曇り日。時おりぱらぱらとにわか雨が降る。
そんな梅雨らしさ。空もすっきりとしたいことだろうに。
明るく朗らかに。人もそうでありたいけれど
なかなか思うようにはいかないもの。それが生きるということ。
「人生楽ありゃ苦もあるさ」まるで水戸黄門の主題歌である。
職場の敷地内に小さな鉄工所がありその経営者のKちゃんが
野良猫に餌をやり続けていると聞きその様子を見に行く。
どうやら鉄工所の奥まったところに住み着いているようだ。
子猫が生まれており親猫が昆虫を捕まえて来ては育てていたよう。
あまりにも可哀想に思って最初はお弁当を少し残していたけれど
最近では食パンを買って来て毎日与えているのだと言う。
そうなればもはや野良猫ではなく飼い猫と同じだけれど
せめて子猫が大きくなるまでは面倒を見てあげたいのだそうだ。
その気持ちが良くわかるだけに私もこっくりと頷いていた。
20年程前だったろうか、私も子猫を保護したことがある。
廃車置き場の車の中で「みーみー」と鳴いていたのを見つけたのだった。
「事務所で飼いたい」と母に言ったら酷く叱られたことを憶えている。
飼うなら家で飼いなさい。飼えないなら情けをかけてはいけないと。
それは心を鬼にしなさいと言っていたのだろうと思う。
仕方なく見つけた場所に連れて行きそっと置き去りにして来た。
鳴き声は数日間続きある日からぷっつりと聴こえなくなった。
きっと親猫が帰って来たのだろうと母が言う。そう信じなくては
心がはち切れそうに痛んで苦しくてならなかったのだ。
今日はそんな昔のことを思いだしながらなんだかほっとしていた。
確かに情けをかけてはいけないのかもしれないけれど
Kちゃんのように見守ってあげることはかまわない。
そのうち職場の庭を走り回るようにもなるだろう。
そんな姿が目に浮かびほっこりと嬉しかった昼下がりのこと。
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