-A VAGRANT LIFE IN NEW YORK-
飯沼省



 そりゃ、彼女の家だもん

朝からスタジオの掃除。
最近、不精だったんで
相当汚い。
先日電話をくれたHiltonホテルの人が
午後から絵を見にくる予定。

スタジオの隣のビルが取り壊されて
新しいビルを建設中。
朝からかなりうるさい。
裏のパティオに出ると
工事現場が上から見渡せるんだけど
かなり大掛かりだね、これは。
地下をだいぶ深く掘り下げて鉄骨を入れてる。
何の店になるんだろう?
カフェか花屋だったらいいなぁ。
花屋ってのが意外でしょ?
この辺は繁華街で、浮浪者や乞食がウロウロしてるから
レストランやコンビニみたいのはダメ。
花屋だったら夜は営業しないから静かだし
なんとなく癒される感じがするでしょ。

午後2時、約束の時間ぴったりに
Hiltonの人が2人やってきた。
事前にウェブサイトを見てくれたようで
作品タイトルを挙げて
「あれはある?これはある?」と聞かれる。
どうやら人物画が気に入った様子。
が、ここで男性と女性の意見が分かれる。
主導権は女性にあるらしく
「OK,じゃぁ私が良いと思った絵を2枚挙げるから
どちらにするかはアナタが決めていいわよ」
という展開に。

どうやらこの二人、デキてるな。
ホテルのロビーにでも飾るのかと思ったら
彼女の自宅リビングに飾るための絵だった。
そりゃ、主導権は彼女にあり、でしょ。
彼の方は、「壁の色がアイボリーだから・・・」
とか何とかウンチクを垂れてるけど
彼女は聞く耳もたず。
10分くらい考えて、やっと2枚に絞り込んだ。
そして、最終的にやっぱり彼女の意見で
【November】を購入することに決定!

「これ、とても人気高いんだよ〜」と言うと
「ホラ、ごらん!」って感じで彼氏を見下す彼女。
彼氏の方も、買うって最初は言ってたのに
やっぱり買わないらしい。
ご機嫌ナナメのようだ。
そんな事は気にせず、彼女は色々と質問してくる。
すごく俺の作品が好きだと言ってくれて、
自分のことなのに
他人が褒められてる感じ。
ちょっとコソバユイ。
記念に一枚。








最近、絵を買ってくれたお客さんの
写真を撮ることにしている。
近頃、物忘れが激しくて、
顔も名前も覚えられない事が多いので
その予防と、自分のコレクションとして。
密かな楽しみなんだ、これが。



2004年06月13日(日)



 もってけドロボー!

明け方近く、
とりあえず【マンハッタン・ブリッジ】が完成。
この、と・り・あ・え・ずってのが現状を物語ってるけど。
やっぱダメだわ。
あ〜、何だろう?色かな。
構図が悪いんだろうか。
しばらく放っておくことにしよう。

ちょっと仮眠してから
【マンハッタン〜】と同じサイズのキャンバスに
今度は【ブルックリン・ブリッジ】を描き始める。
2つを並べると兄弟かテレコのように
いい感じになる予定なんだけど
【マンハッタン〜】が保留状態なだけに
完成形が見えぬままにペタペタ塗っていく。

その合間に、週末のDistilleryで販売する
新作のジクリープリントを額装する。
この作業、すげーめんどくさい。
プリントにするのは
基本的に売れてしまった絵が中心なんだけど
最近の作品で人気が高いやつを
今回はプリントしてみた。
原画を安売りしたくないのもあるし、
お客さんからプリントでいいから
手頃な価格で欲しいという要望が多いこともある。
そのプリントを購入した人の中から
将来、原画を買ってくれる人が現れたらいいな。
だからプリントは
なるべく価格を抑えてるつもり。
けど、たまにプリントも「高い!」って
言われることもあるんだよなぁ。
安いって!
ほとんど原価割れしてんだから。
巷では、プリントに何千ドルも値段付けてる
アーティストも少なくないのに
わずか$150なんだから。
さらに、週末のDistilleryでは
額付きで$120で販売するんです。
もってけドロボー!って感じですよ。

2004年06月11日(金)



 文学とは!?

