| 2021年10月16日(土) |
追憶のなかの母 完(愛) |
記憶とは時に残酷なものなのだなと思う。
こうして書く場所を与えられ
遠い昔の記憶を辿りながら何度壁にぶつかったことだろう。
母を赦しているのかと問われてもはっきりと頷くことが出来ない。
自分も罪を犯しながら母の罪を責め続けようとする私がいた。
ひとはどうして幼い頃の記憶を失くしてしまうのだろう。
この世に生まれ確かに母に抱かれていただろうに
まるで神様に奪い取られたかのように記憶は消えている。
母の胸のぬくもり。乳房にも触れ乳を思う存分に口に含み
そのまますやすやと眠ったこともあっただろうに。
よちよちと歩き始めば手を叩いて喜ぶ母が居たはずなのだ。
愛情をいっぱいに注がれすくすくと成長していたことだろう。
そんな記憶をどうして残してくれなかったのだろう。
それさえあればと口惜しくてならない。
私が会いたくてならなかったのはきっとそんな母なのだと思う。
叶うはずもない事に苦しむ。とても愚かな事なのだと思い知る。
けれどももし母を失えばどれほどの悲しみが襲って来ることだろう。
私はそれが怖い。失って初めてきづく愛が怖いのだ。
母が選んだ道は間違っていたのかもしれないけれど
母には母の人生がありもはや運命としか言いようがない。
その運命の糸に操られるように私は私の人生を歩み続けて来た。
それが母あってこその道ならば感謝するべきだろう。
判っているけれどどうしても素直になれない自分がいる。
あの日母を頼るしかなかった時から45年の歳月が流れ
母はどうしようもなく老い私もその老いを追っている。
もう罪ほろぼしも終わったのだと母は思っていることだろう。
けれども私の中ではまだ終わっていない。
13歳の少女のままでいることが歯がゆくてならないのだ。
母を救うことが出来た時に私も救われるのだろうか。
心の底から赦すことが出来るのだろうか。
母が歩んだ道と私が歩んだ道が交差している場所にいて
未だ母の愛を求めようとしている私は「こども」に他ならない。
・・・・・・完・・・・・・・・
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