夜が明けるなりの蝉しぐれだった。
朝から蒸し暑かったけれどそんな夏らしさも好きだなと思う。
早朝、久しぶりにお大師堂へお参りに。
以前は毎日の日課だったのになんと疎かにしていることか。
日捲りの暦を今日にしてゆっくりと手を合わす。
花枝を活け替えて手水鉢の水も川の水を汲んで来た。
汗が滝のように流れる。なんと心地よい汗だろうか。
ちょうどお参り仲間のいとこがやって来て
しばし語らう。じいちゃんのことも気遣ってくれてありがたい。
「たまには来いよ、気分が落ち着くだろう」と言ってくれた。
ほんとうにその通り。朝からとても清々しい気持ちになれた。
それから病院へ向かう。5分でも早く会いたい。
じいちゃん機嫌よく笑顔で迎えてくれて嬉しかった。
娘夫婦と孫たちも来てくれてにぎやかな病室。
あやちゃんがじいちゃんの頭を見て「ハゲちゃびん」と。
みんなで笑い合う。あやちゃんの一言に救われる思い。
帰る時にはふたりとも小さな手で握手をしてくれて
じいちゃんは名残惜しそうに目を細めていた。
昼食はカレーではなかった。「どうして?」と納得がいかない。
献立表を信じていたのに急に変更になったのだろうか。
「おまえが楽しみにしていただけだろう」と笑うじいちゃん。
最初から分かっていればコンビニでカレーを買って来たのに。
午後少しお昼寝。私もソファーでうたた寝をする。
休める時にと思う。病院通いは少しも苦にならないけれど
私が元気でいなければとあらためて思ったりした。
30分程寝ただろうか。じいちゃんの頭痛がまた始まる。
ナースコールをしたらすぐに看護師さんが鎮痛剤を持って来てくれた。
傷口の痛みではなく頭のてっぺんあたりがズキズキと痛むのだそう。
原因を知りたい。いったいいつまで痛みが続くのだろう。
薬が効いて来たら楽になるからと「もう帰っていいぞ」と。
今日も後ろ髪を引かれるようにしながら病室を後にした。
峠はもう越えている。もう少しなのだと自分に言い聞かす。
明日はまたあしたの風に吹かれましょうか。
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