この間、JCCCのGalaパーティーで
久々に作家のケリー・サカモトに会った。
日系人だけど全然日本語は喋れない。
SPINのJunoを通して3年くらい前に知り合ったんだけど
未だに彼女の小説を読んだことが無かった。
前に「絶対読むからさ」と約束していた
彼女の処女小説【Electoric Field】をおねだりして
送ってもらったので早速読み始めた。
ものの
やっぱ英語で読むのは疲れる。
知らない単語をガンガン読み飛ばしているうちに
すっかりストーリーも読み飛ばしてしまった。
そのうち
読書休暇を兼ねてリゾート地へ休暇にでも行けば
じっくり読めるだろう。
今は断念。

そもそも、今同時進行で読んでる本が5冊。
三島由紀夫の【荒野より】
Bitsの編集長からもらった【みうらじゅん】の本と
【爆笑問題】の本、
川端康成の【みずうみ】
赤瀬川 原平【老人力】
純文学とサブカルが微妙に良いバランスで
脳髄に刺激を与えてくれてます。

もうちょっと時間が取れたら
読むのに時間がかかる英語の原本も読んでみたい。
気になる本がいくつもあって
そのたび書店で購入しているけど
辞書片手に読書も辛いので
ほとんど本棚に直行させているのだ。
もうちっと英語力が付いたら
片っ端から読破する!予定。

秋元康が
「音楽は想い出の目次である」と言ったけど
それなら
「文学は人生の指針である」だろうか?
それとも
「文学は自己探求への手引書」だろうか。
大学の卒論にでもなりそうな壮大なテーマなんで
ここでそんな難しい話をしてもしょうがないが
少なくとも俺にとっては
未知なる思想との出会いの場。
出会いカフェのような存在である。
アートもそうだけど
文学もまた「難しい」と思われがちな芸術じゃない!?
そんなことはないのに。
どっちも人生を豊かにしてくれる意味では双璧だけど
どっちも自己と真正面に向かい合うことを要求する
芸術だから難しいと感じるのかもしれない。
だからオイラは「出会いカフェ」くらいの
軽いノリで楽しむようにしている。





2004年06月10日(木)



 夏が来る…

来るね、来るね、嫌な季節が。
夏きらいです。
ずっと20℃くらいの気温が続いたと思ったら
いきなり31℃。
速攻クーラーを引っ張り出して
窓に設置しました。
そう
オイラのクーラーは脱着式(て言うか?)なんです。
日本みたいな壁に穴空けて
超薄型のクーラーなんて無くて
こっちはもっぱら窓にハメ込むタイプが主流。
だから毎年夏になると屋根裏から
降ろしてきて、窓に設置するんです。
家賃は電気代込みなんで
ウチはもう、24時間フル稼働。
できたらクーラー持ち歩きたいくらい必需品。
ところが、さっき天気予報みたら
明日からまた20℃前半に逆戻りらしい。
まだまだ夏本番は遠いのだ。
っていうか、来なくていい。

2004年06月09日(水)



 恐ろしや日本人コミュニティ

耳が遠いし、吐き気がする。
ていうか、吐いた。
いつもなら、風邪くらいは気合で治すんだけど
今日一日を棒に振るのはイヤなんで風邪薬を買った。
大人2錠のところ、4錠飲む。
気持ち悪い・・・

すぐ吐けるようにゴミ箱を用意しながら
絵の続きを描く。
う〜ん、初めの構想から遠ざかっていくけど
いい感じの色になってきた。
以前からちょっとずつ描いている
マンハッタン・ブリッジ。
空に浮かぶ雲の処理に迷う。
タバコの煙チックな、渦巻き状にしたいんだけど
けっこう無理がある。
アクリルだと、油絵のような盛り上げ感が乏しい。

悩みつつ、昔の自分の作品ファイルを引っ張り出す。
ふと、目に留まったのが97年頃の作品。
日本にいた頃、富士山の絵を描いたことがあって
その時に追求していた雲のスタイルを
もう一度やってみることにした。
ゴッホが浮世絵を描いた感じ。
後々この雲が
今描いてる、タバコの煙に発展したんだけど。

夕方、ヒルトン・ホテルの人から電話があって
スタジオに絵を見にきたいという。
どこで作品を見たの?と聞くと、
今年初めにやった、某新企会の新年会
空港近くのインターナショナル・ホテルで見たという。
まじで?
もう半年も前じゃん。
その人は、ずっと俺を探してたらしいんだけど
名前も知らなければ
何人かも分からなかったらしい。
ところが
ある日本人を通じて偶然に
俺の名前と電話番号をゲットしたらしい。
その人は誰?って聞いたんだけど
全然知らない人。
何で俺の電話番号が出回ってんだ!?
恐ろしや日本人コミュニティ・・・


