チフネの日記
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2010年02月22日(月) 手塚さんちの気まぐれな猫達 (不二リョ?)3 周助

この家のお母さんが僕を引き取ってくれたのは、
もっともっと小さい頃だった。
僕はその時、今のリョーマ君よりもっとちっちゃかった。
ご飯を食べてすくすくと育って行く内に、この家の全てが僕のテリトリーになった。

勿論、いけすかない国光の部屋も例外ではない。
ここに来た当初から、なんとなく僕は彼のことが気に入らなかった。
向こうは僕と遊ぶ気満々みたいで、何度か猫じゃらしを揺らしてきたり、餌で釣ろうとしていたが、
僕は絶対にその手には乗らなかった。
奴より、僕の方が上の地位にいる。
それをわからせたくて、いつもツンと澄ました態度を貫いていた。

最近ではようやく自分の立場がわかったのか、
国光も大人しいものだ。
ちょっかいを掛けて来ようともせず、僕の顔色を覗っている。
家族に一番可愛がられている僕のことを、ようやく敬う気になって来たのか。

よしよし、と気分良くしていたら、
ある日、国光が子猫を拾って来た。
普通なら、追い出してやる所なのだけれど、
その子猫はとっても可愛くて、一目見て気に入った。
世間知らずなところも守ってやりたくなる。

国光もたまには役に立つと、少しだけ見直して、
この子は僕が守ろうと決めた。
こんな可愛い子、外に出したら色んな猫達に狙われる。
大事に大事にしようと、僕はそう決めたんだ。




「周助、どうして外出たら駄目なの?」
出たいー、と騒ぐリョーマ君に、僕は「静かにね。お母さんが心配して様子を見に来るよ」と言った。
するとリョーマ君は口を閉じた。
お母さんはとっても僕達のことを可愛がってくれているいい人だ。
リョーマ君も素直に懐いている。
たまには違う味のご飯が食べたいなーと思うと、タイミング良く新しい缶詰をくれる、
そんな風に僕らの気持ちがわかってくれてるような、優しい人だ。

「外は危ないんだよ。
リョーマ君だって、ちょっと散歩に出たら道に迷って帰れなくなったんでしょ?
今度も迷って帰って来られなくなったりしたら、どうするの。
僕は嫌だよ。リョーマ君と離れたくない……」

悲しげな顔をすると、リョーマ君は「そんなつもりで言ったんじゃないけど」と、
気まずそうに俯く。
「じゃあ、もう外に行きたいなんて言わないよね!
今からここで僕と一緒に遊ぼう」
「そう言って、昨日も出られなかった気がするんだけど」
首を捻るリョーマ君のしっぽを軽く噛むと、何すんの、とパンチを繰り出してくる。
それを避けながら、また体にタッチする。
段々と、リョーマ君は僕とのじゃれ合いに夢中になって、
外に行くことを忘れてしまう。
そうしている内に、お母さんがおやつをくれる時間になって、
今度はお昼寝に突入すれば、こっちのもの。

よし、今日もリョーマ君と二人きりの時間が守れそうだ。
この調子で、リョーマ君を外に行かせないぞ、と僕は心に誓う。
だって外に行ったら、皆がリョーマ君に注目しちゃうよ。
リョーマ君の一番は、僕だけでいい。
だからこの平穏な日々を守ろうと、努力している。

本当にリョーマ君は可愛いなあ、と軽いパンチを交わしていると、
「リョーマ、周助と一緒にいたのか」と、国光が寄って来た。

なんの用だ。僕とリョーマ君の時間を邪魔しないでよと、威嚇するように低い声を出すと、
「周助は向こうで母さんと遊んで来い。
リョーマ、おいで」と言いやがった。

こいつ……僕とリョーマ君を引き離すつもりか!?

再び威嚇するが、国光は気付いていない。
嬉しそうな顔をして、片手に持っていた袋から何かを取り出す。

「何?何?」
リョーマ君は無邪気に国光へと寄って行く。
きっとお菓子か何かを貰えると期待しているのだろう。
それが奴の手なんだ!
危ない、と僕はリョーマ君の背中に乗って引き止めに掛かった。

「駄目だよ、リョーマ君。この人に近付いたら、何されるかわからないよ?」
「なんで?国光は周助が言うほど、悪い人じゃないよ?
だって俺をここの家に連れて来てくれたんだから。
もしあのまま国光が俺を放っておいたら、周助とも会えなかったかもしれない。
なのに国光のこと悪く言うの?」
「それは、……だって、こいつは僕とリョーマ君を引き離そうとするから」
「え?なんで?」

僕らが話をしている間に、国光は「ほら、リョーマ」と猫じゃらしを取り出す。
棒の先におもちゃのねずみがついたものだ。
僕は絶対に引っ掛からないけれど、好奇心旺盛なリョーマ君は目を輝かせる。

「ほら、ほら。どうだ、遊びたくなっただろ?」
ゆらゆらと国光がねずみを動かすたびに、リョーマ君のしっぽが揺れる。
「それ、俺のものー!」
「あ、リョーマ君!」
止める間もなく、リョーマ君はおもちゃのねずみに飛び付いた。

「よーしよし、リョーマ。楽しいか?」
リョーマ君が食いついて来たことに、国光は嬉しさを隠せず笑顔でねずみを動かしている。

この僕を無視するなんて、いい度胸だね……。

背後に回り込、僕は無防備な国光の背中に思い切り爪を立ててやった。

「ギャー!!」

悲鳴を上げた瞬間、国光は棒を手から落とした。
「今だっ!」
リョーマ君は鼠を咥えて、足で棒を固定させて思う存分に弄り始める。

楽しそうで良かった、と僕はそんなリョーマ君を見て笑顔になった。







「沢山動いたら、眠くなったー。
俺、今から昼寝するね」
「うん、いいよ。僕の背中に頭を乗せてごらん」
「こう?」
こてん、とリョーマ君がもたれてくる。
国光を撃退して、また二人きりになれた。
幸せな時間、再びというわけだ。

リョーマ君は僕の体にもたれたまま、すぐ寝てしまった。
寝顔も可愛い。
リョーマ君と一緒にいるだけで毎日が楽しくて、幸せでたまらない。
こんな日がずっと続けばいいなあと考えながら、
僕もそっと床に頭を置いて目を閉じた。
次のご飯まで、リョーマ君と一緒にお昼寝を堪能しよう。





静かになった部屋に、手塚はそっと足を踏み入れた。

先程まで元気良く遊んでいた猫達は、ベッドの上でお昼寝中らしい。

(折角買ったのにな……。リョーマが眠っているんじゃしょうがない。
しかし周助はなんだか、よく邪魔してくるような気がするけど、どういうつもりだ?
今までは俺の側には決して寄ろうとしなかったくせに、
リョーマと遊ぶと邪魔してくる。
ひょっとして、ヤキモチか?)

だったらこの先は周助とも遊んでやらなくてはいけない。
上手くいけば、二匹同時に遊ぶ日も近い。

勘違いした手塚は、その場面を想像して楽しげに微笑む。

今度は同じおもちゃを二つ買ってこようと、
眠る猫達の顔を幸せそうに眺めた。



終わり


チフネ