チフネの日記
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2004年09月19日(日) 盲目の王子様 49 跡部景吾

「で、どうだった?」
「ーっと、その」
間近でリョーマの顔を見て、跡部は一瞬体を引いた。

落ち着け。
相手はこっちがどんな表情しているか見えない。
普段通りに、報告すればいい話だ。

「当然、勝ったぜ。準決勝は先だが、関東大会への切符は手にした」
「ふーん。跡部さんは試合したの?」
「今回も無かった。雑魚相手にしても仕方ねえだろ」
「言うね。でも油断してると、危ないかもしれないよ?」
「試合に出て、油断したことなんか一度も無いけどな」
「へえ、意外」
「お前は俺をなんだと思ってたんだ・・・」

どんなイメージだと露骨にがっかりした声を出すと、
「ごめん」と明るく笑いながらリョーマが謝罪する。

その笑顔を見て、また気分が浮上する。
どうしてリョーマといると、こんなに楽しい気持ちになるのだろう。

他愛の無い会話を、もっと続けていたい。
途中に見え隠れする笑顔を、もっともっと見たくなる。

「あ、そうだ。跡部さんが戦いたいって言ってた人。あっちは勝ち残ったの?」
「ああ。勝ってた」
初戦以降、手塚まで回ることなく青学は勝っていたらしい。
やはり注意すべき学校だ。

「だったら決勝で試合出来そう?」
「向こうが勝ったらな」
「氷帝が勝つことはもう前提なんだ!?」
「当たり前だろ」
リョーマの額を指で突付くと「すっごい自信」と、また笑う。

「まあ期待しないで、報告待ってる」
「しろよ、少しは」

待ってる。
そんな言葉くらいで嬉しくなるなんて、相当どうかしてる。
たったこの程度で、揺らされる自分が信じられない。

「期待はしないけど、ちょっとだけ応援してやってもいいよ」
生意気そうな笑顔を見て、跡部は不意に抱きしめたい衝動に駆られた。

こんな台詞、他の誰かに言ったら許せないとも思う。
自分だけに、向けて欲しい。気持ちを全部。

今すぐ抱きしめて、閉じ込めたいくらいだ。

「跡部さん?」
黙ったままの状態に不安になったのか、名前を呼んでくる。
何も映さない瞳が、揺れている。

『越前をむやみに不安にさせたり、混乱させるような真似はするな』
いつか監督に言われた言葉を、思い出す。

まだ、今は行動を起こす時ではない。
リョーマの状態が安定するまで、見守ると決めた。
それまではたとえ自分でも、混乱させるようなことは許さない。

「・・・ちょっとだけか。足しにもならないが、一応受け取ってやる」
「全く、いつでも偉そうだよね」
「偉そうじゃなく、偉いんだよ」
「ハイハイ」

もう少しだけこのままでいて、近くにいればいい。
もちろんジローよりも、忍足よりも近くに。
そして、一歩ずつ変わっていけたら。




「ねー、まだー?何やってるんだよー」
ダンダン、と足踏みする音が隣の部屋から聞こえてくる。

「ジローの奴・・・」
「そろそろ戻らないと、拗ねて大変そうだね」
くすっと笑いながら立ち上がろうとするリョーマに、手を貸す。
「どうも」
「行くぞ」

そのままジローのいるところへと、リョーマを引っ張っていく。
ただ、触れた手が離れるのが惜しくて、そのままでいたのだが。


「あー!またリョーマと手、繋いでいる!!」

結局拗ねてしまったジローを宥めるのに、リョーマは大変苦労を強いられる。
その間跡部は近寄ることも出来ずに、
やっぱり行動起こすべきなのかどうか悩んでしまうのであった。


チフネ