まるで冬の名残りのような西風が吹き荒れる。
土手にはあざみの花が咲き川辺には野ばらが咲き乱れ
こんなにも確かな春なのにと思わずにいられなかった。
朝のうちにあやちゃんと一緒にお大師堂へ。
まだ朝ご飯を食べていたのに「待って」と言ってくれる。
二人きりでお参りに行くなんて何年ぶりだろうか。
幼い頃のことを話しながらまるでタイムスリップしたようだった。
二人して般若心経を唱える。あやちゃんは出鱈目ではなかった。
私の後を追うようにそれはたどたどしいけれど最後まで唱える。
信仰心などと大それたことではないのだけれど
子供の頃からお経に親しむのはとても良いことに思えたのだった。
お供えのおせんべいをふたつ頂く。ひとつはめいちゃんにと。
優しいお姉ちゃんに育ってくれたことが嬉しくてならない。
10時には川仕事へ。海苔の生育は最悪と言って良いほど芳しくなく
漁場に行ってみないと収穫できるかどうかわからなかった。
準備はして行ったものの海苔の様子を見るなり「これは駄目だ」と。
例年なら最後の追い込みに励んでいる頃で残念でならない。
けれども二人とも嘆くことはしなかった。あえて笑い合うほど。
無いものは仕方ない。どんなに嘆いても何も変わらないのだ。
今年の収穫量は昨年の3分の1にも満たない。
過去の最盛期に比べても10分の1程に落ち込んでいる。
これでは家計を支える収入も絶たれることになってしまう。
それでもなんとしても乗り越えて行かなければいけない。
きっと試されているのだろう。それならば試して頂こう。
そんな強気がまだ私に残されているのがまるで奇跡のようだった。
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