チフネの日記
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| 2009年12月27日(日) |
2009年 リョーマ誕生日小ネタ 跡リョ |
並べられた料理はどれも美味しそうなものだ。 「クリスマスイヴだけど、お前が和食好きだっていうからわざわざ用意させたんだぜ。 けど、バースディケーキもちゃんと用意してあるから、安心しろ」 だが得意げな顔をして腕を組んでいる跡部を前にすると、食欲も無くなっていく。 何故、こんなことになっているのか。 リョーマは溜息をついた。
それもこれも跡部の所為だ。 朝一に、そうまだベッドにくるまっている時間にいきなりやって来て、 「起きろ」と肩を揺さぶられた。 跡部を家に上げるなと、母に前から訴えていたのに聞いてくれない。 知らない間に跡部はすっかり母を懐柔してしまった。 騙されていると抗議しても、「跡部君っていい子じゃないの」と言われる始末。 今日もそうやって母に頼んで部屋に入り込んだのに違いない。
何が起こっているのかわからず、ぼんやりとしていたら、 「着替えろ」とパジャマに手を掛けようとした所で一気に覚醒した。 「何してんの!?」 「お前がいつまでも起きないからだろうが」 「だからって、何。触んな!」 尚も触れようと来る手を払いのけるが、跡部は全く動じない。 「今から外に出るぞ」 「なんで!?意味わからないんだけど。さも当然のように誘っているとか、頭大丈夫?」 「お前のご両親からの許可は貰っている。夜までには送り届けると言ったら、 どうぞお願いしますと頭を下げたぞ」 「……」 これでは逃れられない。 渋々リョーマは「着替えるから」と跡部を外へと出し、適当な服を身に着けた。 ドアから外へ出ると、待機していた跡部が「行くぞ」と偉そうに言う。 「顔くらい洗わせろよ……」 「まあ、仕方ねえな」 洗面所まで背後霊のようについてくる跡部に、真剣に殴りたいと思った。
そして朝食すら取らせてもらえず、跡部に引っ張られて家の外へと連れ出される。 待機した車に乗せられ、跡部が所有しているというマンションの一室に到着した。 ここに来たのは初めてだ。 アメリカと日本を行き来する際に必要だからと、マンションを買ったと聞いた時は本気で呆れた。 中は跡部の部屋らしく無駄に豪華なものが置かれている。使い込まれてないから、新品ばかりだ。 お金持ちってわからない……とリョーマが肩を落としていると、 待機していた使用人がテーブルの上に数々の料理を置き始める。 全ての準備が終わると外へと出てしまう。 跡部と二人きり、という状況にリョーマは頭を抱えたくなった。
「朝ご飯を食べていないのなら、腹減っているんだろ。遠慮なく食べるといい」 「食べられなかったのはあんたの所為だけどね」 「細かいことは気にするな」 ハハハッと笑う跡部に、何も返す言葉も無い。
それにしてもまたアメリカにやって来たのかと、リョーマは肩を落とした。 ここしばらく姿を見せなかったから諦めたのかと思ったが、違うということにがっかりする。
跡部の強引な行動は今に始まったことではない。 日本にいる時からずっと、こんな風に引っ張り回されていた。 何が気に入ったのかは知らないが、関東大会以降から言い寄られている。 無視していたら、余計エスカレートした。 どうして、とリョーマは悩み、思い切って跡部のチームメイトに何か知らないかと事情を尋ねたこともある。 曰く、跡部は今まで誰かに振られることは無かったらしい。 それで余計に執着しているんじゃないかと言われた。 生意気そうな言動も跡部の好みに当て嵌まるとも。
だったら一度でも付き合ってみれば引くんじゃないかと、リョーマは考えた。 目的を達成したことで満足して跡部から別れてくれるかもしれない。 しかし、「跡部って、滅茶苦茶手が早いから気を付けろよ」と忠告され、 その案も却下することにした。 手を出される、なんて恐ろしくて付き合うことなんてとても出来そうにない。 やっぱり放置が一番と、リョーマは「無理、付き合えない」で通すことにした。 「いつになったら、お前は俺を好きになるんだ」 「ならないから」 「ふん。そう言いながらも、俺のことを気にしているくせに」 「どっからそんな発想が出て来るんすか……?」 そんなやり取りも、リョーマが全国大会後に急遽アメリカへ戻ることになって終止符が打たれた。 と、思っていたのに。
