チフネの日記
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2004年08月20日(金) 盲目の王子様 20 越前リョーマ

授業も終了して、カチロー達が「またね」と声を掛けてきた。
いつもはもうちょっと早くテニス部に行くのに、今日はなんだかゆっくりしてるよな。
「急がなくて、いいの?」
一年は先輩より早く着替えて、準備を整えておくのが義務だ。
だからいつも慌しく教室を出て行くのに、その気配も無い。
「あ・・・もう、行くよ」
「またね、リョーマ君」
「うん」
二人が出て行くのを耳で聞いて、俺も鞄を掴んだ。

(もしかして、気を遣っていたのかな)
一日、あのうるさかった連中は俺に絡んで来ようとしなかった。
昨日は俺の杖を奪うような真似しただけに、不気味だ。
カチロー達もそれを察して、警戒してくれてたとか・・・?
(考え過ぎかもしれないけど)
今、教室に連中の声もしていない。
どうやら既に出て行ったらしい。
また因縁付けられても面倒なので、俺も今日はさっさと帰ることに決める。
色々なことが起こって、ちょっと疲れた。
夕飯までちょっと寝ていようかな。

それにしてもお昼休憩にも会った、忍足さん・・・あの人一体何なんだろう?
カチロー達にも聞かれたし、偶然会ったとしか言えないんだけど。
友達になるって本気だったのか?
馴れ馴れしくて強引だけど、悪い人には思えなかったな・・。
俺の目のことにも全く気を使ってなかったみたいだし。
ああいう態度って珍しいよな。
腫れ物に触るような気遣いよりも、よっぽど好感は持てる。

「越前」

下駄箱までもう少しの距離。
呼び止められた声に立ち止まる。
声の主が誰だか、もちろんわかっている。

「今、帰りか」
「うん」

跡部さんだ。
昨日といい、この時間によく遭遇するよな。
授業終ると同時に飛び出していく一年と違って、三年生は余裕あるな。
「今日は失くしてないみたいだな」
「そうそうは、失くさないものだけど・・・」
杖をこんって床に打ち付ける。
跡部さんが取り戻してくれた杖。

なんとなく勘付いてる。あの連中が絡んで来ないのも、跡部さんが何か言ったんじゃないかってこと。
あいつらがどこかに隠してた杖を、わざわざ探して持って来てくれたのだろう。
氷帝の生徒会長ってそんなことまで出来るのかって、正直驚いた。
聞こえるうわさからじゃ、人のことなんか関心なさそうな印象なのに。

「もう、失くすなよ」
笑っている?
見えないけど、声の感じからそう思った。
「失くさないよ。折角、跡部さんが拾ってくれたんだし」
「・・・そうだな。感謝しろよ」

偉そうな言い方だけど、今の俺には照れ隠しのように聞こえるんだ。
今までだったら、きっと反発してたけれど。

意外といい奴なのかも。
そう思ったら、少しは素直に返事が出来た。

「うん、感謝してる」
「・・・・・・」

何も言って来ないことにあれ?って思ったら、髪をくしゃっと一撫でされた。

「・・・・別に、大したことじゃねえ。気にするな」
「え?」
「じゃあな」

もっと感謝しろとか言うのが、イメージだったのに。
調子狂うけどイヤじゃないなんて、遠ざかる足音を聞きながら思っていた。


チフネ