| 2020年08月08日(土) |
ちいさな秋の風だった |
厳しい残暑になったけれど吹き抜ける風に
ふと秋の気配を感じるようになった。
ヒグラシの声も聴く。それはなんだか物悲しくて
忘れていたせつなさをふと思い出させるように鳴く。
思いがけず母に外出許可が下りてやっと美容院へ。
施設には定期的に理容師さんが来てくれているけれど
母は頑なに拒み続けもう限界になっていたようだ。
コロナ禍にも関わらずよく許可が下りた事だと思う。
聞けば「今しかない」と判断してくれたようだ。
この先また市内に感染者が出る怖れもあってのこと。
行きつけの美容院へ行った母のなんと嬉しそうな顔。
肩に付くほど長くなっていた髪をさっぱりと短くしてもらう。
鏡を見ながら「このおばあさんは誰?」とおどけてみたり
私が写真を撮ろうとしたら「葬式用にするのか」と気を損ねる。
だから写真は諦めてしまったけれどそれは可愛い母の姿だった。
心でシャッターを押す。なんだか忘れたくない気持ちでいっぱいになる。
つかの間の事ですぐに施設へ送り届けなければいけなかった。
玄関にケアマネさんが来てくれていてちょこんと車椅子へ座る母。
千切れんばかりに手を振ると母も笑顔で手を振ってくれる。
また会える日もあるだろうになんだか今生の別れのように感じた。
そんな覚悟も必要なのかもしれないとふと思わずにはいられない。
風が吹き抜けていく。夏のようでありながらちいさな秋の風だった。
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