朝のうちは小雨が降っていたけれど夕方には晴れる。
夕暮れ時には西の空が茜色に染まりか細い三日月が浮かんでいた。
まるでメルヘンの世界のようでうっとりと眺める。
ふと少女の頃のせつなさを思い出した。
恋しいひとも同じ空を見上げているのだろうかなどと。
そうして涙ぐんでしまったことなど懐かしくなる。
もう二度とそんなことはないだろう。私は恋を忘れてしまった。
職場は休みではなかったが私だけお休みを頂いていた。
心苦しさはあるけれど自分時間を優先したいと思う。
週一のカーブスはもはやリハビリにも等しく欠かせないこと。
終わり次第に職場に駆けつけることは出来たけれど
義父が無理をしなくても良いと言ってくれたのだった。
おかげで午後は心身ともにゆったりと過ごすことが出来る。
3時頃からおでんを煮込んだ。家中におでんの匂いが漂う。
それはとても幸せなあたたかい匂いであった。
おでんを弱火で煮込みながら夫と大相撲を観る。
私は炎鵬と照強のファンなのだけれど
今場所の照強はまだ一勝も出来ず憐れでならなかった。
今日も宇良に負けてしまって涙が出そうになる。
「ぎりぎりの崖っぷちなんだ」と夫が言う。
精神的にどれほど追い詰められていることだろうと案じずにいられない。
それでも照強は豪快に塩を投げ続けている。
決して自信があるわけではないだろう。
けれども気合は籠っている。それが唯一の救いのように思えた。
崖っぷちに立たされた時、人はいったい何を思うのだろう。
絶体絶命だと悲観し希望を見失ってしまうのだろうか。
私は違うと思う。それはむしろ試されているのではないか。
もし限界だとしても進む道は必ずあるはずなのだ。
自ら飛び込むことはしない。そうして自分を信じること。
勇気を持って運命に立ち向かっていかねばならない。
負けてもいい。勝つためだけの人生なら私は要らない。
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