小春日和が続いていると急に冬将軍がやって来そうな気がする。
私はまだ寒さを怖れているのだろうか。自分でもよく分からない。
覚悟はしているつもりだけれど少し臆病になっているようだ。
ご近所の奥さんから頂いていたコキアがすっかり枯れてしまった。
「枯れたら捨ててね」と言われていたのだけれど
潔くそれが出来ずに未だに玄関先に置いたままだった。
根があるのだから春になったら新芽が出るのかもしれないとか
来年の秋には紅葉するかもしれないとか未練がましく思っている。
たぶん私は捨てない。ささやかな希望を持ち続けていたい。

土曜日曜と二日続けて母から電話があった。
ちょうど私がこの日記を書いている時のこと。
着信履歴を見て私が掛けていたと思い違いをしたようだった。
「それは先週の事やろ」と言ったら「ありゃそうかね」と応え
「私って呆けちゃったのかしら」とひょうきんな声を発する。
介護士さんに屋上へ連れて行って貰ったのがよほど嬉しかったらしく
二日続けて同じ話をする。「昨日も聴いたけん」とつい言ってしまった。
すぐにしまったと思ったけれどもう後の祭りである。
何度でも耳を傾けてあげるべきだったと深く反省をした。
土曜日曜はリハビリも休みで介護士さんも最小限のようだった。
母にとっては誰もかまってくれない寂しい週末だったのだろう。
訊きもしないのに「ご飯が美味しい」「なんと幸せ」と言う。
それが少し切なかった。まるで寂しさを胡麻化しているよう。
母は沢山の人に囲まれていてもどうしようもなく孤独なのだと思う。
私は薄情な娘のままだった。今も母からの電話を待ってはいない。
ただ母を捨てることは決して無いと思う。
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