眼花、井に落ちて水底に眠る
坂瀬
日記&BLの個人的感想。ネタばれ基本。まずは下のリンクのHOMEへ。
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ボーイズ小説・優雅で野蛮な熱情:かのえなぎさ/非常階段:六本木曜/昼となく夜となく:ひちわゆか
ボーイズ小説・優雅で野蛮な熱情(リーフノベル)かのえなぎさ
商社に勤める攻の元へ、王家の血筋が攻しか残っていないため国王として即位して欲しいとヨーロッパの小国の使いがやってきた。警護のため攻の部屋に来た軍人受と接する内に…
この作家さんの名前で読むのは多分2、3冊目。日本人×外国人で攻視点ぽいのが珍しいと、それだけの理由で買ってみた。感想はつまらない。
受はヨーロッパにある国の王室付きの軍人の家系。銀髪碧眼。のんびりしていて子犬のような性格。軍人ぽくないが体術はそれなり。攻は商社マン。祖父が外国人。強引で不遜なやり手のエリート。女にもてる。彫りの深い顔立ち。
何というのか。基本的に書ける作家さんだと思っていたのだが、キャラの不可思議な言動に首をひねりすぎて疲れた。ボーイズを読んで何が疲れるかというと、言動とキャラ描写の一致しない話を読まされるのが一番つらい。
例えば、攻の祖国のエリートっぽい役人が出てくるのだが、攻に向かって「うちらの国の王様になってくれへん?」と申し出る場所がファミレス。仮にも王様になって欲しいと思っている人物の前で、ケーキセットを食いながら頼んでいる。実は攻が王様になるのが嫌で嫌がらせのつもりでそんな行動をしているのかと思えば、後の説明ではそうでも無さそう。
脇キャラまで性格を立てたかったのかもしれないが、書ききれないのならページが限られているのだから、無駄に脇キャラを立てずに説明無くても想像出来るテンプレな部分を作って欲しい。些末な事に矛盾を感じて話にのめり込めない。その肝心の話もあまり面白いとは思えないのだが。
後攻が継ぐ国の説明がなかなか出てこずに、ヨーロッパの一地方なので、まあ白人の国なのだろうが、国力が無いから大使館員の人達がしみったれた金の使い方をしているのか考えてしまった。自分らのトップを迎えに来たわりに、攻の扱いが、そこそこの日本企業が取引相手に使う金より小さい気がする。別に湯水のように金に使って見せて欲しいのではなく、最低の礼儀ぐらい見せた方が良いのではと思っただけ。
攻はエリートにも頭が良い男にも見えない。受はお馬鹿さんな行動をとっているが、まだキャラ的に憎めなかっただけマシか。
「パートタイムな王様」を書いたらしいが、即位して受とHしてパート勤務になる前に終わっているので、即位前のしょぼい陰謀を書くぐらいなら、即位後パートタイムになった後の悲喜劇でも書いてくれた方が面白いと思えたかも。まったくパート勤務になっていない。
美味しい設定なのにことごとく無駄にしている感じ。
国王になる話。リーマンもの。攻視点。商社マン×軍人20代半ば?
ボーイズ小説・非常階段(アクアノベル)六本木曜
総合商社に入社したばかりの受は、非常階段で煙草を吸っていた時に同じく煙草を吸いに来たエリートっぽい攻と出会う。同じ会社の人間であるのは知っているが名前も交わさず、短い休み時間を二人で過ごすうち相手の事が気になりだして…
あらすじを見て気になり買ってみた。微妙と悪くないの間ぐらい。
受は綺麗な顔立ちでほっそりとしているが、学生時代は剣道をやっていた。母親が教育ママでストレスから煙草を吸うようになる。仕事の出来は普通ぐらい。素直で真面目な性格。顔立ちと性格以外は割と平凡な設定。攻はアメリカ支社で課長をやっていた出世頭。スーツの似合う体格の良いハンサム。4カ国語を話せるが口べた。仕事は出来るが強引なタイプ。新しい部門を立ち上げるため一時帰国していた。
単行本2冊目の新人さん。らしい。文章はわりとクセがある。洋物のファンタジーやらSFといった物語・映画を好きでよく読んでいる。みたいな匂いをさせた作風。攻のしたい仕事をいきなりSFの「ビーグル号」の主人公と照らし合わせて語られても面食らう人がいるのではないか。
3部構成で、1部は受視点で攻と出会って無理矢理やられ攻に去られるまで。2部はアメリカに帰った攻が1部の話を攻視点でおさらい。3部は再会してというパターンなのだが、同じエピソードを受と攻の視点でやられるとページの無駄に見える。全部相手への気持ちが書かれてしまい余韻も台無し。それなら神視点で両方の心情を書いて欲しかった。
