快晴。気温は平年並みであったが随分と暖かく感じる。
冬の陽射しはほんとうに有難いものだ。
見渡す限りの雀色。枯れ草が目立つようになった。
私も草のように生きているけれど憐れだとは思っていない。
根をしっかりと張って土と語り合っているような日々だった。
寒い冬を乗り越えてこその春。私は若草にだってなれるだろう。

夕方母から着信アリ。忙しい時間帯のことで無視してしまった。
正直言って特に声を聞きたいとも思わない。
やはり私は薄情な娘なのだろう。まるで鬼のようでもある。
少し距離を置きたいとも思っている。とても複雑な気持ちだった。
それなのに後ろめたくてならない。心苦しくてならないのだ。
もしかしたら優しい娘を演じようとしているのかもしれない。
そんな自分が嫌いでならない。とても愚かなことに思える。
本音を言えば私の誕生日に電話を掛けてきて欲しかった。
もしかしたらと夜まで待っていたけれどそれは空振りに終わる。
やっぱり忘れているのだなと思った。母らしいと言うべきだろうか。
53年前のあの日も私の誕生日を忘れていたのかもしれない。
ああ嫌だ嫌だ。こんなぐじぐじしたことばかり書きたくはない。
と、思っていたらまた母から着信があった。
夕方自分が電話したことをもう忘れてしまっているのだった。
出られなかったことを詫びればへらへらと笑い飛ばしている。
もう何が何やら分からなくなってしまって呆然としている今である。
訊きもしないことをしゃべり続ける母は
やはり寂しくてたまらなかったのに違いない。
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