チフネの日記
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2008年12月25日(木) 2008年 リョーマ誕生日 小ネタ  塚リョ

「ねえ、越前君。知ってる?
日本では誕生日を迎えた人はお祝いとして恋人に生クリームを塗った体を差し出すんだ。
舐めてもらって、1つ年を取る。そういう風習があるって、知らなかったでしょ」

さすがに嘘だろうと、リョーマは思った。
今まで色々騙されて来たが、もう感嘆にはいかない。
だが目の前の食えない先輩に反論したら「僕が嘘をついたって言うの?」と、
目を開けて説得してくるに違いない。
だから、こんなことを言わせるよう仕組んだ本人に直接文句を言おうと思った。
今は右から左に不二の言葉を受け流すのみだ。



「何考えてんの!体にクリーム塗るとかバカじゃない?
不二先輩にあんなこと言わせて、俺が信じると思ったら大間違いだよ。
バカにしてんの?」

あまり人前でべらべら喋る内容では無いので、リョーマはその日の夜、手塚を自宅へ呼び出した。
夕飯後という時間にも関わらず、手塚はのこのことやって来た。
自ら手塚の家へ押し掛けてやっても良かったのだが、向こうの自室だと何のかんの言って、
押し倒される危険がある。
自分の家だったら、不埒な行為に及ぶと同時に南次郎が飛んで来る。
『人の家で何やってるんだー!』
南次郎は交際は認めても、そういう事までは認めていない。
前にも手塚は叩きだされた前例がある。
だからリョーマは家に来いと手塚にメールを打ったのだ。

「越前、今日は何の用だ。俺に何の話がある」
期待に満ちた口調がまたムカつく。
おそらく不二から「話はしておいたからね」と報告を受けたのだろう。
リョーマがその件で恥かしがって相談をしてきた、と手塚は解釈していたらしい。
なので部屋に入ると同時に、リョーマは「ふざけんな」と叫んだ。

言われた手塚はきょとんとした表情をしている。
まさか怒られると思っていなかったようだ。
その顔を張り飛ばしてやりたい。
目から星が出る位にね、とリョーマは呟く。

「どうした。恥かしがることは無いんだぞ。日本の常識を受け入れろ」
まだそんなことを言って誤魔化そうとする手塚の足をぎゅっと踏む。
「その常識を考えたのはあんただろ」
冷たく言い放つと、手塚はわずかに視線を逸らす。
「いや、俺は何も」
「菜々子さんに確認取ったよ。生クリームを塗る習慣なんて無いって。
それでも言い訳するつもり?」
「いや、地域限定の習慣だから」
「あんた限定だろ!」
腹が立ってきて、リョーマは大声を出す。

「そんな嘘をついてまでして、俺に何をやらせるつもりだった訳?
変態プレイがしたいのなら、他の人を探してよ。しかも誕生日に……もう嫌だ」
「待て、越前。この程度のことで変態なんて言ってはいけない。
世の中にはまだまだ広くて深いんだからな」
「そういう問題じゃない!」
ずれたことを言う手塚に、リョーマの頭が痛くなってくる。

「誕生日なんだよ?祝ってくれる気が無くて、考えてるのはHなことばっかりって。
それで本当に恋人なの?」

情けない、と床に座り込む。
いつもいつもそんな事ばかり考えているなんて、やれればいいんじゃないと思っているのだろうか。
今になって手塚の心を疑ってしまう。

そんなリョーマの気持ちが通じたのか、手塚もしゃがみ込んでリョーマと同じ目線を合わせて来た。

「恋人じゃなきゃ、なんだと言うんだ。
俺はお前のことが好きだ。毎日、バカみたいに考えたりするくらい好きだ」
「それってHなことに関してでしょ?」
「たしかに含まれているが」
「ほら!」
「聞け、越前」

ぐいっと、リョーマの手首を掴まれる。
あっけなく手塚の胸の中へと抱き寄せられてしまう。

「好きだから、そういう事も考えるんだろうが。何故それがわからない」
「……わかる訳ないよ」
「そうか。悪かった。言葉が足りない所為で、誤解を与えてしまったようだ。済まない、越前」

謝罪して、手塚はリョーマの顔を覗きこんで来る。
その目は曇りなく真っ直ぐで、思わず素直に耳を傾けてしまう。

「好きだから、そういうこと考えるんだ?」
「ああ。そうでなければ、触れたいなどと思わない。
大好きだからこそ、お前の知らない姿を沢山見たい。
そう思って、折角の誕生日だからクリームで祝おうと思ったのだが、気に入らなかったみたいだな」
「当たり前だよ!」
憤慨して叫ぶと、手塚は残念そうに俯いた。
「仕方無い。なら、諦める」
「当然。もうそういうこと考えるの止めろよ」
「……ああ。反省している」

しゅん、となってしまった手塚にちょっと可哀想だなと思って、
リョーマも背中に手を回してお互い抱きしめる格好になる。

「なあ、越前」
「何すか?」
「生クリームは諦めるから、苺は?苺ならいいよな?」
「……あんたも学習しないね」


真面目にHなことばかり考えている男に、
どうしたら普通でいてくれるのだろうと、リョーマは溜息を零す。

この謝罪はプレゼントでしてもらおう。
もちろん自分の希望の品で。
反論は、許さない。





そして24日当日。
リョーマは欲しかったプレゼントを見事に手に入れたのだが、
もう一つ嬉しくないおまけがついて来た。


「越前。お前が生クリームも苺も嫌だと言うのなら仕方無い。
食べ物は止めてリボンにしよう。ほら、好きな色を選んでくれ」
「あんた、またっ!何考えてんの、最悪!」
「そう照れるな。今日も頑張ろうな、越前」
「俺は頑張りたくないっす!」

生クリームとどっちがマシだったかな、とリョーマは顔を引き攣らせた。

終わり


チフネ