西の空にぽっかりと三日月が浮かんでいる。
なんだか微笑んでいるように見えて心が和む。
三日月に目と鼻と口があってにっこりと笑っている絵。
子供の頃に見た記憶があるのだけれどあれは何だったのだろう。
テレビのCMで見たような気がする。花王石鹸ではなかっただろうか。
子供の頃の記憶は曖昧で間違っていたらお許し願いたい。
そもそもテレビは小学一年生の時まで家に無かった。
東京オリンピックの年だったのだろうか父がやっと買ってくれたのだ。
「ひょっこりひょうたん島」「鉄腕アトム」などとても懐かしい。
小学5年生の頃だったか「青島幸雄のお昼のワイドショー」を見ていた。
やたらと「セックス」と云う言葉が飛び交い何の事だろうと思った。
当時の官舎は父の職場の事務所と併設されていて
父と一緒にS君と云う23歳位の若い青年が働いていた。
なんと私はそのS君に「セックスって何?」と訊いてしまったのだ。
S君は顔を真っ赤にして狼狽え「お母さんに訊いたや」と言って
逃げてしまった。私は子供心にすっかり訳が解らなくなった。
そうして母に訊いたらきっと叱られるだろうと察したのだった。
それを知ったのは中学生になって間もなくのこと。
部活中に3年生の先輩がまるで内緒話のようにして教えてくれた。
その衝撃のなんと大きかったことだろう。とても信じられないと思った。
それまで私はコウノトリが赤ちゃんを運んでくれるのだと思っていた。
私も弟も確かに母から生まれたけれど男女のことなど知る由もない。
その上に母のお腹が割れて生まれたのだと信じていたのだった。
今のように学校で性教育をするような時代ではなかった。
生理のしくみも理解できず「月のもの」がくれば憂鬱でならない。
どうして女の子だけこんな辛い思いをしなければいけないのだろうと。
中学時代は何度も転校を繰り返しやっと海辺の町の学校に落ち着いた。
親友になってくれたSちゃんが泣きながら我が家に来たことがある。
上級生の男子に浜辺に呼び出されいきなりキスをされたのだそうだ。
「にんしんした」と彼女は叫ぶように泣き続けていた。
私はとにかく彼女に性教育を施すことに専念せざるに得なかった。
私は19歳で結婚しSちゃんは確か21歳ではなかっただろうか。
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