チフネの日記
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| 2008年12月22日(月) |
2008年 リョーマ誕生日 小ネタ 跡リョ |
必死で頼み込む跡部に、リョーマは無表情のまま首を横に振った。
「ヤダ。行かない」 「どういうつもりだ、リョーマ。じゃあてめえは誕生日に俺様と過ごすつもりは無いって言うのかよ」 「うん、そう」 「だったら誰と過ごんだ。そいつの名前を言ってみろ。ただじゃおかねえ」 物騒なことを言う跡部に動じることなく、リョーマは冷静に返事をする。 「大人しく家で過ごすよ。菜々子さんもケーキ焼いてくれるって言うし」 「ああ、そうか。って、あるかー! ケーキならいくらでも用意してやる。だから俺様の家に来いよ。なっ」 「ヤダって言ってるじゃん。大体あんたの家に言ったら何されるかわかったもんじゃない。 よって却下」 「リョーマ……俺が何するって言うんだ。お前の嫌がることは何もしないぞ: そう言って、跡部は胡散くらい笑顔を浮かべる。
ばればれだよ。 ふんっ、とリョーマは鼻息を鳴らす。 「自分の胸に聞いてみたら?今までのこと思い返すといいよ」 これまで跡部がして来たことを思い出すと、情けないやら腹が立つやら、そして顔が赤くなってしまう。
むっとしたように腕を組む跡部に、反省の色は見られない。 リョーマは声を上げて、しっかり自分の意志を伝える。 「とにかく誕生日くらい、俺は静かに過ごしたいんだ。 よってあんたの家に行かない。わかった?」 「ちょっと待ってくれ、リョーマ。一度落ち着けよ」 「俺は落ち着いているよ」 「とにかく待てよ」 ぐいっと、跡部が腕を掴んだ。
「今までの行為は置いておこう。これからの俺を評価してくれ」 「なんか激しくあんたに都合良いと思うけど……」 「まあまあ。何もしなければいいんだろ? 絶対手を出したりしないと誓うから、一緒にいてくれ。 大切な人の誕生日なのに、側にいられないなんて辛過ぎる。 なあ、考え直してくれよ。この通り!」
両手を合わせて頼む跡部に、リョーマは最初の方は無視をした。 だがあまりにも必死なので、途中から可哀想になってきてしまう。
「本当に何もしないって誓えんの?」 「ああ!」 「手を出した時点で帰るよ」 「構わない。お前の好きにすればいい」 「じゃあ……行く」
大喜びする跡部を見て、リョーマは溜息をつく。 本当に跡部が何もしないか疑問は残る所だが、チャンスくらいはあげるべきだろう。
そうして、リョーマの誕生日は跡部の家で過ごすことが決定した。
当日。
迎えに来た車に乗り込んで、跡部の家へ向かった。 「うわ……何あれ」 玄関脇に飾られている大きなクリスマスツリー。派手な電飾で「Happy birthday Ryoma 」と文字が書かれている。 「恥ずかしいんだけど……」 得意げな顔をして出迎えている跡部に正直な意見を言う。 「何を言ってる。この程度じゃ俺様の愛はまだまだ表現出来ていない」 「はあ……」
もう何を言ったらいいかわからない。 それに言った所で無駄だと、跡部の表情が物語っている。 大人しくリョーマは家の中に入ることにした。
幸いなことに、家の中にはおかしな装飾をされている様子は無い。 それに手を出さないとの約束を跡部はきっちりと守って、 変に触れてくることも、妙な動きもしない。
「ねえ、テニスしたいんだけど」 「誕生日にもテニスか。やりたいこと他に無いのか?なんだって叶えてやるから、遠慮せず言っていいんだぞ」 「テニスがいい。それが一番楽しい」 「仕方無えな」
我侭も聞いてくれる。 自宅にあるコートに、ご丁寧にリョーマ専用のウエアとラケットまで貸してくれて、 飽きるまで二人で打ち合う。
そろそろ夕ご飯の時間に近付いたので、切り上げてまた部屋の中へ戻る。 跡部は準備があるからと別の所へ向かってしまったので、 リョーマは用意してくれたお風呂にゆったりと浸かって疲れを癒した。 再び衣服を着た後、「夕飯の用意が出来たぞ」とタイミング良く跡部が迎えに来た。 見ると彼も一旦お風呂に入ったらしく、着替えている。 大袈裟な格好を一瞬想像したが、跡部の格好はラフな普段着だった。
「クリスマス・イヴに和食っていうのもどうかと思ったが、お前の誕生日だからな。 好きなもんを用意させたけど、いいか?」 「うん!ありがとう、景吾」 素直にお礼を述べる。 自宅では洋食中心な為、美味しい和食に飢えている。 しかも跡部の家では食べたことのないような贅沢な品から、味に拘った料理が出て来るので、 クリスマス・イヴだろうが和食大歓迎だ。
