チフネの日記
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| 2004年08月18日(水) |
盲目の王子様 18 越前リョーマ |
跡部さん達は教室まで送ると言い張ったけど、俺は断った。 もうこの位の距離なら、人の手を借りなくても歩いていける。 それに・・言っちゃ悪いけど目立ちたくないんだよね。 生徒会長でテニス部部長。 跡部さんの噂は、聞こうと思わなくても聞こえてくる。 入学してまだそんなに経っていないのに、だ。 親切にしてもらって悪いかもしれないけど、そういう人と余り歩いているところを 見られて騒がれるのは好きじゃない。
そうやって断る俺に、 「そうか・・・わかった」 跡部さんは食い下がることはしなかった。 「離さんかい、跡部。俺はリョーマと一緒に行くんやー」 忍足さんはじたばたしていたみたいだけど。
校門で会った時は、正直驚いた。 まさかこんな所で、待っていられるなんて思わなかったから。 「偶然だな」 なんて言ってたけど、絶対違う。 昨日の今日で、俺がちゃんと学校来るのか心配しているんだって思った。 信じられないよね。 あれだけ険悪だったのに、この和やかな空気はなんだよ。
でも向こうが普通に接しているので、俺もケンカ腰じゃない態度を取った。 一応、借りを作っていることだし。 跡部さんは借りとは思ってないみたいだけど。 拾っただけだって言い張ってるし。 何故、そんな風に言うのかは全くの謎。
もしかしたらこれも俺の口を割らせたいだけの、作戦かもしれない。 榊先生と俺とが、どんな繋がりがあるか聞きたがっていた。 やり方を変えて親密になった上で、聞き出そうってことなら、 今の対応もわからないでもない。
でも、と俺は考える。
隣を歩く跡部さんの歩幅は、俺に合わせてとってもゆっくりだ。 跡部さん一人なら、すぐにでも教室に行けるのに、 ずっと俺の隣を歩いていた。
本当に、俺のことを心配しているだけなのかも。
ふわっと風が吹いて、鼻を擽る。 すぐ側にいる跡部さんの香りが届く。
それは、この間俺を起こしてくれた人と同じものだ。 確認しても、杖と同じように否定するんだろうな。 だから、まだ何も聞いていない。
やっぱり、そんな悪い人じゃないんだよね?
教室にたどり着くまでの間、跡部さんのことをずっと考えてた。
「リョーマ君。おはよう!」 「おはよ」 先生が来るまでぼーっとしていたら、カチローが勢い良く声を掛けてきた。 なんか焦ってるみたいだけど、何かあったのかな? 「えーっと、リョーマ君」 「何?」 「今日も・・・・お天気だね」 「はあ?」 要領の得ない会話だ。 ああ、もうなんて、カチローは呟いてる。 「なんかあった?」 「ううん!なんでもない」 すごい勢いで否定してるし。 朝練のやり過ぎで、混乱してるとか? 「そういえば、カツオは? 「片付け当番だから少し手間取っているよ。早くしないと先生が来ちゃうね」 「ふーん。一年生って面倒だな」 一年生だから、球広いに掃除にコート整備。 聞いただけで疲れそうだ。 「面倒だけどしょうがないよ。みんなそうやって来たんだし」 たしかに大変だけどね、とカチローが苦笑する気配がする。 「あ、でも跡部部長は一年の時でも片付けやっていたなんて想像つかないなぁ」 不意に出てきた名前に、反応する。 さっきまで、一緒だった人。 「部長は一年の時からレギュラーだったって言うし。今の僕らとじゃきっとレベルも違うんだろうなー」 「出た。カチローの部長崇拝が」 「だって本当に部長はすごいんだよー!今朝だって・・・」 そして延々と跡部さんのプレイを聞かされる。 あーあ、お前が部長を敬っているのはわかったよ。 でも、なんか言い出しにくくて跡部さんを知ってるとは言い出せなかった。
出会いは、最悪。 けど、昨日の跡部さんは違ってた。 人の杖を盗むような奴なんかに、負けない。 家に帰れば予備がある。 それを持って、また学校に来ればいい。 何度もぶつかりながら、教室を出た。 壁伝いに行けばなんとかなるだろう。 杖の代わりに手を使って、歩いた。。 そんな俺に声を掛けてきたのは、跡部さんだった。 酷く怒った声を出していて、またケンカになるんじゃないかと身構える。 そうじゃなかった。 跡部さんは黙って俺の腕を取って、引っ張ってくれた。 「そんなんじゃいつまでも家に帰れやしねぇぞ」 口の悪さは変わらないけど。 杖が無いせいなのか、その手を無理に解くことはできなかった。
本当は、怖かったのもあったけど。 だって、やっぱり壁伝いで行くなんて無理がある。
跡部さんは、無茶する俺のことを怒ってた。 あの偉そうな人が、だよ? 俺のことなんかで、本気で怒ってた。
繋いだ手から、それが伝わって。 前ほど、嫌いになれなくなっていたんだ。
チフネ

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