チフネの日記
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| 2008年12月26日(金) |
2008年 リョーマ誕生日 小ネタ 不二リョ (生意気番外編) |
今、俺は好きな人の所へ向かっている。 飛行機に乗って、遠い場所目指している。
会うのは約四ヶ月ぶり。
何しろ恋人と俺との間にある距離は半端じゃない。 会いたくなっても、すぐに会えない。 日本とアメリカ。 長距離恋愛にも程がある。 下手すると一年会えるかどうかも怪しい。
(不二先輩) 早く会いたいなあ、と呟く。
最後に会ったのは、夏休みの間だ。 なんと先輩は短期留学という名目で俺に会いに来てくれた。
嬉しくて、舞い上がってしまったのが悪かったんだと思う。 親父にばれて、先輩が遊びに来る間ずっと邪魔されてしまった。 二人きりにさえないようにしたり、遊びに行っても追いかけて来たり。 思い出しただけで腹が立つ。 俺の家に泊まりに来てくれた時も、何故か親父は廊下に布団を引いて、 「ここで聞いてるからな」とにやけた顔で言うし。 最悪!折角先輩と同じ部屋で寝るチャンスだったっていうのに、最悪だよ……。
落ち込む俺と反対に、先輩は笑いながら「これじゃしょうがないね」と言った。 何それ。 そんなあっさり諦められるもんなの? 久しぶりに会ったのに、頑張って二人きりになろうと思うのが恋人ってもんでしょ。 ちょっとムカついたけど、こんな所まで会いに来てくれた先輩の誠意は認める。 だから俺は不満をぐっと飲み込んだ。
そして短い夏は終わって、先輩はまた日本へ帰って行った。
当然、親父に対しての怒りは簡単に収まるものじゃない。 しかしどうせ仕返しするならと、俺はあることを思いついた。 悟られないように静かに計画し、親父のコレクションを別の場所へ移す。 そして母さんにばらされたくなかったら、旅費を出せと約束を取り付けた。 少々苦労したが、今日のことを思えばなんてことは無い。
今日、俺の誕生日に先輩と会えるんだ。
(待っててね)
見えて来た日本の上空に向けて呟く。 長かった空の旅もようやく終わる。
予約しておいたホテルは後回し、と俺は真っ直ぐ不二先輩の家へ向かうことにした。 一秒でも早く会いたい。 その気持ちが、俺を駆り立てる。 タクシーを急がせて、先輩の家にやっと到着する。
迷うことなくインターフォンを押す。 『はい』 先輩のお母さんの声だ。 「すみません。越前ですけど、不二先輩はいますか?」 『あら、越前君?今そこにいるの?ちょっと、周助』 途端バタバタと家の中から足音が聞こえる。 先輩が玄関に向かっているのだろうか。 わくわくする気持ちで、中を覗き込む。
「越前!」
息をやや切らした先輩が、飛び出してきた。
(やっぱり格好いい) 思わず見惚れてしまう。 この人が俺の恋人なんだって、大声で叫びたい位だ。
少し背が伸びたかもしれない。 身長差が更に開くのは面白くないが、恋人が格好良くなったことは素直に喜ぼう。 しかしこれだけ素敵だと、周囲が放っておかないだろうと別の心配が出て来る。 遠くの恋人より近くの私を選んで!とか言われたりしないだろうか、先輩は昔からモテるから……。
「越前!聞いてる?」 「あ、先輩」 「どうしたの、ぼんやりして」 心配そうに先輩が、顔の前で手を振る。 少し想像の世界に飛んで行ってしまっていたことに気付き、笑って誤魔化す。 今は先輩に集中するべきだろう。 一秒でも時間は無駄に出来ない。
「先輩。今から俺が予約したホテルに行きましょう。すぐに。 今日はそこで一泊しよう」 「え、ええ!?」 「そこなら邪魔者も入って来ないはず。さあ早く!」
先輩の腕を引っ掴んで、外に連れ出そうとする。 が、逆に引っ張られて、中へと入れられてしまう。 「越前、声大きい……。ご近所迷惑は駄目だよ」 「すみません」 「僕としてはどこか行くよりも、君がここにいる理由を知りたいんだけど」 「それは、愛の力でなんとか」 「嘘でしょ」 「う、うん」 「僕は君宛にプレゼントを送ったんだよ。何故本人がここにいるの?」 「すみません。親父を脅して旅費を出させました」 「そんなことだろうと思ったよ。全く」
