チフネの日記
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2004年09月17日(金) 盲目の王子様 47 跡部景吾

「両校、礼!」
号令をぼんやり聞きながら、跡部はやれやれと息を吐いた。
試合はしていないが、今日は別の意味で疲れている気がする。

予想通り、初日は楽勝で終わった。
最も、こんなところでもたついている様では、話にならない。
目標は都大会優勝なんていう小さいものではなく、全国優勝だ。


「跡部ー、もう俺達は帰っていいだろ?」

もうこれ以上今日は試合がないとわかった岳人が、退屈そうに声を上げた。
俺達、というよりも自分が早く帰りたいのだろう。
しかし騒がれてもうるさいだけなので、跡部は「帰ってもいい」と許可を出した。

「やったっ!侑士、行こうぜ」

忍足のジャージを引っ張って、向日は歩き始めている。
どこかこの後、二人で遊びに行くのかもしれない。

ちらっと後姿を見て、跡部は少し考える。
向日と一緒なら、忍足がこの後越前の家に行くことはない。
これなら邪魔されずに済む。
どうせ会うならゆっくり二人だけで話をしたいと思っても、仕方ない。

早く行くか、と跡部は他のメンバーにも解散を言い渡す。

「っと、そうだ」
忘れてはいけないと、監督へ連絡入れるために携帯を取り出す。
どうせ結果はわかっているだろうけど、これも部長としての努めだ。
何回かコールして、榊に繋がった。

「ご苦労」
結果を報告すると、短い返事が返ってすぐに切れた。
いつものことなので、どうとも思わない。
監督が期待している結果通りなので、話すこともないのだから。

「行くか・・・」
鞄を持って待っていた樺地に、自分で持つから降ろせと指示する。
「ウス」
「もう帰っていいぜ。俺は少し寄るところがある」
「ウス」
ぺこっと頭を下げて、従順な後輩は言われた通り帰宅を始める。

跡部も目的地へと行く為にしっかりした足取りで歩き出した。




もう3度目になる越前家のチャイムを鳴らす。
「ちょっと待てよ」
跡部はここまで来て、不在かもしれないことを思い出す。
確かめもせず何をやってるかと苦笑したが、来てしまったものは仕方ない。
いなければ、帰るまでだ。

そうして待っていると、扉が開いた。

「よぉ」
てっきり菜々子か母親辺りが出てくるかと思ったら、
リョーマ本人が顔を覗かせた。
声を聞いてすぐに誰か気付いたようで、「跡部さん?」と確認している。

「ああ、俺だ」
「大会終わったところ?」
「さっきな」

ふーん、とリョーマがニヤリと笑う。
どうやら訪問しただけで、結果がわかったらしいと気付く。

「そんなとこに立ってないで入ったら?」
「いいのか」
「どーぞ」

気にした風でもなく、リョーマは大きくドアを開けた。
全く、無防備にも程がある。
自分以外でもこんな風なのだろうか。
訪問客が危険人物(ジローとか忍足)だったら、これは良くない。
奴らは遠慮なく上がりこんで、いつまでも帰ろうとしないだろう。

注意すべきか考えながら、靴を脱ぎ上がり込む。

その瞬間、
「リョーマ?お客さん、誰だった?って、え?」
毛玉を抱えたジローが階段から降りてきて、目が合う。

跡部もジローも互いに固まってしまった。
暢気なのはリョーマだけだ。

「跡部さん、試合が終ったんだってさ」

もし二人の表情が見えていたら、どうかしたのと同じように沈黙するところだろう。

「・・・?ねえ、ジロー。聞いてる?」
返事が返ってこないことに、リョーマが首を傾げる。

「ジロー!?てめえ、こんなところにいたのか!」
「跡部こそ、何でリョーマの家に来てるんだよ!」
「え?何、ちょっと」

罵り始めた二人に、リョーマは戸惑っているようだ。
だけど引ける訳がない。

「試合にも来ないで、何やってる!」
「いつもこうやってリョーマの家に来てたってこと!?跡部、ずるい!」
「こんなことして、明日はどうなるかわかってるんだろうな?」
「油断も隙もないってこういうことだよ!」
「あのー、ちょっと」
「レギュラー落ちも考えられるな。何考えてるんだ」
「あー、今日、リョーマの家に来てて良かった。でないと跡部に何されたかわかんないもんね」
「今回ばかりは見逃すわけにはいかないからな」
「これからもリョーマの周囲には十分注意しなくちゃ。危ない人がうろうろしてるみたいだC」

終わらない小競り合いに、リョーマが低い声で止めに入る。

「お前ら、人の話し聞けよ」

ようやく、ジローも跡部も口を閉じた。

「ねえ、人の家でケンカするつもり・・・?」
「まさか」
「そんなはずないだろ」

今にも怒りだしそうなリョーマを宥める為、必死で否定する。

「そ。近状迷惑になるなら、遠慮なく叩き出すから」
「「はい」」

リョーマに弱いのは、同じらしい。
なんとなく複雑な思いでジローを見ると、同じ思いだったらしく苦笑している。

とりあえず、この場は一時休戦ということに決まった。


チフネ