チフネの日記
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2004年06月13日(日) 不二リョ。

教室の隅っこでぼやっとしていた。
正確には、越前のことを考えていたんだけれど。
気を抜くと、彼のことばかり考えている僕は重症なんだろうか。

「フ・ジ!お客さんだよ〜!」
英二の声にはっと我に返り、丸めてた背中を伸ばす。
声がした方を向くと、英二がこっちこっちと笑って手招きしている。
「客って?」
英二の隣には誰もいない。もしかして担がれているんだろうかと思いながらも、席を立つ。
「どうも」
「越前君?」
「あ。おチビ、背中から出ちゃだめだって」
「そんなことして何になるんすか、それにチビ扱いされてるみたいでムカツク」
むぅっとした顔した後、すぐに僕の方を見て小さく笑った。
「どうしたんすか?不二先輩、何か固まってる」
「えーっとなんでもないよ。越前こそ、こんなところまでどうしたの?すぐ授業始まっちゃうよ」
三年生と一年生の校舎は離れている。
ということは、何か用事があってここに来たと考えるのが自然だろう。
「実は国語の辞書忘れちゃって。不二先輩、持ってる?」
「おチビったら忘れ物しちゃだめじゃん」
「英二、君だって人のことを・・・じゃなくて、うん、持ってるよ。ちょっと待ってて」
急いで席へ辞書を取りに行こうと背を向けた瞬間、ぐいっとシャツを引っ張られる。手の主は越前。
「越前?これじゃ辞書を取りに行けないんだけど」
「辞書というのは口実で」
「え?」
「ちゃんと持って来てます。ただ放課後まで先輩の顔を見れないのが我慢出来なくて、ここまで来ただけっす」
「うわぁ。おチビったら素直」
「うるさいっす。いつまでいるんすか」
「不二呼んでやったのに・・・」
泣き真似しながらも英二はその場から離れて行く。
僕はといえば、彼の言葉にめんくらって動けないままでいた。
「越前、さっきの意味なんだけど」
「言った通りっすよ」
平然と彼は言う。
「不二先輩に会いたいから来ました」
僕と彼の決定的な差はここにある。
会いたいと思っていてもそれを悟られるのが悔しくて動けない僕と、考えたまま惜しみなく行動する彼。
「そう、ありがとう。僕も会いたかったんだ」
僕がそう言うと、彼は嬉しそうに笑う。
「それじゃ」
「え、もう帰るの?」
「今から戻らないと間に合わないんで」
満足したし、と手をひらっと振る彼の腕を思わずつかんだ。
「先輩?」
「さぼっちゃおうか」
思わず、口走った言葉は半分冗談で半分本気。
越前の出方をみると、
「やめとく」あっさり断られた。まぁ、当然か。
「それじゃ部活が終わった後、僕の家に来るのはどう?」
「ファンタ付きで」
「OK」
今度こそ彼は教室に帰っていく。
また授業中も越前のことばっかり考えそうだ。
放課後までなんて待ち遠しいことか。


チフネ