ふう、と先輩は腰に手を当てて、呆れたように溜息をつく。
「先輩。怒ってる?」 急に心配になって尋ねてみる。 押し掛けて来たのを戸惑っているのかもしれない。 やっぱり予告しておくべきだったかなあ、と後悔する。 俺としてはちょっとしたサプライズのつもりだったんだけど。
「怒ってないよ」 先輩は一瞬間を開けてそう言った。 「本当に?」 「びっくりしただけ。越前は行動力があり過ぎる。ちょっと侮っていた」 「先輩と会う為だから、当然っす」 「簡単に言うなあ」
ハハ、と先輩が笑う。 白い歯が除く。その爽やかな顔にさえ、ドキッとさせられる。
「越前。実は今ね、父さんが帰って来てるんだ」 「えっ」 「だからホテルに泊まることは出来ない。 今日は皆で過ごそうと決めてるから」 「そ、っすか」
肩を落として、荷物をぎゅと握り締める。 俺、バカだ。 先輩の都合を聞かずに、勝手に来るなんて。 大人しくアメリカにいて、先輩のプレゼントを待っていれば良かった。 勝手に舞い上がって押し掛けて、本当何やってるんだろう。
首を縮める俺に、そっと先輩が手を差し伸べて来る。
「越前。おいで」 「え?」 急に手の中の重さが消える。 先輩が俺の荷物を持って、家の中へ運ぼうとする。 「ホテルは無理だけど、一緒に、僕の家族と過ごそう? クリスマス・イヴと、君の誕生日。そのお祝いをしよう」 「い、いいの?」 どもりながら言うと、先輩は「勿論」と言って笑った。
「君も僕の大切な人だから、一人で帰す訳ないじゃないか。 誕生日、いっぱいお祝いしてあげるからね」 やっぱり格好良い!さすが不二先輩だ。 一生この人にどきどきさせられるんだろうな、とそんな予感がした。
「うん、お願いします!」 「まーた変な期待してる」 「そんなこと、あるけど」 「あるんだ!?あのさ、越前って僕の体目当てだったりする?」
苦笑する先輩に、俺はきっぱりと言い切った。
「体だけじゃないよ。心も、くっ付いていたいよ。 でも、ここまで焦らされて結構限界。 早く先輩を俺に下さい」 「……」
思ったことを素直に伝えると、先輩は深く深く溜息をついた。 またまずいことを言ってしまったようだ。 正直な気持ちを上手に伝えるって難しい。 あまり言葉が得意じゃない自分のことを、少し歯痒く思う。
「あのさ、越前」 「はい」 緊張しながら上を向くと、真剣な顔をした先輩と目が合った。 「声を抑えるって約束出来る?」 「は?声?」 「そう。僕の部屋は2階の奥なんだけど、 隣には裕太がいるからあんまり音とか立てるのもちょっとまずいんだよね。 それでもいい?」 「え、っと」
先輩は表情を改めて、にっこり笑った。 優しいだけの表情じゃない、逆に切羽詰まっている感じだ。
「あー、やっぱり無理だよね。 夜、こっそり抜け出して越前のホテルに行こうか。そうしよう。 その方が気兼ねしなくて済むし」 「先輩?」 「ごめん。いい加減我慢も限界だったんだけど、 今の越前の言葉でぶち切れたみたいなんだ。 悪いけど、今夜はとことん付き合ってもらうよ」 「それって、OKってこと?」 「勿論。まさかここで怖気付いたなんて、言わないよね?」 確認されて、思い切り首を横に振る。
有り得ない。 もうずっと、この人が欲しいと望んで来たのだから。 嬉しいという気持ちしか無い。
「当然。先輩こそ、逃げないでよ」 「……ここまで待ったんだから、逃げも隠れもしないよ。 さ、おいで。皆に紹介するから。 暖かいお茶を飲んで、それから今夜どうするかゆっくり決めよう」 肩を抱く手に押される形で、玄関へ促される。
「そうだ、越前」 「ん?何?」 「誕生日、おめでとう。まだ言ってなかったね」 「あ、ありがとう」 「どうせならプレゼントも一緒に渡したかったな」
少し残念そうに言う先輩に、俺は「これからもらうから」と言った。
そう。今夜こそ。 一番欲しかったものを、先輩がくれるのだから、それだけでもう十分だった。
終わり
チフネ

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