チフネの日記
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| 2010年01月20日(水) |
今はどうしようもない僕だけど 千リョ(本妻リョマと浮気キヨ) |
リョーマを迎えに青学までやって来たが、まだ部活が終わるには少し時間がある。 (よし、女テニの練習風景を見て来よう) 鼻の下を伸ばしながら、千石は足取り軽く女子テニス部が使っているコートへと向かった。
昔から可愛い女の子を眺めるのが好きだ。千石の癖みたいなものだ。 その辺を歩いていても、つい擦れ違う女の子を目で追ってしまう。 リョーマはその時呆れたように先を歩くか、時々脛を蹴飛ばされるか、 どちらかの反応を見せる。 大抵は放っておかれる方が多い。 そしてスタスタと早歩きで行ってしまうリョーマを慌てて追い掛けて、千石が謝り倒す。 それが二人のいつものやり取りだ。
(俺の女好きは病気みたいなものだよなあ)
今まで付き合ったの子達とは、それが原因でケンカして別れてしまった。 勿論、長続きもしない。 一ヶ月もったら、良い方だ。
余所見を全く許さない子もいたし、浮気がバレて殴られて振られたこともある。 いずれも原因は千石にある。
「じゃあ、私が浮気しても許してくれるの?平気だって言えるの?」 気性の激しい女の子に、そう詰め寄られた時、 千石は冷静な声でl答えた。 「そんなわけないじゃん。浮気されたらマジで怒るよ」 「だったら今の私の気持ちもわかるでしょ!なのに、なんでそんなことするの!?」 「そりゃしょうがないよ」 千石は頭を掻いた。 「俺の目は自然と可愛い女の子を追っちゃうんだよ。 だって可愛い女の子が大好きなんだから。 でも最後には君の元に戻っていくから、安心して」 「……」
その直後、思い切り殴られた。 せめて平手打ちにして欲しかった、と千石は痛む頬を摩った。 安心できるかっ、と捨て台詞と共にふられた。
今考えると、もう少し言い方を考えてやれば良かったと反省もした。 だけど、自分は正直な気持ちを話したに過ぎない。 『わかった。これからは君一筋になるよ』 なんて、嘘を並べる方が最低だ。 大体そんなこと、無理に決まっている。
その一件を友人に話したら、「最低だなあ」と呆れられた。 確かにそうかもしれない。 だけど我慢して生きるなんてそんなのつまらない。 可愛い女の子を見て、何が悪い。 寄って来る女の子と遊んだって、いいじゃないか。 本命の子はちゃんと大切にしているんだから!
でもきっと、こんな勝手な考え方について来てくれる子はいないだろう。 千石だってそれは気付いていた。 だったらそれはそれでいいや、と割り切って色々な子と短い付き合い続けていた。
しかしようやくここに来て、わかってくれそうな子と巡り合えた。 それがリョーマだ。
勿論、リョーマだって千石の浮気を黙って見過ごすような性格はしていない。 時には拳を振るうし、謝罪の為に飯を奢れ、という流れはしょっちゅうある。 だけど「別れる」という言葉は、一度も口にしたことはない。
我慢強い、というわけではないはずだ。 不機嫌になる頻度は、付き合っていた女の子達より多い。 だけど、千石の「好き」という気持ちを絶対的に信用してくれていて、 浮気したからといって気持ちを疑われることはない。
「だって、清純の一番好きなのって、俺でしょ」 自信満々に言ってのけるリョーマに、いつも敵わないなと思わされる。
今までも誰にもそんな風に言ってもらえたことは無かった。 皆、他の女の子に目を行く千石を責めて、どっちが好きなのかと怒ったり、悲しんだりするばかりだ。 一番好きなのは付き合っている子だけなんだと、わかってくれたのはリョーマ一人だ。 まだ12歳なのにとんでもない大物かもと、密かに思っている。
けど、そんなリョーマと付き合ってもやっぱり可愛い女の子に目が行くのは止められない。 時々、浮気もして殴られて、ぼこぼこにされて、 それでも二人は上手くいっている。
(というわけで、女テニへ行くか。今日は見るだけだし、いいよね)
