眼花、井に落ちて水底に眠る
坂瀬

日記&BLの個人的感想。ネタばれ基本。まずは下のリンクのHOMEへ。


 小説・meet,again:一穂ミチ

ボーイズ小説・meet,again(ディアプラス文庫)一穂ミチ

スピンオフ。大学の生協でバイトする受は飲み会でそこの学生である攻と知り合う。つかず離れずの関係を続けていたが、ある時攻の家の事情を知り…。
雑誌掲載とその後の書き下ろし。雑誌で気になっていたので買った。悪くないにちと足りない。
受は大学生協でバイトしている。実家は砂時計屋で将来は砂時計の職人になる予定。母親は中学二年で交通事故死。人の悪口を聞くのが苦手。平凡。家事は一通り出来る。
攻は大学生。理工学生から院に進み物理学部で博士課程を取った。優秀。一度本を読むと覚えてしまう。家はそれなりに裕福。一卵性の双子の兄弟がいた。いつも涼しい顔。汗もかかない。喜怒哀楽の派手な表出がない。穏やかな抑揚。誘われれば誰とも寝る。執着しない。生きるのに飽きている。完全なシンメトリーの顔。きれいな顔。
「雪よ林檎の香のごとく」スピンオフ。
ネタバレ全開かも。


「百匹の羊を飼っている人の一匹の羊が迷子になったが、飼っている人は見捨てず、99匹を置いてでも探しに行く」という聖書の有名な説話があるが、例え大勢の中の一匹が迷っても平等の愛で見捨てないみたいな意味だと子供の頃に本で読み、どんな小さな子(羊)でも見捨てないんだーと素直に思っていたのだけれど、成長するにつれ、残された羊たちの方が次第に気になるようになった。
兄弟だった誰かが突然居なくなる。親のように慕っている相手がそれを探しに行く。同じように暮らしてきた兄弟がどんな心細い気持ちでいるか考えると心配で、それを決然と探しに行ってくれる慕っている相手は頼もしい。それがすぐ見つかれば喜ばしい話だけれど、なかなか見つからず何年も探し続けて、慕っている相手が帰ってこない(或いは定期的に帰ってくるがすぐ探しに行ってしまう)場合、残された羊たちはどんな気持ちなんだろうと考えるようになった。
仲間は心配。慕っている相手からも愛されていると分かっている。食べ物もある。でも慕っている相手から放置されている。残された羊はどんな気持ちなのか。
この作品を読んですぐこの長年の疑問を思い出した。
攻には一卵性双子の兄弟が居て彼は5歳の時に失踪する。それ以来母親はずっと子供を捜し続けて滅多に戻ってこない。でも攻を蔑ろにしているのではなく愛情は強い。
衣食住は与えられても両親に愛されていなければそれを理由に不満を口に出来るけれど、両親は居ないけど確実に愛されていると分かっていて、かつ兄弟が大変な状況なら不満は口に出来ずに苦しいだろうなーと思った。
受の母親は不思議な力があり、居なくなった人や物、人の気持ちを当てることが出来た。攻母も子供の行方を捜して欲しいと受母の元を尋ねた事があり子供の頃一瞬だけ攻と受は出会っている。
攻は「雪よ」の時から壊れた胡散臭いキャラの片鱗はあったけれど、メインになったらぶっ壊れ具合に拍車がかかっていた。
攻は片割れが見つかるまで(何らかの終わりが見えるまで)取り敢えず生きていようと日々退屈している。実際にいたら近寄りたくはないキャラで、好きになってしまった受は苦労しそうだと思った。
話を読んでいると転た寝をしているような気分になる。世界全体が薄いベールに包まれているような感じ。なので結構えげつない設定が出てきても、遠く離れた場所の出来事のようにダメージが少ない。
攻と受が出会って恋愛が成就するみたいなパターンではないので、そっちを期待すると肩すかしを食らうかも。
受は恋愛感情と共に情みたいなものも攻に感じているけれど、攻は受に恋愛感情を持っているというよりは、この世に引っかかっているためのフック扱いをしているような。恋愛するほどこの世に重きを置いていないというか精神が発達していないというか。でも最後には軽い執着も見せていたので多少成長しているのか。出来上がった後もまだ受が別の人間とHしているところが見たいのか聞いてみたい。
深夜の映画館で映画を見ているエピが好き。うつらうつらしているリズムがこの作品を読んでるリズムと被った。
最後ようやく目が覚めて時間が動き出すみたいな描写と、受の砂時計が象徴的で設定が凝っていて気に入った。
長らくの疑問の答えの1つが出ていたので更に評価が上がった感じ。
攻はカミオカンデで働いているのかな。一度行ってみたいのよね。
Hはそれなり。最初はセフレっぽい。
次も地雷で無い限り買う予定。
スピンオフ。砂時計。事件。攻が別の相手と寝ていた描写有り。博士課程学生×生協バイト。出来上がったのは26歳ぐらい。


2012年01月31日(火)
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