恵みの雨。春を告げるような優しい雨であった。
梅の花もしっとりと濡れより一層の風情である。
花に限らず植物たちはどんなにか雨を待ちわびていたことか。
そうして弥生三月の扉が開かれていく。
冬の背はせつなく少し肩を落としているようにも見える。
春の胸は希望でふくらみ夢を見ることを許されたようだ。
公立高校の卒業式。私達の頃から変わらない3月1日。
もう47年の歳月が流れたようだ。
いったい自分はどうなってしまうのだろうかと不安でならなかった。
私は妊娠7ヶ月に差し掛かろうとしていた。
お腹の子はそれは元気に動き回っていたのだった。
母乳がにじみ出るようになっていて制服の胸を濡らしていた。
本来なら卒業式どころではなかったのだろう。
思い出してはいけないことなのかもしれないけれど
どうして忘れ去ることが出来ようか。
どんなにか生まれたかったことだろう。
まさか母親に殺されるとは夢にも思っていなかっただろう。
なんの供養もしてあげれなかった母を永遠に憎んで欲しいとさえ思う。
今が幸せであればあるほど心が痛んでならないのであった。
誰にでも過ちはある。取り返しのつかない罪もある。
人生に「卒業」があるのだとすればそれは「死」に他ならない。
過去の罪を墓場にまで持って行く覚悟は出来ている。
肉体は消滅しても魂は永遠に生き続けるのだろうか。
「天国」に辿り着く前に私は罪を償わなければいけない。
地獄の閻魔様に泣き縋って赦しを乞うことだろう。
そうしてあの子の魂を捜す。きっと見つけて抱きしめてあげたい。
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