驚くことに跡部はアメリカまで追い掛けて来た。 誰にも居場所を教えていなかったのに、何故か住んでいる所も知っていた。 行動力のあるストーカーだ。 跡部家が本気になればわからないことは無いらしい。 そんなことに労力を使うなと言っても、跡部が聞くはずもない。 「俺様から逃げられると思うなよ。お前が俺を好きだと認めない限り、諦めないからな」 宣言通り、跡部はちょくちょくリョーマの元を訪れるようになった。 つまり、日本にいる時と全く変わらないということだ。
(全く、なんだって今日みたいな日にも来るんだよ……) しかもとうとうマンションに連れ込まれた。 ここを購入したと聞かされても「ふーん」で通したのは、密室で二人きりになることを避けていたからだ。 勢い余って手を出されることだって考えられる。警戒するに越したことはない。 しかもいつか一緒に住めたらいいな、などと以前に跡部が呟いていたことも覚えている。 夜までに帰してくれるって本当なんだろうか。 このままここに監禁されるのかもしれない。 疑いつつ顔を上げると、「どうした」と跡部が笑顔を向けてくる。
「いや、何でここに連れて来る必要があるのかと思って」 「そんなの決まっているだろ」 わからないのかと、軽く首を振る。 何故か上から目線で言われているような気がして、イラッとさせられる。 むっとしながらリョーマは跡部の回答を待った。 すると「しょうがねえな」と舌打ちしながら、返される。 「お前の誕生日を誰にも邪魔されず祝ってやりてえからだ。わかったか」 「……そんな理由?」 「悪いかよ。言っておくけど、もし他の誰かと約束があっても行かせたりしねえからな。 そんなことしても邪魔してやるから無駄だぞ」 「……」 つまりこの先もリョーマが誰かと良い感じになったら引き裂くと宣言しているようだ。 どうしようもないストーカーだ。 「別に、あんたが考えているような約束している相手はいないよ」 「そりゃ良かった。じゃあ、俺様と一緒に過ごすんだな」 「ヤダって言っても逃がすつもりもないくせに」
それよりも、とリョーマは浮かんだ疑問を口にした。 「あんたこそ、こんな所にいていいの?」 「いいって、何がだ」 「パーティーとかいっぱい招待されているんじゃないの。付き合いとか、あるんでしょ」 家の都合や仕事の関係で顔を出さなければならないこともあるはずだ。 なのにアメリカまで来て、しかもこんな所にいる場合か。 リョーマの問いに、跡部はまた豪快に笑う。
「そんなこと心配するな。全て病欠で済ませてある」 「心配しているわけじゃないけど……。やっぱり呼ばれているんじゃん」 「仕方無いだろ。誰といるよりもお前の誕生日を祝う方が大切だからな。 他の誘いなんて、知ったことか」 「……」 「好きな奴と一緒にいること以外に需要なことってあるわけないだろう」 きっぱりと言い切る跡部に、リョーマは言葉を失った。
気まぐれとか、手に入らないからムキになっているとか。 そう思って、今まで跡部の気持ちを本気に取ったことは無かった。 だけど今の告白に、そうじゃないと気付かされた。 言動がずれているだけで、真剣だったんじゃないかって。 見ない振り、聞こえない振りしていたけど、真正面から向き合えば、 彼の言っていることが本気だともっと早くにわかったはずだ。
(跡部さんが、俺のこと本気で好き……)
今更ながら、心に気持ちが響いた気がした。
「どうした。食欲無いのかよ?」 「えっと、違うよ」 心配そうに顔を覗きこんでくる跡部に、思わずリョーマは飛び退いた。 勘違いストーカーだと決め付けて軽く交わして来たのに、 今になって上手く出来なくなる。 海をを超えてまで誕生日の祝いに来てくれた。 それだけでも健気だとさえ思えてしまうから。
(ちょっと見直した、かも……)
これからは自分もきちんと対応して行くべきかと考えながら、 誤魔化すようにして料理に目を移す。 「あんまり美味しそうだから、どれを食べようか迷っているだけっすよ。 じゃあ、いただきます」 「おう」
嬉しそうにニコニコ笑っている跡部を見ないようにしながら、 箸を動かしていく。
これからの展開は自分でもどうなるかわからない。 ちょっと考え直しただけで、気持ちを受け入れるかどうかは別の話だ。 そう簡単に、変わったりはしない……はず。
「慌てずゆっくり食べていいからな。 なんだったら、俺の分も食っていいぞ」 「うん……」
あんまり優しくしないで欲しいと、リョーマは眉を寄せた。 今まではハイハイそうですかと流していたのに、 急に意識してしまう。 言動に隠されている好きという気持ちに、恥ずかしくなるのだから。
誕生日に跡部がくれたのは美味しい料理とケーキとプレゼントと、 そしてこの困ったようなくすぐったい気持ちだった。
終わり
チフネ

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