チフネの日記
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2004年09月14日(火) 盲目の王子様 45 跡部景吾

榊から渡されたオーダー表は、地区大会のものとほとんど変わらないものだった。

「後は任せる。試合結果の報告だけは携帯に入れるように」

榊は指示だけして、さっさと会場から帰ってしまう。
勝つと、自分で結果を出してしまっているので、見なくても良いと判断したようだ。


「監督は?もう帰ったのかよ」

大会に出る選手とレギュラー達のいる場所へ戻ると、早速岳人が近寄ってきた。
「ああ」
「ずりーよな、俺も帰りたい」
「今日一日くらい、我慢しろ」
「ちぇっ、つまらねーの。早く終らないかなー。侑士もそう思うだろ?」
「まだ初戦も終ってないやろ。少しじっとしとき」
「それが出来たら苦労しねーよ。よし、跡部!お前一人で勝ち抜いてこいよ」
「・・・黙ってろ」

今回の初戦でも跡部は補欠の枠だった。
2回戦からは一応シングルス1扱いだが、きっと出番は無いまま終わるだろう。
たかだか準決勝前の消化試合だ。
ここで出番あるようでは、全国制覇など話にならない。

決勝では、わからないなと跡部は考える。

青学と当たったら、正レギュラーじゃない連中には荷が重い。
最も、青学が決勝まで勝ち抜けば、の話になるが。


「跡部?お前どこへ行くんだよ」

初戦も見ようともせずどこかへ行こうとする跡部に、宍戸が声を掛ける。

「・・・青学の試合を見に行ってくるだけだ」
「そんなもんビデオ撮ってる奴に任せておけばいいだろ」
「一応見てくるだけだ。それより俺が見ていないからって負けたりするなよ」
「誰が負けるか」

まだ文句の言いそうな宍戸を無視して、歩き出す。


監督から見せてもらった地区大会のビデオに、手塚は写っていなかった。
抱えている故障の為、まだ万全ではないのだろうか。

完治していなければ、困る。
叩き潰すには、手塚が万全でなければ意味がないと跡部は考えていた。

その上で勝利して、次は全国制覇目指す。
今年、頂点に立つのは氷帝だ。







青学のコートへ近付くと、各校もやはりマークしているらしく、見学の人数がかなりいる。
ちょうどシングルス2が始まったところで、
天才と呼ばれる不二の試合に一同は釘付けになってるものの。

(ほとんどが手塚目当てだろうな)
シングルス1の試合に出るのかどうか、様子を窺っているようだ。

見た目にも不二よりも格下とわかる選手との試合は、一方的なスコアですぐに終ってしまった。
そして不二は実力の半分も出していない。
涼しげに笑いながら、コートを出て行く。

(やっぱりあいつも要注意しておくべきだろう)
簡単に勝てる相手ではない。
手塚は自分が相手するから良いけれど、これは団体戦だ。
その他の試合も勝たなければ、意味が無い。

(負けやがったら、承知しねぇ)

盲目の少年と、約束した。
必ず、勝つと。

『全部お前に話してやるから』

もし目が見えたなら、本当はこの場にいたかもしれない。
なのに、試合を観戦することも出来なくて。
ただ、ボールの音に耳を傾けているしかない。

だから聞いただけで、その光景が浮かぶくらい話をしよう。
氷帝がどんな風に勝ったか、自分がどれだけ強いか。

全国大会が終わるまで、ずっと。





ざわめく周囲に、跡部は顔を上げる。
ちょうど手塚がコートへと入っていくところだった。
「手塚だ」
「試合に出るのか!?」
「怪我の具合は?」

周囲の雑音など聞こえていないだろう。
手塚は、ゆっくりネット越しの対戦相手へと歩いていく。

冷静な表情をしているが、その目からは勝利への執着を感じる。


「見せてもらうぜ」

ボールを高く上げた手塚に、跡部は口の中で呟いた。


チフネ