2004年06月08日(火)



 北野武のカッコよさ

深夜3時にトロントに到着。
風邪の具合も悪かったんで
寝ながら帰ろうと思ったけど
結局、カズと喋りっぱなしで
ほとんどノン・ストップで車を走らせた。
家に着いてすぐ撃沈。

昼頃起きたら、体中の間接が痛い。
とりあえずシャワー浴びて
パンでも食べようと思ったけど
食欲全然なし。
また横になって
【座頭市】を観る。
今更だけど、たけしカッコいい。
北野武と
ビートたけし
同一人物だけど別人。
94年の大事故で一回死んで
あの人の中で絶対何かが変わったよね。

お笑いの対極にあるのが哀しみだとしたら
やっぱりあの人の漫才やコントの中に
あった「哀しみ」の部分が
映画によって表に出てくるように
なったもんね。
本人は絶対認めないかもしれないけど。
でも、お笑いって
すごい悲しい題材を扱ってたりするじゃん。
第三者が見ると大笑いなんだけど
本人はすごく真剣に悩んでいるような。
例えば、
借金取りのヤクザが、玄関のドアをガンガン蹴ってる。
もう必死で押入れに隠れる。
それじゃ見つかると思って
ベランダから飛び降りようとする。
でも、そんな勇気もなくて
ドアが開いた瞬間
ベランダで観葉植物の真似をする。
傍観者から見たら大笑いなんだけど
本人は本当に殺されると思っているから
真剣だよね。
それを笑っちゃうんだけど
そんな残酷な社会に俺らは生きてるって感じするもんな。

だから笑いと哀しみなんて
紙一重で、振り子みたいに揺れてる
関係だと思う。
監督・北野武だと、その哀しみの部分が
グッと前に出てきちゃうんだろうな。

たけしさんて絵も描くんだよね。
前に何かのインタビューで
「オイラは、ゴッホに憧れてるピカソだ」
って言ってたのを思い出した。
ピカソは天才で
絵の技術も理論も何もかも知りつくした男。
方や、ゴッホは
情熱赴くままに絵を描き続け、
無名のまま死んでいった。
今では、ゴッホもピカソも「天才」だけど
生きている間に天才と呼ばれたピカソと、
そうでないゴッホはやっぱり違う。

たけしさんがゴッホに憧れるのは
自分が何者か分からないが故に生ずる
純粋な制作への欲求だろう。

たけしさんは、自分の作品を待つ
あらゆる観客や観衆や聴衆や支配者から逃げられない。
それがどんなものであろうと
人々は北野武が生み出すものを
見逃すまいと待ち構えている。
「ゴッホに憧れてるピカソだ」と言いつつも
たけしさんは、とっくに覚悟を決めている。
「オイラはピカソだからしょうがない」とでも言うように。
そこが堪らなくカッコいいのだ。



2004年06月06日(日)



 モントリオール二日目、リタイヤ









今日は朝からカズさんと別行動。
宿で出た朝食のパンにカビが生えてたので
ほとんど手をつけなかった。
とりあえずフレンチの香りプンプンのカフェで
エスプレッソとクロワッサンを食う。
もちろんフランス語で注文。
そう、昨日はフランス語が喋れなかった為に
雨の中、彷徨ったので
今日はなるべくフレンチを喋るように頑張るのだ。

やっぱ風邪をひいてしまったらしく
鼻水は出るし、頭も痛い。
薬局で点鼻薬だけ買う。

一番の繁華街Ste Catherineを中心に
カフェ、レストラン、ショップ巡り。
俺の役目は、この通りを制覇すること。
一軒ごとにウンチクをメモに書き留める。
いきなり道端で
「Hey, tomolennon!」
と呼び止められた。
トロントのAcadia Galleryのカルロスだった。
以前、【Hype Tokyo】という展覧会をやった会場。
カルロスは、弟と二人で
美術書の仕入れと、ギャラリーの用事で
滞在してるのとこと。
とりあえず角のパブへ行き、ビールで乾杯。








それからまたカフェ巡りに戻る。
途中、インターネットカフェでメールをチェックしたら
トロントで急用発生!
やばい、明日の朝までに帰らないといけなくなった。
今晩一人で泊まろうと思っていた宿に電話して
キャンセルをした。
かなり残念。
ちょっとくらいの事だったら後回しにして
ここに滞在することを選ぶけど
今回は俺がやらなきゃいけない急用なんで
涙を飲んで帰ります。
あぁ、あと一日ズレてくれたらなぁ・・・

夜、再びカズ、テルちゃんと合流して夕食。
風邪のくせにビールをピッチャーで注文。
これから7時間、トロントへのドライブなのに
大丈夫なのか??

