曇り日。時おり霧のような雨が降る。
気温は26℃ほどで過ごしやすい一日だった。
職場の敷地内の柿の実が色づき始めた。
数年前までは義父の母親、私には義祖母にあたる人が住んでいた家。
柿の木は2本あり義祖母の秋の楽しみでもあった。
百歳を超えるほどの長寿を全うしたのだけれど
晩年は寝たきりとなり酷い認知症になっていた。
私が窓越しに声をかけると「今日は学校は休みかい?」と問う。
「うん、今日は休みよ」と応えると「柿を食べたや」と言ってくれた。
穏やかでとても優しい義祖母だったことがとても懐かしい。
母とはずっと折り合いが悪く最後まで打ち解けることはなかった。
母の暴言は止まらず義祖母はいつも悲しそうな顔をしていた。
優しく接してあげたらきっと優しさが返って来ただろうにと
今更ながらに思うけれどもう取り返すことの出来ない過去のこと。
母は柿の実を食べたことがあっただろうか。
義祖母に無断で千切ったことはなかっただろうと思う。
いや、決して食べるものかと意地になっていたのかもしれない。
どうしても食べたかったら買って食べる。母はそんな人だった。
義祖母は母方の祖母と同じ歳だった。
それなのに自分の母親とどうして重ねられなかったのだろう。
母の心情は未だ理解できず私は思い出したように複雑な気持ちになる。
母は死ぬまで孤独でなければいけない。
ふとそんな非情な事を考える時がある。
そのくせ母に柿を食べさせてあげたいと思うのだった。
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