足取り軽く、千石は女子テニス部の専用コートへと近付いた。 さすがに堂々と覗くのは躊躇われて、樹の陰からそっと様子を覗う。 美しい足を晒して部活動に励む部員達を見て、頬が緩んでいく。
「やっぱりいいよな、青学女子。いつ見てもレベル高いなあ」 「なんのレベルが高いって?」 「そりゃ可愛い子が他の学校より多い……って、リョーマ君!?」
耳に届いた低い声に振り返ると、じっとこちらを睨み付けているリョーマと目が合った。
「なんで!?まだ部活の時間だよね?」 終わる直前には男テニのほうへ移動しようと思っていたのに。 するとリョーマは「今日は早く終わったんだよ」と表情を崩さないままで言った。 「罰ゲームに使った乾先輩の新作の汁にほとんどの人がやられちゃって、 最後までやる状態じゃなくなったんだよ」 「へ、へえー、そうなんだ」
乾君め。余計なことをしてくれた……と、心の中で恨み言を言う。 時間通りに終了すれば、見付かることも無かったのに。 自分の行動を棚に上げて、千石はそんなことを考えた。
「でも、俺がここにいるってよくわかったねー。これも愛の力ってやつ?」 なんとかリョーマの機嫌を直そうと、笑顔で冗談を言ってみても、 ニコリともしない。 「片付けをしている時に、ちょうど清純が歩いて行く所を見たんだよ。 真っ直ぐこっちに来ていたよね」 「……」
最初からばれていたようだ。 千石は肩を落とした。
「それで、リョーマ君は怒っているんだよね?」 恐る恐る尋ねてみると、「怒っているよ」ときっぱりと言われる。
「なんで変質者に間違われそうな行動を取るんだよ。 しかも清純と一緒にいる所を見られたら俺まで同類だと思われそうなんだけど。 そうなったら、どうしてくれんの?」 「…えっと」 リョーマの反論に、千石は数秒固まってしまった。
怒ってはいるが、理由がおかしい。 普通は迎えに来たのに、他の女子を見ているなんて何しているんだと、 責めるのではないだろうか。
やっぱり、リョーマはどこかずれている。
「ぷっ、……アハハッ」 堪え切れず笑い出す千石に、「何笑っているんだよ?」と、リョーマは視線を険しくする。 「本当に怒っているんだけど。 あーあ、もう清純なんかに鎌っていないで、一人で帰ろう。 こんな所に立っていたら、本当に覗きに来たと勘違いされるから!」
リョーマはくるっと背中を向けて、早足で歩き始めた。 千石もなんとか笑うのを止めて、その後を追う。
「待ってよ、リョーマ君!」 「好きなだけ、見学していれば?なんで俺の後を付いてくるんだよ」 「なんでって、リョーマ君を迎えに来たからに決まっているでしょー」 「ふーん。あっ、そ」 「本当だって!ただ空いた時間を有効に使おうと思っただけで、浮気とかじゃないよ! そりゃ、すぐにリョーマ君の所に向かわなかったのは悪かったって思っているってばー」
ぺこぺこ頭を下げる千石に、リョーマはそっぽを向いたまま溜息をつく。
「じゃあ、これからは青学で不審な行動しなって約束出来る?」 「うん、うん。約束します」 「じゃあ、今回は許す」
そう言ってこちらを向くリョーマのその顔は、 余裕の笑みを浮かべていて、なんだかほっとさせられてしまう。 やっぱり帰るべき所はここなんだと、思わされる。
リョーマの懐の深さに、かなり依存している自覚はある。 許されて、甘やかされて、もっと好きになって行く。 そうしてずるずると嵌っていって、最後には可愛い女の子を見てもなんとも思わなくなるかもしれない。
まだ先のことかもしれないけど。
「じゃ、今から清純の家に行こうか」 そう言って袖を引っ張るリョーマに、千石は「うん」と素直に頷いた。 いつだってそうやって、正しい方向へと導いてくれる。
君に出会えたことが、俺にとって最大のラッキーじゃないんだろうか。
「ところで青学に来たら、もう二度とさっきみたいな顔すんなよ」 「えっ、どんな顔?」 「職務質問されて、そのままパトカーに乗せられそうな顔」 「……」
そんなに酷い顔しているの?とは聞けない。 リョーマなら真顔で「うん」と頷くのがわかっているからだ。
終わり
チフネ

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