと行ってるって言ってるんだから、 そっとしておこうよ。ねっ」
(菊丸先輩!俺の中で評価がかなり上がったよ!)
よくぞ言ってくれたと、心の中で賞賛を送る。
さすがクラスメイトというか。 不二にも言いたいことは言えるらしい。
「しょうがないな。英二がそこまで言うのなら」 諦めたように不二は肩を竦めた。 「じゃあ、そろそろ部活行こうか。あんまり遅いと、大石が心配するよ」 「うん。おチビの元気な姿も見れたことだし、行こ、行こ」 「先輩、もうちょっと静かに」 ごめんと言いながら普通に声を出す菊丸に溜息をつくと同時に、 「またね」と不二に挨拶される。
「あ、はい……」 意味ありげに微笑む不二に、なんだよと下を向く。 その間に二人は外へと出て行った。
(不二先輩って何もかもお見通しみたいな顔をしてるけど、実際どうなんだろ。 それにやっぱり幸村さんに似てるような……)
顔立ちは似ていないから親族ではないと思う。 何かああいうタイプに縁があるのかと、リョーマは首を傾げた。
その頃。 立海ではいい加減煮詰まった丸井が、真田に向かって問い詰めている最中だった。
部室に入って来た真田を見るなり、丸井は「一体、どうなってるんだ」と声を上げた。
「どう、とは。何のことだ」 「惚けるな。柳は問題ないと言ったが、俺は納得してねえぞ。 何で越前とお前が仲良くしているんだ。それも幸村に一言も無く、ちょっと酷いんじゃねーか?」 「いや、友人になるのに誰かの許可はいらないと」 「それがお前の本音かよ!」 「そう言ったのは幸村だ。俺達が仲良くするのは構わないと、言ってくれたんだ」 「……」
真田の言葉に、丸井はあからさまに不機嫌になる。
「本当かどうか、幸村に確かめるからな」 「構わん。それで気が済むのなら、そうすればいい」
丸井は面白く無さそうに頬を膨らませて、音を立ててドアを開け、部室を出て行く。 止めようかどうしようかオロオロしていたジャッカルが、慌てて後を追う。
(幸村は間違いなく俺と越前が友人になったことを認めてくれた。 越前とであったことで、色々な考え方を学ぶことが出来る。 あいつは俺にとって、大切な友人だ。 丸井に文句を言われる筋合いは無い)
そう自分に言い聞かせて、真田は自分のロッカーへと荷物を放り込んだ。
「おい、丸井。 いくらなんでも真田に言い掛かりをつけるのは、やり過ぎじゃないのか!?」
コートへを早歩きする丸井を、ジャッカルは走って追いかけた。 声を掛けると、ようやく足を止める。
「やり過ぎって行っても、俺は真田の口からどうなってんのか聞かねえと納得出来なかったんだよ。 柳は何か言い訳してたけど、納得出来るわけないだろい」 「けど、部室で揉めるのは、」 「あのなあ、ジャッカル。 こそこそと真田の悪口を吹聴するより、直接本人に確認するよりずーっとマシだと思わねえか?」
大きな声を出す丸井に、周囲からの視線が集まる。 慌ててジャッカルは口を閉じに掛かった。 「馬鹿っ、こんなところで堂々と批判するような真似する奴がいるかっ」 「はあ?本当のことだろい。 だったら真田に面と向かって文句の一つでも言ってみろっての」 「おい、丸井。まさか俺達のことを話しているんじゃねえだろうな」
一人の部員が、すっと近付いて来る。 少し前に真田を部長代理から外すことを持ち掛けてきた連中の一人だ。
彼の怒っている顔など気にもせず、丸井は両腕を頭の上で組んで空を見上げる。
「さあな。お前がそう聞こえたのなら、事実なんじゃねえの」 「てめえ。レギュラーだからって、調子こいてるんじゃねえよ。 自分で天才とか言って、馬鹿じゃねえのか?」 「俺が天才なのは本当のことだろい。 あ、そうか。自分がレギュラーになれないから、僻んでるのか? 悔しかったら、一度でいいから俺に勝ってみせろよ」 「このっ」 「止めろ!」
声を上げて、ジャッカルは二人の間に入った。 そうしないと今にもケンカが始まってしまいそうだったからだ。
「真田に見付かったらグラウンド100周じゃ済まないぞ。二人共、わかているのか」 「……」 「……」 チッ、と舌打ちして丸井に文句を言った部員は、背を向けて離れて行く。
大事にならなかったことにホッとして、ジャッカルは丸井に向き直った。
「挑発するのは止めろ。一体何を考えているんだ」 「俺は本当のこと言っただけだろ」 「おいっ」 「あー、面白くねえ」
ポケットからガムを取り出し、くちゃくちゃ噛みながら丸井はジャッカルから離れて行く。 さっきの部員とは逆の方向に。
一体、立海テニス部はどうしてしまったんだろうと、ジャッカルは溜息をつく。 全国に行けるのか、本気で心配になって来た。
チフネ

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