チフネの日記
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2009年02月01日(日) 病 跡リョ ※跡部の頭暴走中


越前は可愛い。
もう何度可愛いと思っただろう。
見る度に輝きを増しているのは気のせいじゃない。
出会った時より5割増しで可愛くなっているよな、としみじみ思う。
どこがどう、という訳じゃない。
目も鼻も口も耳も髪も手も足も。
パーツ一つ一つ全部が可愛い。
こんなに魅力的だと他の奴が放っておかないだろうなと、会えない間ずっと心配してしまう。
越前の可愛さに気付くのは俺だけでいい。
俺以外、世界中全ての人間が越前のことブサイクに見える魔法って無いのか。
いくらでも払うから、教えて欲しい。 
まあ、他の奴が越前に言い寄った所で相手にされないことはわかっている。
あの冷たい目線と声で「はあ?何言ってんの」で大抵は退散していく。
ざまあみろだ。
俺が落とせないんだから、そりゃ他の奴なんかに靡く訳ないよな!
……本当に、いつになったら落ちるんだ、こいつは。
こっちの我慢も限界に近付いて来てるっていうのに。
その我慢を超えた時にどうなるか…別にどうにもしないか。
無理にどうこうすれば、拒絶されてその後会ってくれる保証は無い。
それに越前はまだ子供だ。
まだ先に進む覚悟も無さそうだから、もう少し待っててやってもいい。
……本当に少しだけだがな。

だけど最近、越前を間近で見てると、触れたくなるから困る。
俺よりずっと小さな手を取って、頬擦りして、可愛い耳にかぷっと被りつきたくなるから困る。
だったら見なきゃいいと思うだろうけど、視線が自然と惹き付けられるからどうしようも無い。
で、見ると触れたくなる。
触れたくなって、目を逸らすけどまた見てしまう。
ああ、悪循環だ。

「さっきから、何ぶつぶつ言ってるんすか」

呆れたような声を出す越前に、顔を上げる。

さっきまで自宅のコートで二人ゆっくりとテニスを楽しんでいて、
今は休憩中。
二人でベンチに座って、冷たいドリンクを飲んでいる。

越前は無口な方だから、俺が黙ると沈黙が続いてしまう。
二人の距離をもっと近づける為に何かj話題を振ろうかと考えていたら、
越前の顔に見惚れてしまっていた。
大きな目が細められ、俺のことをじっと睨んでいる。
まずい。
変な顔して見ていたか、と慌てて口元を手で隠す。
良かった。
無意識に口を全開にしては無かったようだ。

「ねえ。何喋ってたか聞いたんだけど」
無視されたのかと、越前が少し大きな声を出す。
そんな訳無いだろ。
他の誰より優先すべき存在は、越前リョーマ、お前だけだ。

「ただの独り言だ。気にするな」
全開の笑顔をむけると、越前は「キモイ」と呟いて目を逸らしてしまう。
おいおい。
この好青年に向かって失礼なこと言いやがって。
相手がお前じゃなかったら、締め上げてる所だぞ。
いや、違うか。
越前の奴、俺の笑顔を見て照れているに違いない。
それであんな憎まれ口叩いて……。
全く、素直じゃねえな。
見惚れてるのなら、そう言えよ。

「越前。俺の方はいつでも準備は出来てるからな」
「はあ??」
「言いたいことがあるなら、いつでも言えばいい。
遠慮するな」

すると越前は深い溜息をついて、グラスをテーブルに置いた。

「その言葉、そっくりそのまま返す」
「おい、どういう意味だ。訳わかんねえぞ」

これも越前の作戦か?
謎めいた言葉を口にして、俺の気を引こうとしてるのか。
きっとそうだ、間違いない!

感動に拳を握り締める俺を余所に、越前はすっと立ち上がってコートへと向かい始める。
おい、なんだよ。
余韻に浸るとか、今後の展開を話すとか無いのかよ?

「越前、何やってるんだ。
いくら恥ずかしがってるからって、遠くに行くこと無いだろ。
こっち戻って来いよ」
声を掛けながら、自分の膝を軽く叩く。
別々に座るよりも、密着して座った方が新密度は増す。
そう思っての提案だった。

そんな俺に、越前は振り返って首をゆっくり横へ振る。

「あのさあ、あんまり馬鹿なこと言って無いで、
さっさとコートに入ったら?
あんたが元気だっていうのはわかったから、
悪い冗談も言えなくなる位思い切り体動かそうよ」
「馬鹿なこと…?悪い冗談…?」
「そう。しかもつまらないよ。
ほら、そんなことよりテニスしようよ。早く」

がっくりと俺は肩を落とした。
さっき少し良い雰囲気だと思っていたのに、
あれは気のせいだったのか?
それとも越前の奴、俺をからかって楽しんでいるのか。
ここからだと帽子に隠れた表情では判断がつかない。

「跡部さん、テニスしないの?」
「……今、行く」

呼ばれてふらふらと立ち上がる。
結局越前に誘われたら、逆らえない。
今日も越前が大好きなテニスに付き合う。
俺にはその位しか出来ない。

(いつになったら、俺達は恋人らしくなれるんだ……)

ラケットを振って手招きする越前に吸い寄せられるよう、
俺はコートへとゆっくり歩き始めた。












休憩の間、跡部がずっとこちらを見詰めたことをリョーマは気付いていた。
考えていることも、大体想像がつく。

(相変わらず、面白いなあ)

しかしよりによって自分に『言いたいことがあるなら、いつでも言えばいい』とは。
大事な言葉を黙っているのはどっちだよ、と問い詰めたい。
仕返しに少し意地悪な言葉を投げ掛けてしまった。
大分堪えているらしくて、こっちに向かっているその顔は、
さっきまでの自信満々なものと違い、暗く落ち込んでいる。
しばらくすればまた元通りになると経験上、わかっているけどね。

(それにしても……)

しょんぼりしている跡部さんの姿は、
多分通常なら見られないものだ。
俺の言葉によって、落ち込んでいる顔を見ると。

(あー、もうなんて可愛いんだろ。
ちょっと伏せた目や眉も、拗ねてる唇とか。
やっぱり可愛いよね!)

ついつい頬が緩みそうになって困る。
そんな顔を見られる訳にいかなくて、
俺は深く帽子を被り直した。


チフネ