チフネの日記
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| 2009年12月25日(金) |
2009年 リョーマ誕生日小ネタ 塚リョ |
誕生日のプレゼントは何が欲しいかと母さんに聞かれて、 俺は「日本行きのチケット」と即答した。 高価なプレゼントより、部長に会いたい。 俺の望みはそれだけだった。
母さんは目を丸くして、「困ったわね」と言った。 「リョーマは私達と誕生日を過ごしてくれないのかしら?」 「それは、悪いと思うけど……」 親父はともかく、母さんは俺の誕生日を忘れたことはない。 そんな母さんを蔑ろにするのは、流石に申し訳無い。 周りがクリスマス一色の中でも、母さんはいつでも俺のことを考えてくれたから。
「えっと、じゃあ、別のにする」 誕生日は部長と一緒に居たいと思うけど、仕方無い。 ついこの間までU−17の合宿に参加して、またこっちに戻ったばかりだ。 そうそう頻繁に会えること位、覚悟していたじゃないか。 俯く俺に、母さんは溜息をつく。 「そんなに日本に行きたいの?」 「えっと、まあ」 「嘘がつけない子ね。あっちに行ったら一人でホテルに泊まるつもり?」 「それは、多分」 「また手塚さん家に泊まるつもりなら、反対しますからね。 そうそう迷惑を掛けるわけにはいかないのよ」 「わかっている……」
そこまで考えていなかった。 ただ部長に会いたい、それだけだ。 やっぱり単身で日本に行くなんて無理なのかな。
考え込んでいると、「リョーマ」と名前を呼ばれる。 「チケット代は私が出してあげるわ」 「え?」 「向こうでの宿泊費は南次郎にお願いしなさい。日本行きの許可もね。 その代わり手塚さんの家に迷惑を掛けたりしないと約束すること。 何度もお世話になるわけにはいかないでしょ」 「じゃあ……行っていいの?」 チケットを取ってくれるという言葉に驚く。 すると母さんは、 「仕方無いでしょ。 あなたが日本に行くのが一番のプレゼントだとわかってしまったのだから、許すしかないじゃない」 苦笑交じりに言った。
「……ありがとう、母さん」 感動する俺に、「でも、南次郎から許可貰えなかったら駄目ですからね」と笑った。
実は親父の説得は簡単だったりする。 秘蔵のコレクションの数々。 母さんに黙っていたのは、こんな時の切り札に使おうと思っていたからだ。 おかげですんなりと日本行きの承諾と、滞在費を巻き上げることに無事成功した。
12月24日、午後。 俺は日本に降り立った。 勿論、部長は俺の帰国を喜んでくれた。 「早く会いたい」とメールに乗せた素直な言葉に、俺も頷いていたことは内緒だ。 空港まで迎えに来てくれた部長と、ますホテルにチェックインした。 フライトでの疲れを取る為に荷物を置いて、ベッドに大の字になる。 「よく、ホテルの予約が取れたな」 「え?」 「いや、年末に部屋を取るのは困難ではないかと考えていただけだ」 部長はうろうろと落ち着かない様子で部屋のあちこちを見ている。 何が珍しいんだろ? それよりも、と俺は声を上げた。 「ねえ。こっちに来て座ったら? それとも何か気に入らないものでもあるの?」 「いや、十分だ。それにしてもこの部屋はお前自身が取ったのか?」 「ううん。親父のコネを使って取ってもらった」 「なる程……」 納得したように部長が頷く。 許可を貰ったついでにどこかいい宿泊先をお願いと、親父に頼んでおいた。 部長も泊まれるように、ジュニアスィートを指定した。 ほどなくして親父が「ここに行け」と地図を寄越してきた。 おかしな所を紹介されたかと思ったが、意外にもまともなホテルだ。 なんでもここのオーナーが現役時代からの親父のファンらしい。 ただのエロ親父だと知ったらどんな反応するんだろ、とちらっと考える。
「しかし、俺まで宿泊してもいいのか?」 「何言ってんの。その為に取ったんだから。 それとも部長は今夜、別々に寝るつもりだった?」 「いや、そういうわけじゃない」 きっぱりと否定して、部長は俺が寝転んでいるすぐ横に腰掛けた。 「お前の誕生日を一緒に過ごすことが出来て、とても嬉しい。 しかし本当なら俺の方から訪ねて行くべき所だったのだが、 実現出来る力がない自分を不甲斐無く思う」 「は?」 「しかも部屋まで用意してもらって、これではどちらの誕生日なのかわからない。 何から何までお前に頼ってばかりで、すまない…」 真面目に言う部長に、俺はぽかんと口を開けた。
