晴れの予報だったけれど陽射しは届かず。
夕陽も見られないまま日が暮れていった。
桜草の花がぼつぼつと咲き始める。
我が家の右隣のお宅は「花屋敷」でそれは沢山の花を育てている。
奥さんは花の事なら何でも知っている「花博士」であった。
「ますみ」という名の奥さんで「ますみ姉さん」と呼んでいるのだけれど
ご近所の年上の奥さんはみな「姉さん」と呼ぶのが常であった。
私も年下の奥さんから「みか姉」と呼ばれている。
なんだかくすぐったいような嬉しさを感じることが多い。
田舎の風習と言うのだろうかとても親しみを感じるのだった。
もうかなりのご高齢の奥さんでも「姉さん」なのである。
「おばあちゃん」などと言ったら失礼に当たるだろう。
昔嫁いだばかりの頃従兄弟の奥さんを「すみ姉」と呼んで
姑さんに酷く叱られた事が忘れられない。
まだ新米なのだから「すみ姉さん」と呼ぶようにと言われた。
けれども皆がそう呼んでいるのに私だけどうしてと思った。
いきなり呼び方を変えろと言われても急には変えられないものだ。
その後も私はずっと「すみ姉」と呼び続けている。
すみ姉もそのほうが嬉しそうだった。姉さんよりもずっと親しみがある。
私も未だ一度たりとも「みか姉さん」と呼ばれたことはない。
「みか姉」と呼ばれたほうが心地よくてずっと嬉しいのだ。
今日も洗濯物を取り入れていたらお向かいの奥さんが
「みか姉、乾いちょる?」と声をかけてくれた。
「うん、ばっちし乾いちょるよ」と言ったら
「今朝みか姉が干しちょったけん私も急いで干したがよ」と笑った。
それからお向かいのご主人に久しぶりに会って
「みか姉元気やったか?」そんな気遣いも嬉しくてならなかった。
みか姉は70歳になっても80歳になってもみか姉でいられる。
それがなんだか励みのように思えて長生きをしようと思った。
みか姉の夜は短い。まだ8時前なのにもう眠くなった。
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