ゆらゆら日記
風に吹かれてゆらゆらと気の向くままに生きていきたいもんです。

2022年06月18日(土) 青春の記念日

夕方近くなり久しぶりの青空。夕陽を仰ぎつつこれを記し始めた。


今日は青春の記念日。もう53年も昔のことである。

少年は皆から「直ちゃん」と呼ばれていた。

背が高く坊主頭で決して美少年ではなかったけれど

成績優秀でリーダー格でもありなんと云っても人気者であったらしい。

「らしい」と表現するのは私がまだ彼のことを殆ど知らなかったからだ。


生まれてからずっと山村育ちの私は転校生であった。

海辺の町。潮風の匂い。そして乱暴にも聞こえる土佐弁。

途惑うことも多かったけれどその町はとても新鮮味で満ちていた。


まだ親しい友達も出来ないでいる頃、隣のクラスの男子がやって来て

お昼休みに裏庭に行くようにと半ば命令口調で言うのだった。

もしかしたらいじめられるのかなと思った。

転校生は目立つ為いじめの標的にされることがよくある。

逆らってはいけないと意を決しおそるおそる裏庭に行ったのだった。


少年はとても堂々としていて自信に溢れているように見えた。

そうしていきなり「俺はおまえが好きや」と言うのだった。

「私も」などとどうして言えるだろう。ほぼ初対面にも等しい。

気がついたら一目散に逃げだしていた。

胸が張り裂けそうなくらいどきどきしていたことを憶えている。


直ちゃんは7月生まれ、私は12月生まれだからまだ12歳の頃のこと。

今思えば随分とませた子供だったのだと思う。

一目惚れにしても告白するような年頃ではないのではないだろうか。


それ以来、直ちゃんはちょくちょく私にちょっかいを出しに来た。

休み時間を待ってましたとばかりに隣のクラスから顔を見せに来る。

私が英語の授業に付いていけないのを知って「教えちゃろか」と言ったり

なんと鬱陶しいことか。私は無視するのに必死であった。


その後も恋に発展することはなかったけれど

直ちゃんのご両親が相次いで急死してから私の気持ちに変化があった。

母性本能なのかよく分からないけれど「守ってやりたい」と強く思う。

誰かが側に居てあげなくてはいけない。それを自分の役目のように感じた。


高校時代に一度だけデートをしたことがある。

二人で高知城の近くの動物園に行った。

その時お城の石垣の間から可愛いらしいリスが飛び出して来た。

その光景が忘れられず今でも目に鮮やかに思い出される。


同窓会でもあれば必ず最後まで一緒にいる。

深夜2時を過ぎて屋台で一緒にうどんを食べたりもした。


直ちゃんは男なのに違いないけれど今もって色気は全くない。

それを言うと「失礼な!」と怒るけれどその顔が私は好きなのだ。

女友達も何人かはいるけれど「親友は?」と問われたら

私は真っ先に「直ちゃん」と応えるだろう。


二人とも65歳になり老いの不安も少なからずある。

けれどもそんな話は一切しない。ただありのままの今を生きている。


少年の日の6月18日を直ちゃんは全く憶えていないのだそうだ。








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