チフネの日記
DiaryINDEXpastwill


2010年02月21日(日) 手塚さんちの気まぐれな猫達 (不二リョ?) 2 リョーマ

外に出て、日当たりの良いところで寝ていたら、
突然地面が疎き出した。
びっくりして、その場に爪を立ててしがみ付いているのが精一杯だった。
やっと収まってから、慌てて別の場所へと避難する。
やれやれと顔を上げた時には、もう知らないところだった。

なんでこんな所にいるんだろう?
そう思ってとぼとぼと歩いている内に、どんどん間違った方に来てしまったらしい。
一晩、外で眠って目が覚めてから、空腹に気付いた。
食べ物はどっかにないか……。
ふらふらと探し回っていたら、食べられそうなものを発見した。
だけど手が届かない。

なんとかして獲物を取ろうとした俺に、背の高い人間が近付いて来た。
俺が一緒に暮らしていた人達よりもずっと大きい。
誰だろ?と顔を上げた時、その人が食べ物を持っているのが見えた。
それ、ちょうだい!と、俺は声を上げた。
けれど伝わらなくて、背の高い人間は俺を抱え上げて、狭いところに閉じ込めやがった。

さすがに抗議しようとバタバタ手足を動かしていたけど、
無視される。
お腹空いているんだって!なんかくれ、と声を上げても無視。
どうしてくれようと暴れ続けている内にすっかり疲れて、
俺はぐったりと体から力を抜いた。

このまま空腹のままでどうなるんだろ。
そう思っていたら、不意に周囲が開けた。

「あらあら。可愛い猫さんね」
今度は優しそうな女の人が俺の前に現れた。
「そうでしょう。俺もこんな可愛い猫は見たことありません」
「まあ、国光ったら。周助が聞いたら、怒るわよ」
「……そうですね。
ほら、リョーマ、ミルクだぞ。お腹減っているんだろ」
「もう名前をつけたの?」
「ええ。いい名前だと思って」
「そうねえ。いいんじゃない」

二人が喋っている間に、俺は出されたミルクを飲み始めた。
やれやれ。やっと、食べ物にありつけた。
助かったー、と夢中で飲み干していく。

「リョーマ、そんなに慌てなくても誰も取ったりしない。大丈夫だ」
背の高い人が、俺の背中を撫でながら言う。
リョーマって、俺のことだろうか。
なんでもいいや、とまたミルクをぺちゃぺちゃと舐める。

全部平らげたところで、満足して寝転がると、
「リョーマ、眠いのか?」と大きな手に抱かかえられる。
「ここにいると周助に怒られるかもしれないからな。
俺の部屋に行こう」
周助って?
そう思ったが、眠くて俺は目を閉じていた。
昨日から、すっかり疲れている。

下ろされた先はふかふかと柔らかくて、
俺はそのまま熟睡していた。



再び目を覚ました時には、辺りは暗くなっていた。

何かが鼻に触れている。
そう思って目を開けると、知らない誰かが俺の顔を覗いていた。

「誰……?」
真っ白い綺麗な猫。
俺の母さんより綺麗、と見惚れてしまう。
「僕は周助。初めまして、よろしくね」
丁寧な挨拶に、俺も「よろしく」と慌てて飛び起きて答える。

綺麗だけど、同じ男かと、少しがっかりする。
もし女の子だったら、絶対好きになっていただろう。
それ位、周助は綺麗な猫だった。

「君はどこから来たの?」
「えーっと、あっち」
遠くを指差す。
しかしここがどこかもわからないから、あっちも何も無い。
困ったように俯く俺に、周助は「そう」と真面目に頷く。
「今日からここで暮らすことになったのかな?」
「わかんない」
あの背の高い人がここに連れて来てくれたということは、俺を引き取ってくれようとしているのかもしれない。
けど。

「周助はこの家に住んでいるの?」
「そうだよ」
「だったら、俺がここに居たら駄目だよね。
余所に行くよ」
縄張りがあること位、俺も知っている。
周助の場所なんだから、邪魔しちゃいけない。
そう思って、下に降りようとしたら、くいっと首を持ち上げられる。
「え、え?」
周助に首元を咥えられて、また元に戻される。
驚く俺に、周助は「どこに行くつもり?」と言った。

「どこから来たかわからないんでしょ?
だったらここに居ればいよ」
「でも、ここは周助の家なんじゃ……」
「うん、だから僕が許可する。
君みたいな可愛い子は大歓迎だよ」
そう言って擦り寄ってくる周助に、驚きながら口を開く。

「可愛いって、俺、男なんだけど」
「そう。僕もだよ」
「えーっと、だから、可愛いと言われても嬉しくないよ」
「でも可愛い。すっごく可愛い。
だから君ともっと仲良くなりたいなーって」
「いや、それは女の子に言うことなんじゃないの!?」
「別に問題ないね」
「ええええ!?」

圧し掛かってくる周助に、声を上げて抵抗する。
こんな展開ってありなの?
出会ったばかりで、しかも同じ男同士なのに。
冗談だよね?と思っている間に、周助に体を撫で回されてる。
くすぐったいその感触に、俺は堪え切れず声を上げた。






「リョーマ、どうした?何かあったのか」



二階から騒がしい声が聞こえて、手塚は急いで自室へと戻って来た。
ドアを開けると、自分のベッドの上で猫二匹が取っ組み合いを始めている。
周助がリョーマを苛めているのかと勘違いして、
急いで駆け寄る。

「周助!駄目じゃないか。リョーマはまだ小さいんだぞ。
この部屋以外なら好きにしてもいいが、ここはリョーマの縄張りだ。
外に行っていろ」

そう言って、リョーマを助け出そうと周助の体を掴もうとした瞬間、
バリッ、と盛大に手を引っ掛かれてしまう。

「ギャー!!」

容赦ない爪攻撃に、手塚は悲鳴を上げる。

そんな様子を見て、周助はふん、と鼻を鳴らした。
「僕とこの子の間に入るからだよ。
お前こそ、外に出てろ」
「周助……ここ、あの人の部屋じゃないの?」
「関係ないね。この家は全部僕のテリトリーなんだから」
「……すごいっすね」

感心したように呟くリョーマに、周助は「これからは君のものでもあるんだよ」とにっこり笑った。


チフネ