あっという間の、一泊二日モントリオールの旅。
次はフランス語バリバリで戻ってくることを
遠ざかるノートルダム聖堂に誓った。




2004年06月05日(土)



 モントリオール1日目、風邪

モントリオール到着!
トロントを朝6時半に出発して
途中で集中豪雨(視界1m)に見舞われつつも
交代運転でやっと着きました。








カズさんの友達、テルちゃんと合流して
日本食「サクラ」で昼食。
それから二手に別れて、カズさんは営業へ
俺は「サクラ」のママが経営している別館へ移動。
そのママが超おもしろい。
亡くなったカナダの元首相トルドーさんが
サクラの常連で、当時のいろんな秘話が聞けた。
時間を忘れてママと話し込んでいるうちに
さっきの集中豪雨がモントリオールまで追いかけてきて
ドシャ降り。

次のアポがあったので
その豪雨の中を傘もささずに歩く。
そして迷う!
すげー迷う!
通行人に道を尋ねたら、全然違う方向教えられてさ。
ほんと参った。
めんどくさかったのか、何だか知らないけど
英語で話しかけたら
「Do you speak Franch(フランス語できる)?」
とか言いやがって
ただ地下鉄の駅どこですか?って聞いてるだけだから
なんとかステーション?ってだけでも通じるだろ!?普通。
一気にケベコワ嫌いになりました。

夜7時にカズさん達と合流。
俺のモントリオールの弟子・明子ちゃんが予約して
くれた洒落たジャズ・ラウンジで夕食。
フリーライターの紀子さんも加わって
華やかに乾杯。
その後、ドーナツ屋に場所を移して
色々と打ち合わせをする。

夜11時ころ宿に戻ったら
どうも喉の調子が悪い。
悪寒もする。
やば、風邪かも・・・

2004年06月04日(金)



 モントリオール行きます

Bitsのカズと車でモントリオールに
行くことになった。
俺が企画していた「モントリオール特集」が
正式にGoサインとなったため。
現地では、すでに特派員が動いているし
あとは2人で行けばババッと片付くだろう
という見通し。

1泊2日の強行軍だけど
もしかしたら、俺だけもう一日、二日残るかも。
スケッチもしたいし
会いたい友達もいるから。

とりあえず、今は
荷造りの手を止めて書いているんだけど
一体何を持っていけばいいんだ?
一泊用の荷物だったら着替えなんていらないけど
最長三日いるなら、少しは着替えいるしなぁ。
とりあえず三日分持っていこう。

2004年06月03日(木)



 T.M.Revolution

あのT.M.Revolutionにインタビューした。
意外と真面目に受け答えをしてくれて
一個質問すれば、5個くらい返ってくるので
インタビュアー喜ばせ(泣かせの反対)だ。

そんでまた
日本人の国民性についてや
外国でウケている日本のサブ・カルチャーの
洞察など、意外と冷静に自分の立ち位置を
分析していて、知的な感じもした。

さっきから
「意外と」を連発してるけど
インタビュー前の西川さんのイメージだと
誌面には書けない面白ネタが満載という
イメージがあったので
ついつい質問事項もそれ寄りのを考えていた。
だから慌てて軌道修正しました。
結構、いいインタビューになった気がする。

しかし
最後の10分くらいで
いつものギャグ炸裂モードになってきた。
もうちょっと聞きたい!ってところで時間切れ。
30分しか時間がなかったのでしょうがない。
また
いつもの事だけど、誌面の都合で
全文を載せるわけにはいかないんで
かなりカットされると思う。
今度、トロントにコンサートに来た時には
また続きをインタビューする約束をした。

そうそう、
約1年以上続けてきたBitsでのアート・コラムだけど
明日発行の6月2日号で辞めることにしました。
スペシャル・インタビュー系も
去年の少年ナイフやホリー・コール
今回のT.M.Revolutionを最後にしばらくお休みです。
ちょっと自分のアートが忙しくなってきたんで
そっちの比重をグッと高めるんです。
この場を借りて
色々お世話になった方々にお礼申し上げます。


2004年06月01日(火)
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