早朝には青空が見えていたけれどすぐに曇る。
夕方から本降りの雨になった。
今夜は虫の声も聴こえずひたすら雨音が響いている。
台風の影響が出始めているのかもしれない。
孫達の小学校では運動会の総練習があったらしい。
よほど疲れたのかめいちゃんは宿題が終わるなり寝入る。
今夜はダンス教室もお休みにしたようだ。
昼間職場でタイヤ交換に来てくれたお客さんが
義父が飼っているメダカを少し分けてくれないかと言う。
義父はあまり快い返事をしないまま渋々と分けてあげていた。
まるで我が子のように可愛がっているメダカだけに
たとえ一匹でも手放したくはなかったのだろう。
その気持ちが分かるだけになんとも複雑な気持ちになった。
けれどもお客さんの頼みを断るわけにもいかなかったのだ。
お客さんはとても喜んでいたけれど義父は悲しそうな顔をしていた。
義父と母のあいだには子供がいない。
母はまだ20代の頃に卵巣を摘出していたのだった。
確か私が8歳くらいの時だったと記憶している。
何か婦人科の病気で入院していた時があって
父が「もう弟も妹も要らないな」と私に釘を刺したことがある。
いったい何のことだろうと子供心に不思議に思ったことだった。
母がもう子供を産めない身体になったことを知らなかった。
知ったのは高校生の時ではなかっただろうか。
父が「あいつらにはもう子供はできん」と教えてくれたのだ。
その言葉には母に対する憎しみも含まれていたのだろうと思う。
「忘れてしまえ」それが父の口癖でもあった。
第二の人生を歩み始めた母と義父は
どんなにか子供が欲しかったことだろう。
特に義父はその思いが一層強かったのではないかと察する。
運命だと一言で済ませるにはあまりにも辛い現実だったかもしれない。
毎朝のようにメダカに声をかけ穏やかに微笑んでいる義父。
餌にも拘り卵をたくさん産むという餌を与えている。
今日は仕方なく3匹のメダカを手放してしまった。
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