眼花、井に落ちて水底に眠る
坂瀬

日記&BLの個人的感想。ネタばれ基本。まずは下のリンクのHOMEへ。


 小説・箱の中/檻の外:木原音瀬

海猿2を観た。
ドラマを観ていなかったので、いきなり結婚する話になっていて驚いた。大型船の事故をメインに1本だけなのは今ひとつ。こういうパニック物は途中で息抜きのシーンを挟んで緊張感をほぐすエピソードが欲しいのだけど、事故を冒頭からもってこられると、下手に笑いが出せないし息苦しい雰囲気で終始する。同じ精神状態が続くとメリハリがないように見える。緊張の合間に泣かせの部分を入れて緩急を入れたのかもしれないが、今ひとつ。1は割と面白いと思ったんだけど。ドラマと通して観るとまた違った感想を持つかもしれない。



ボーイズ小説・箱の中 檻の外(ホリーノベル)木原音瀬

痴漢の冤罪で実刑をくらい刑務所に入った受は、そこで人を殺して服役中の攻と出会う。最初は馴染めなかったが…。
雑誌掲載とその後の書き下ろし。いつも買っている作家さんの新刊なので買ってみた。萌えは無かったが、話としては悪くないプラス2。
今更読んだのでまとめて。
受は元市役所勤め。30才の時に痴漢の冤罪を受け刑務所に入る。学生時代は皆勤賞。真面目でボランティア活動もしていた。本が好き。不細工ではないが平凡な顔立ち。小心者。出所後は小さな会社の経理をする。
攻は母親に言われるまま男を刺し殺人罪で刑務所に入る。幼児期は育児放棄され愛情をかけて貰えず育つ。根本的な考え方や常識が欠落している。背が高い。表情が乏しい。目鼻立ちが整い間違いなくハンサム。絵が上手く最終的にはイラストレーターになる。
箱の中
「箱の中」は受視点。刑務所内での攻との出会いから受が出所した後、攻が出所する所まで書かれている。
書き下ろし部分の「臆病な詐欺師」は、中年の探偵視点。攻が出所して6年後。攻は働きながら受の居場所を探している。探偵に依頼して探偵が探し当てるまで。最後探偵は年下の同僚に告られていた。
檻の外
「檻の外」は受視点。攻と再会し戸惑っているところ娘が誘拐され殺される。受が嫁と離婚して攻と一緒に暮らすようになるまで。
「雨の日」は攻視点。蜜月の二人の一こま。一番いちゃいちゃしているように見える。
「なつやすみ」は受の息子視点。小学三年生だった受の息子が父親の顔が見たくて、二人の暮らす家に行き夏休みを一緒に過ごす話。その息子が成長していき攻が亡くなるまで。
今更なので通しで読んだ感想を。
一言で言えば、汚泥に散らばるガラス玉や貴石を見つけて綺麗だと感動する話だった。
全編通して人間の嫌な出来れば隠しておきたい部分がこれでもかというぐらい晒され見せつけられる。重くて暗い負の感情が渦巻いている。それに巻き込まれる受と攻だが、攻の受を求める幼いが純粋で単純な気持ちと、それを戸惑いながらも最終的にはみんな受け入れる受の気持ちがクローズアップされている。
それはまるで汚泥の中に沈むガラス玉や貴石のようで、気を抜けば泥の中に沈みそうになるのだが、それが光を浴びて輝く瞬間を見て綺麗だと思ってしまう。泥が汚ければ汚いほど貴石の輝きが増す。この作家さんの作品を読むと、いつもこんな光景が頭に浮かぶ。
話ごとに視点が変わり、その人から見たメインカプという作りになっているので、キャラ個人の内面がずっと掘り下げられ続いている訳ではない。淡々と受と攻が出会ってから攻が亡くなるまでの話が書かれている。
攻の人間としての感情の発芽を助けてしまったために、受はその後つきまとわれる事になるのだが、受はそれを健気と思ったり怖いと思ったりする。腹をくくるまで長い時間がかかる。その態度にやきもきするのだけど、くっついた後は亡くなるまで静かで深い時間を二人で過ごしたのかと思える。
人生物に弱いので、キャラの生涯を書いてくれるとそれだけで感想は上がる。今回も攻の最期まで書かれていたのでほろりとしてしまった。攻が幸せとはどんなものであるのか知ることが出来て良かったと思う。
正直カプになってHもしているが萌えは殆どなかった。嫌いなカプではないのだが、淡々としていたのとキャラの人生が過酷なので萌えている場合ではなかったというか。
人間は弱いものだが、その弱さを見せつけているのと同時に仕方がないよ人間だものと、某みつおのように語られている気がする。
攻の受を求める真摯さに、いくつになっても真剣に求めれば手にれることが出来るかもしれないと希望が持てるような話だった。
Hは少ない目。いきなり突っ込まれてもなんとかなっている。受があまり気持ちよさそうな感じではなかった。大体せっぱ詰まっていた中でHしていた印象。
コンプ作家さんなので次もきっと買っている。
刑務所物。再生物。人生物。人殺し×痴漢冤罪。出会った時は攻が28才。受が30才。最終的には二人とも50代後半。攻の死にネタ。キャラが亡くなるまで書かれている。受は既婚者。子供が死ぬ。シリアス。

全員サービスの小冊子は「すすきのはら」受の母親が亡くなり遺品を整理する間に攻と養子縁組しようと決意する話。二人とも50代で共白髪になっている。淡々とした話。

ずっと読もう読もうと思いつつ棚上げになっていた本。トルコとタイを旅して未読のまま連れて帰ってきた本だが、日本で読んで良かった。いや何となく。

木原さん繋がりで、「ドントウォリーママ」のドラマCDの脚本が当たった。こういうものをじっくり眺めたのは初めてだったのだが、色々興味深かった。表紙に私の名前がフルネームで入っていたのは、やはり転売防止のためだろうな。ついでに表紙に4名分のサインが入っていた。

2006年12月24日(日)
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