チフネの日記
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2004年07月16日(金) 天使不二と王子 43




「今日は桃先輩の奢りっすからね」
「何だと!?お前いつもいつも」
「あーあ、50周走って疲れたなー」

そう言うと、桃先輩は黙ってしまった。
今日部に戻る切っ掛けを作った俺に、何も言えないようだ。
まあほっといても、いつか戻っていただろうけど。

「なあ、今月はピンチだからファンタ一本じゃダメか?」
「セットで。後、デザートもつけて」
「鬼だ。お前は・・・」

肩を落としている桃先輩を押して、外へと出る。
グラウンドを全力で走ったため、いつもよりも腹が減ってる。
早く注文したかった。




桃先輩が戻ったことによって、部の雰囲気も元に戻った。
菊丸先輩と大石先輩もいつの間にか仲直りしてたみたいだし。

これで関東大会への不安を抱えているのは、俺だけか。


不二先輩、今日も目を合わせようとしてくれなかった。
視線に気付いてこっちを振り返ることもあったけど、不自然に逸らされた。

もう俺に笑顔を向けてくれることは無いのか。
そう思うと悲しいし、苦しい。


不二先輩に興味を持った、あの屋上。
何故か怪我が治っていた鳩を抱えていた時とか。
カルピンを一緒に探してくれたこと。
確かに距離が近付いてた時もあったのに。

それが全部無かったように、不二先輩は俺のこと避けてる。
理由はわからない。

今、俺がわかるのは自分の気持だけ。
不二先輩が好きだ。
あの人の言葉や態度に、動揺したり傷付けられる。


でも、もう大会を前にしてこれ以上不安定でいるのも限界だから。
区切りをつけるため、告白する。
だめだって、わかってても。



桃先輩も戻ったことだし、明日告白しよう。

そんなことを考えて眠った所為か、やけに早く目が覚めてしまった。
母さんが驚いている位の時間だ。
どうしたのと聞かれ、大会が近いからと返事しておく。

「行って来ます」

余裕があるからといってモタモタしたりせず、学校へ向うことにした。
こんな時間、桃先輩が迎えに来ることは絶対無い。
自力で、歩いて行く。

「あれ、越前?」
「っす」

校門が見えた辺りで、部長と大石先輩に出会った。
二人共一瞬驚いた表情を見せる。すぐに元に戻ったけど。
大方、何故俺がこんな時間にと思ったところか。


「早いな、どうしたんだ」
問い掛けてくる部長に、「たまにはね」と笑って見せる。


「関東大会に向けて気合い入ってるな、越前」
「まあ」
大石先輩は単純に俺が早起きしたことを喜んでいるみたいだ。
また遅刻の日々に戻る可能性はあるので、少し申し訳なく思う。

「次からは強敵に当たるからな。頼りにしてるぞ」
「そういや、どこと当るんでしたっけ?」

聞いてないよな、と首を傾げる。
大石先輩は俺の言葉に可笑しそうに笑った。

「まだ決まってないだろ。今日の抽選会で決まるからな」
「越前。機能、俺が言ったこと忘れたのか?」
じろっと部長に睨まれる。まずい。

「えっと最後の方ふらふらで、ちょっと聞こえなかったかも」
「50周走った後も頑張ってトレーニングしてたからな」
大石先輩ナイスフォロー。
部長は仕方無さそうに溜息をついてる。

「俺と手塚で抽選会場に行って結果知らせるから。
今日の部活は皆で頑張ってくれよ」
「くじ引くんすか?だったら強いとこ引いて下さい」

例えば氷帝とか。
ストリートテニス場で会った猿山の大将。
やたら偉そうだったけど実力あるなら、シングルスで試合したい。

「シードはくじを引かないぞ」
「え?」
ぼそっという部長に反応して顔を上げる。

「都大会優勝・準優勝はシード扱いになっている。
だから強い学校と当るようにくじを引くことは出来ない」
「なあんだ」

がっかりした声を出す俺に、大石先輩が「おいおい」と苦笑する。

「初戦で強いところと当るのはキツイぞー。
負けたら敗退だからな」
「でもどうせ倒すならさっさとやった方がいいのに。
ねえ、部長?」

部長も試合するなら強い相手を望んでいるはず。
同意を求めると、予想と違う言葉を返される。

「どこでも構わない。油断せず行くだけだ」
「はあ・・・」

大石先輩と顔を見合わせてしまう。
部長はどこまでも真面目なんだよな。

それからとりとめのない話をしながら、部室へと到着する。

一年はまだ誰も来ていないので、コートの準備から始めた。


天気は快晴。
絶好の告白日和だと、思い込むことにする。
不二先輩が一人になったところを捕まえて、
「好きです」と告げよう。

「げっ、越前!?何でこんな早くにいるんだ!?」


やがてやって来た二年の先輩達が、俺を見て声を上げる。

「そういう日だって、あります」
不敵に、笑ってみせた。


チフネ