朝の肌寒さもあと少しだろうか。4月も残り少なくなった。
5月の声を聞くともう初夏と言っても良いのだろう。
「八十八夜」「立夏」と季節が変わろうとしている。
山里の職場に向かう朝の道。
国道から県道の山道に差し掛かった処で
まだ20歳代だと思われる若いお遍路さんに会った。
金剛杖と右手にはごみが入っていると思われるビニール袋。
咄嗟に車を停めて「ごみを預かりましょうか」と声をかける。
コロナ禍の中コンビニのごみ箱が撤去されてからほぼ一年になる。
食料を調達することの多いお遍路さんにはなんと不便な事だろう。
ずっと気になっていたので咄嗟に声が出たのだと思う。
お遍路さんは快く袋を手渡してくれて両手を合わせてくれた。
その手首に水晶玉のような数珠がありはっと胸が熱くなる。
なんとなくだけれど家族が持たせてくれたのではないだろうか。
そう思うと私も一気に母親のような気持になってしまった。
「延光寺さんまでは何時間位かかりますか?」と問われ
車だと一時間程の距離なのだけれど歩くのはとてつもなく遠かった。
峠路を越えるだけでも辛い道のりになることだろう。
「少しでも車で送りましょうか」と伝えると
「大丈夫です。歩けます」と頼もしい笑顔を見せてくれたのだった。
後ろ髪を引かれるようにしながら私は峠道に向かう。
バックミラーに映った青年はしっかりと両手を合わせてくれていた。
ほろりと涙が出そうになる。これも一期一会なのだろうか。
仕事を終えて帰り道。国道に出るまでずっとその姿を探したけれど
その青年お遍路さんの姿はどこにも見つからなかった。
山里でひとやすみしているのかもしれないと思ったり
若者の足だものとっくに延光寺に着いているかもと思ったり
挙句には明日の雨が心配になったりもしたのだった。
どうかどうか無事に結願出来ますように。
祈ることしか出来ない夜になってしまった。
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