午後からぽつぽつと雨が降り始める。
「春の雨は優しいはずなのに」歌っていたのは小椋圭だったか。
圭という字が間違っているかもしれない。今はよく思い出せないでいる。
佳だったような気もするのだけれどとにかく「けい」には違いない。
めいちゃんと保育園に行く朝もあと二週間ほどになった。
今朝は紫陽花の新芽をふたりで眺める。なんと鮮やかな緑だこと。
花の季節にはもう一年生になっているのかと思うと感慨深い。
「がっこうからもみえるよ」と「そうね」と頷き微笑んだ朝のこと。
仕事を少し早めに終らせてもらって母の入居料の支払いに行く。
ちょうどお世話になっているケアマネさんに会えて良かった。
母がリハビリ室に居るとのことで思いがけず面会を許される。
車椅子を上手に操り私に近づこうとする母を介護士さんが制止した。
やはり3メートルの距離が必要。手を握り合う事は叶わず。
髪がかなり伸びていて母もさっぱりとしたいだろうと気になる。
施設に定期的に来てくれている理容師さんでは絶対に嫌だと言う。
昔から行きつけの美容院へ連れて行ってあげたくてならなかった。
そんな私の気持ちをよそに「大丈夫よ」とあっけらかんとした顔。
髪が伸びれば括れば良いしリボンだって付けられるからと笑う。
そんな母の笑顔にどれほど救われたことだろう。
私の忙しさを察した母の精一杯の優しさではないかと思った。
今年の桜も母には見せてあげられないのか。
どうしようもなくせつなさが込み上げて来る。
母に春を届けてあげたい。あふれんばかりの春の光を。
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