2部の文章の構成が、1と3と異なり1つの話の中に急に番外編でも入っているような違和感があった。攻は元々思いこみが激しく一人で結論つけて鬱入ったりするタイプなので、その攻の視点という事で雰囲気が変わっているのかもしれないが、大げさな表現が続き、見知らぬ男の公園で叫んでいたエピソードは唐突すぎ。芝居がかっている。攻視点のわりに過去や背景が見えてこない。攻の変な性格だけはよく分かった。
色々首をひねる部分も多いのだが、キャラはのんびりした感じで嫌いではない。受は悪くないし、攻の性格は一言で言うと変。寡黙だか心の中ではお馬鹿な事を考えているタイプ。そのギャップはとぼけていて可愛いと思った。受と仲直りして2度目のHした朝、「ご両親に挨拶したい」とかいうのはかなり変。だが可愛くて好感が持てる。
話の構成はアレだが、もうちょっと書き慣れてくると面白いと思えるのかもしれないので、既刊も様子見で買ってみるつもり。
リーマンもの。アメリカ支社課長20代後半×新人22、23歳。変。
ボーイズ小説・昼となく夜となく(ビーボーイノベル)ひちわゆか
父親を迷わし家族を破滅させた宝石を食べる魔物・受を探していた攻は、執念でようやく探し当てるが、その魔物は考えていたような生き物ではなくて…
表題と読み切り。表題は興味が持てなかったが、読み切り短編が昔読んで気に入った作品だったので買ってみた。表題も短編もそれなりに面白かった。
宝石を食べる魔物という設定は2度目。金持ちだった父親が魔物に魅入られ破産して、辛酸を舐めた攻が魔物を捜し出し復讐するという話。良くできているとは思う。
文章の雰囲気は、『12時の鐘が鳴る前に』のように寓話っぽく大仰で芝居がかっているように見える。まずお話があり、それにキャラを当てはめている感じ。ちなみに『キャンディ』は『12時』のように寓話っぽいテイストではなく、普通の(と言っていいのかな)ボーイズぽい作りになっていると思っている。
芝居がかっていながら話を作るのが上手い作家さんだとは思うが、今回は微妙に説明やエピソードが中途半端な感じがして勿体ないと思ってしまった。
例えば、魔物・受の二面性のある性格とか。意外性があったのは最初だけで、その後特に二面性が何かに関係したわけではなく、健気白痴受でも十分だったのではないかと思ってしまった。
後、時代背景の説明が、数ページでいいから欲しいと思った。他の作家さんが書くエセファンタジーやSF設定のボーイズは、どういう社会かどのような価値観かさっらと説明を入れてくれる事が多いが、この話は特にそんな説明もなく、現代に不思議設定を混ぜたような話になっている。現代ものかと思って読むと「后妃」が出てきたり、どこの世界の話なのかと戸惑ってしまった。
どこまでが現代になぞってあり、どこまでがねつ造なのか最初に世界観の説明をしてくれないと、土台がしっかり座らないので、作品世界に入りにくい。
この手のシリアスでシニカルな寓話というか教訓めいた話は、雑誌の作品の中の一つにあればちょうどい彩りになると思うが、ピンで読むにはつらいのではないか。サラダにおけるハーブやプチトマトのように、サラダボールの中にちょこっとあればそのサラダは豪華に見えるが、それだけだとアクが強すぎてきついと思ってしまう。そんな感じの話。
この作家さんの芝居がかった雰囲気は普通のボーイズでは鼻につくが、不思議設定だと、大げさなくささもしかけの一部に見えて気にならなかった。
オチまでしっかり書かれており、小品秀作を読むような気分になれた。
読み切り短編は、雑誌掲載時から気に入って、切り抜きのまま置いていた作品。こういうシニカルな話は大好き。
この作家さんの鬼畜攻と健気受のラブラブ話を期待して読むと驚くかも。種族を超えた愛なので普通のカプみたいではない。
私はぬるいSFやファンタジーが好きだが、これは話が純粋に面白いというのと別に、種族が違うもの同士の繋がりみたいなものに萌えるから読んでいるというのがある。
昔読んだSF本で萌えた設定は、重力の違う星に生まれた夫婦という設定。片方は地球タイプの惑星出身の男だったが、もう片方が地球より三倍の重力で窒素の中で生活する両性体の生物で、いつも片方が頑丈な宇宙服を纏って、もう片方に寄り添っているというものだった。二人は一生、直接ふれあうことは出来ない。相手の心を好きになって夫婦になったという、たった数行しか出なかった設定だが、こういう関係が萌える。SFやらファンタジーでは、性別や年齢や種族を軽く超えて、友情や愛情を育んでくれるが読んでいて楽しい。
この作品は、吸血鬼のように不老で長い時を生きる生き物と人間の愛情(?)が書かれているので楽しめた。
2004年04月28日(水)
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