チフネの日記
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2004年06月05日(土) 天使不二と王子 5

斜め前に座っている越前は、ハンバーガーに被りつきながら時々僕の方をちらちら見ていた。
「―――で、おチビ聞いてる?」
「は!?えっと何だっけ」
「・・・俺の話なんかどうでもいいんだ」
いじけた話し方をした英二に、越前は困ってしまったようだ。
「誰もそんな事言ってないっす」
「じゃあ、さっき何の話をしてたか言える?」
「えっと、それは・・・」
「ほら、やっぱり!」
おチビが冷たいーとまた英二は騒ぐ。
越前が話を聞いてなかったのは、僕の方に気を取られていたからだろう。
そういう僕も越前のことを観察していて、英二の話はちっとも聞いていなかったのだけど。
「俺は悲しい・・・。こんなにもおチビのことを可愛がっているのに」
まぁまぁと桃が宥めても効果はないようだ。
越前はどう声を掛けたら良いか戸惑っているかのようだ。
その顔がなんだか可愛らしく見えて、僕は思わずくすっと小さく笑ってしまった。
「何すか」
どうやら聞こえていたらしい。
ハッキリ睨みつけている越前に、「なんでも無いよ」と肩を竦めてみせた。
「英二、お店の中だから少し静かにね。
越前だって別に英二の事を嫌いって訳じゃないんだから。
ただ、ちょっと食べる方に集中していただけだよね?」
「別に、俺はっ」
がたっと席を立ちかける越前に、英二も桃もどうした?って顔を向けた。
「・・・・・・スミマセン」
越前は二人の視線に気付いて、また椅子に座り直した。
「あー、その」
静かになった座を取り直すように、英二はぽんと手を叩く。
「おチビ、そんなにお腹減ってんのならナゲット一個あげる」
「・・・ども」
英二が差し出した箱に越前は手を伸ばし、ナゲットを一つ取り出した。
「食べ終わったら話聞いてくれる?」
「うっす」
頷いて、むしゃむしゃナゲットを頬張る。
英二も桃もほっとして、自分の分に手を伸ばす。
また越前はちらっとこちらを見て、英二の方へ顔を向けた。
それ以降、越前は僕に視線を向けることはなかった。

「英二は越前のこと、気に入っているね」
桃の自転車に乗って帰る越前の後姿を見送って、
僕と英二は家へと歩き出した。
「だって小さくて可愛いじゃん。ちょっと生意気だけどさー。
懐かせたら嬉しいよね、きっと」
「野生動物扱い?」
「あはは、近いかも。手のかかる弟みたいなもんかな」
「ふぅん」
そういえば英二は末っ子であることを、何度も愚痴っていた。
弟か妹が欲しいとも。
「不二は?おチビをどう思う?」
「僕は・・・わからないな」
「何それ」
うーんと、英二は首を捻る。
「おチビって不二に関してはなんか変なんだよねー。
おかしなこと聞いてきたり」
「おかしなこと?」
「うん。不二が嘘をつくかどうかって」
あの時のことだと、気付く。
鳩の怪我を治したことを、最初から怪我していないと主張した。
「不二っておチビに何吹き込んだの?」
「人聞きが悪いな、僕は別に何もしてない」
「そうかあ?」
まだ疑っている英二の視線を無視して、少し足を速める。
不謹慎かもしれないけど、越前に関心を持たれているのは悪くない気分だ。
本当に面白い存在だね・・・・


「あの人ってなんでいつもニヤニヤしてんの」
「なんだ、お前急に」
「前から、あんな感じ?」
「人の話聞けよ。何言ってんだ」
「だから不二先輩」
「ニヤニヤしてるとか本人の前で言うなよ」
「で、どうなの?」
「・・・俺が入学した時も今と同じ感じだったな」
「ふぅん」
「不二先輩と何かあったのかよ?さっきから変だぞ」
「別に」
ただ見透かすような視線がうざいだけ。


チフネ