つまり、何? 俺の誕生日だから、部長はアメリカまで祝いに来るのが筋とか考えている? 突拍子も無い話に、首を傾げてしまう。 「別にそんなの謝らなくてもいいよ。ほいほい行き来出来る距離じゃないんだから。 俺だって母さんにプレゼントとして航空券を貰えなかったら来れなかったよ。 あんたが気に病むことじゃない」 にこっと笑ってみせると、少し納得したらしい。 「そうか」と頷く。
「しかし次は俺の方から訪ねて行く。必ずな」 「…はあ、待ってます」 必死になってお金を貯めるんだろうなと、部長の表情を見て察する。 これでまた俺が日本に来たらどんな顔するんだろう。 ちょっとやってみたい気もする。
「それより夕飯はどうする?外に出て行くのも面倒だから、ルームサービスにしようか: 外に行きたくないのは、部長と二人だけの時間を邪魔されたくないからだ。 ここで思い切りいちゃいちゃしていればいい。 そう思っての提案だったのだが、部長は「いや、用意してある」と却下した。 「用意って?」 「家で母がお前の為に料理を作ってくれている。 お前の好きな和食だ。勿論、誕生日ケーキも用意した。ゆっくりと家で寛ぐといい」 「ちょっと、何それ!?」 俺は思わず体を起こした。
「折角二人きりなのに、部長の家に行くんすか?」 「ああ」 それがどうかしたか?という表情をする部長に、俺は切れた。 「あのさ、部長のお母さんに料理を用意してもらっているってどういうこと? 今回は世話にならないようにって言われているのに。 なんでそんなこと、勝手に決めてんの!?」
これじゃ母さんの言いつけを守ったことにならない。 どうしようと顔を顰める俺に、「どうしてそんなことを言うんだ」と部長に両肩を掴まれる。 「これは母からの申し出だぞ。 こちらに帰って来るなら、是非和食をお腹いっぱいに食べてもらいたいと。 そんな風に考えてはいけないのか?」 「いや、そうじゃなくて迷惑が掛かるから」 「越前」 俺の目を真っ直ぐに見据えて、部長は言った。 「迷惑なわけないだろう。 早も家族もお前のことを歓迎している。 だからそんな風に考えるな。それとも母の料理を無駄にするつもりか? だがお前なら全て平らげてくれると信じている」 どうだ、と問われて、俺は唇を尖らせた。
「そういう言い方はずるいよ。断れるわけないじゃん。 部長のお母さんの料理、出来ることならまた食べたいって思っているのに……。 わかった、お邪魔させてもらう」 「そか。良かった」 ほっとしたように笑う部長の肩に、俺はそっと寄りかかった。 「あーあ。でも折角部屋を取ったのに、無駄になっちゃったね」 部長の家に行くのが嫌なんじゃない。 むしろあの美味しい料理を食べれるのは嬉しい。 しかしどうしても階下にいる家族の存在が気になって、こそこそと動くしか出来ない。 ここなら遠慮なく、なんて考えていたのは俺だけだったんだろうか。 恥ずかしくなる。
すると、「無駄にするわけないだろう」と、いきなり部長に押し倒される。 「え?部長?」 「言っておくが夕飯を食べたらまたここに戻って来るぞ。 始めからそのつもりだった。久し振りに二人きりになれるのに、そのチャンスを逃すわけがないだろう」 「そ、そうなんだ」 アハハ、と目を泳がす。 改めて言われると、困ってしまう。 考えていたことが見透かされていたのかと、気まずい。 それを知ってか知らずか「まだ時間があるな」と部長は軽くキスを仕掛けて来る。
「準備が出来たら携帯に連絡が入ることになっている。 それまでこの時間を有効に使うことにしないか?」 「有効って……」 「駄目か?」
それには答えず、俺は部長の背に手を回した。 部長は目を見開いた後、さっきより深く唇を重ねて来た。 応えるように、俺は口を軽く開ける。
日本に居られる時間もそんなに長いわけじゃない。 だったら部長の言う通り「有効に」過ごすべきだ。 蕩けるようなキスをしていながら、俺は体から力を抜いて甘い手の動きに身を委ねた。
終わり
チフネ

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