コース料理が出て来るのに相応しいテーブルに着いて、 二人で箸でご飯を食べる姿は少し変だと思うが、 美味しい料理を前にしてつまらないことを言うのは止めようと、出されたものを遠慮なく口に運んで行く。
「美味いか?」 「うん。最高に美味しい」 「そりゃ、良かった」
満足そうに跡部が微笑む。 さっきからじーっとこちらの顔を見ているのはわかっていたが、リョーマは黙っていた。
跡部の瞳はこの上なく幸せそうで、妙に恥ずかしくなってしまうからだ。
(もてなしている側が嬉しそうに笑っているなんて、変なの)
茶碗蒸しをぐずぐずとかき回して、また無言になってしまう。 どうも調子が狂う。 いつもの跡部なら食事している最中にも拘わらず、キスしようとしたり怪しげな手つきで触ってきたりして、 それを押し留めるというのがパターンになってきてるというのに。 いくら約束したからとはいえ、最後まで我慢出来るものだろうか。 何か企んでいるんじゃないの、と勘繰ってしまう。
全部平らげた後、不意に跡部が「そろそろデザートを出すか」と立ち上がる。 「ケーキはちゃんと用意したから、安心しろ。好きなだけ食べていいぜ」 「はあ……」 「なんだ、その気の抜けた返事。嬉しくないのか?」 「そうじゃないけど。どこか行くの?」 部屋を出て行こうとする跡部に、声を掛ける。 「ケーキは俺様自ら運んでやる。ちょっと待ってろ」 「……」
パタン、とドアが閉められる。 静かになった所で、リョーマはハタと気付く。
(ひょっとして、今まで大人しかったのもこのデザートの時の為なんじゃ……。 きっとそうだ!景吾がこのまま帰す訳ないよ。デザートを出す振りをして、とんでもないことを考えてるに違いない)
もしかして、『デザートは俺様だ!』と全身生クリームでデコレートした跡部がやって来るかもしれない。 『お前の為に用意したケーキを無駄にはしないよな?』 全部舐めて綺麗にしろと強要されたりするのかも、とリョーマは体を震わす。 呑気に座っている場合じゃない、とリョーマが立ち上がったと同時に、ドアが開かれる。
「どうした、リョーマ」 「あ……あの、生クリームプレイはちょっと」 「はあ?何言ってる。ケーキ持って来たぞ」
そう言って、リョーマの目の前に跡部が自ら運んできた皿が置かれる。 「普通のケーキだ」 「当たり前だろうが。一体、どんなものを想像したんだ」 「なんでもないっ!!」
さっきのおぞましい想像は墓に入るまでの秘密にするべきだろう。 リョーマは笑って誤魔化した。
二人分だからだろうか、少し小さめの生クリームケーキだ。 よく見ると、跡部家のシェフらしくない少し崩れたようなクリームで飾られている。 そして上には13本の蠟燭の灯がゆらめいている。
「このケーキ作ったの、誰だと思う」 「え、えっと」 期待したように見詰められて、それだけでわかってしまう。 「ひょっとして、景吾が作った?」 「正解」 「すごい、上手じゃん」 跡部がケーキを作れるとは聞いていない。 この日の為に練習してたのだろうか。 「まあな。俺様にやれないことは無い」
にこっと満足そうに笑った後、跡部は電灯を消して「ほら、火を消してみろ」と言う。
「あ、うん」 「願い事を忘れるなよ」
きっと蠟燭も跡部が用意してくれたに違いない。 勿体無いと思いつつ、一本一本吹き消して行く。
灯りの向こう側に、跡部の笑みが見える。 あの幸せそうな表情に、ぐっと胸に何かが込み上げて来る。
ただ喜ばせたい、跡部の本心に触れた気がした。 だからあんな約束してまでも、どうしても今日一日一緒に居たかったのだろう。
くだらないことで意地を張っていて、忘れるところだった。 この人が好きで、だから一緒にいるっていうことを。 もう約束なんて、どうでも良くなった。
最後の一本を消して、部屋が暗くなった瞬間、 リョーマは立ち上がって跡部に抱きついた。
「どうした、リョーマ。感極まったのか?」 「ううん、違う……あ、でもそういう感じなのかもしれない」 「何が言いたいのか、よくわからないぞ」 「俺もよくわかんないから、いいよ。ただ、こうしていたいだけ」
もっと体を密着させると、跡部も腕を伸ばしてぎゅっと抱きしめられる。
「ねえ。今日、泊まってもいい?」 「おい、泊まるって」 「もういい、約束したことはここで取り消し。 やっぱりいつものあんたらしくないと、調子が出ないからね」
よくわかっていない跡部の様子にリョーマは笑って、キスする為にぐいっと首を引き寄せた。
終わり
チフネ

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